米領事部長の神戸訪問と非核神戸方式の新たな危機
米領事部長の神戸訪問と非核神戸方式の新たな危機
神戸市会議員 あわはら富夫
 2002年9月6日に、在大阪神戸総領事館領事部長のC・A・ハドソン氏が、神戸市助役梶本日出夫氏を表敬訪問した。会談の内容はまだ不明ですが、米同時テロ一周年の直前であることは示唆的です。さらにびっくりしたのは、このハドソン氏の経歴なのです。彼は米・陸軍参謀大学を卒業し、89年には国防大学国家安全管理課程を修了しています。つまり軍事戦略や情報収集などの軍関係の書記官なのです。
 まず問題なのは、これに神戸市の危機管理官が同席したことです。神戸市の危機管理室は今年できたのですが、基本的には震災などの自然災害に対応する部署ということで、市議会でも「有事体制とは無関係である」と確認した上で、できあがったものです。ところが、米軍にとっての危機管理には、当然戦争・テロといった「有事対策」が含まれています。
 米国は99年、駐日アメリカ大使・フォーリーが「私の在任中に我が国の艦船を神戸港に入港させたい」と発言したのをはじめとして、「非核神戸方式]の突破を狙っているのは明白です。神戸は戦後米軍の占領下にありましたから、米軍は神戸をよく知っており、使いやすいのです。対北朝鮮戦略を考えた場合、神戸は、港のすぐ近くに市民病院もあり、いい位置にあるのです。日米ガイドライン法が成立した中で、非核神戸方式が民間港をアメリカ軍が軍事利用する場合の障害になりうると考えているのです。米軍がこうした意思を持って行動するのに対し、神戸市の対応は無防備と言わざるを得ません。

朝鮮有事の下準備か
 ところで、C・A・ハドソン氏の経歴を辿ると、とても興味深い経歴を持っています。例えば、81年から83年までスーダンで副領事を勤めていますが、この時期に同国で内乱が勃発しています。85年〜86年にはフィリピンのマニラで、駐フィリピン米国大使館副領事を勤めていますが、86年には、反マルコスの市民革命が起きています。これは、米陸軍参謀大学出身のラモス参謀総長が、マルコスに反旗を翻すことで勝利が決定的になったのですが、この時期に、軍事戦略家であるハドソン氏がいたことは、彼の役割と重要性を物語っています。
 さらに88年からはパラグアイに赴任しますが、89年に親米派ロドリゲス将軍によるクーデターが起こっています。95年には、カタールで一等書記官をやってますが、97年6月に無血クーデターが起こり、親米政権が誕生します。つまり、彼は、一貫して紛争地を渡り歩いてきた人物と言えるのです。
 このハドソン氏が、国務省外交研修所で2年間日本語の研修を受けて大阪にやってきて、非核神戸方式をとる神戸市を表敬訪問する意味は、考える必要がありそうです。
 私は、ズバリ朝鮮有事を想定した下準備ではないかと考えています。在日朝鮮人の動向を調査するには、東京よりも大阪の方が有利です。韓国政府からの情報収集も含め、北朝鮮関連情報が目的が1つではないかと推測しています。軍事戦略上からいうと、神戸・大阪というのは要衝なのではないでしょうか。
 アメリカ政府は、明確な意図を持って準備をして、手を打ってきます。その意味では、米国政府の対イラク戦争をはじめとした戦争戦略に安易に組み込まれないよう、十分な警戒心が必要です。

巨大政商べクテル社の影
 なぜこういうことに注意を払わねばならないかというと、神戸市の開発計画とも絡んできているからです。神戸空港はこのままでは失敗します。そこで、ポートアイランド2期工事の中に空港とリンクするような産業を興す必要があるとの意見が出され、神戸市は4年ほど前に、「医療産業都市構想」を打ち出しました。既に先端医療センターや再生医療の研究所もできあがっています。ここに医療産業を誘致し一大医療産業都市を造ろうという構想です。
 この構想の調査委託先が、「ベクテル」というアメリカ企業です。ベクテル社は、ゼネコンを包括したような巨大グローバル企業です。「死の商人」というのは兵器産業が多いのですが、ベクテル社は戦争で破壊されたものを再建することで儲けている会社です。具体的には、湾岸戦争後のクゥエート復興を受注しています。コソボ紛争でも、その復興事業を請け負っています。また、沖縄名護基地の浮体工法を提案しているのもべクテルです。アラブでは、はっきり「死の商人」と呼ばれています。つまり国防省と繋がりの強い政商なのです。レーガン政権でシュルツ国務長官・ワインバーガー国防長官をはじめとして主要閣僚はほとんどベクテル社で占められました。現ブッシュ大統領の一大スポンサーにもなっています。
 一九九七年GATT−ウルグアイラウンドで、日本は公共工事や建設市場の開放を約束させられましたが、これは実質的にはベクテル社への市場開放要求だったといわれています。日本国内では、あまりその名は聞かれませんが、関空二期工事をはじめ、猛烈な勢いで巨大公共事業を受注しています。
 話を元に戻します。神戸市『医療産業都市構想」における「先端医療」の中身を見てみると、画像診断による遠隔地治療というのも、実は軍事医療なのです。化学兵器で負傷した兵士などを、優秀な専門医師を戦地に派遣することなく、遠隔地から治療しようというのがそもそもの始まりなのです。また、遺伝子治療の分野もあります。これは圧倒的に米国が進んでいるのですが、遺伝子分析が行われているのは白人が圧倒的なのだそうです。アジア人の遺伝子分析はこれからという段階ですから、神戸は遺伝子分析のアジア戦略拠点という位置づけもあるのでしょう。
 「死の商人」といっても、戦争で破壊して儲ける奴と、その復興工事で儲ける奴と両方いるわけです。ベクテル社はあたかも平和産業のように見えますが、ぶち壊す時に裏から手を回して、戦争「後」で潤う、後者の「死の商人」と言えます。非核神戸方式と「医療産業都市構想」そして、米軍戦略家の赴任とベクテル社の動向は、アメリカの世界戦略と日本の有事体制づくりに密接に関係しています。(おわり)

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