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2012年度神戸市予算の分析
2012.3.29 文責 あわはら富夫
1、神戸市予算額の概要
・一般会計 7344億円(前年度7452億円)対前年比−1.4%
・特別会計 7040億円(前年度7356億円)対前年比−4.3%
・企業会計 3615億円(前年度3655億円)対前年比−1.1%
・合計 1兆7999億円(前年度1兆8463億円)対前年比−1.1%
・歳入の特徴
1、市税収入が2650億円で対前年度で7億円増。扶養控除の廃止で36億円増で2614億円で、実質は対前年度29億円減(4年連続減、震災前3000億円)
2、実質的な地方交付税合計は1,035億円(対前年度△116億円)。しかし、その内訳は地方交付税599億円(対前年度△214億円)。地方交付税の振替である臨時財政対策債は436億円(対前年度+98億円)。年々、臨時財源対策債が増えている。市債総額の2割を占める。
3、 新神戸トンネルの阪神高速道路(株)への移管に伴い出資金返還で215億円増。
4、市債は636億円で対前年度126億円増。阪神電鉄連続立体交差や友生支援学校建設にかかる事業費の増加のため。
・歳出の特徴
1、外郭団体への貸付金の減などに伴い、貸付金が減少した(神戸マリンホテルズ(株住宅供 給公社、神戸みのり公社)
2、生活保護費・障害者自立支援給付費が増となる一方で、子ども手当が減少。
3、市民病院機構の運営にかかる貸付金の減などに伴い、衛生費が減少した。
4、緊急雇用創出事業の減などに伴い、商工費が減少した。
5、介護保険事業費、後期高齢者医療事業費に対する繰出金が増加
6、阪神電鉄連続立体交差や友生養護学校建設で事業費増、新神戸トンネルの移管に伴う補助金の増
■20年間予算編成が収支不足 ・・・今年は昨年比増
・平成5年から収支不足に陥り、今年の予算で20年目に。財源対策のは総合計5684億円
・収支不足30億円(昨年15億円)の財源対策の内わけ
財産収入 15億円 行政改革推進債 15億円
・収支不足はかなり改善されたが、、景気の先行きが不透明。大幅な税収増は難しい。地方交付税総額について今後の見通しが不透明であり、少子・超高齢化の進行に伴い社会保障費・医療費が今後も確実に増加し続けることを考えると今後も、厳しい財政状況が予想される。一方臨時財源はすでに枯渇している。
■指標にみる神戸市一般会計の現状
・政令都市でも下位の財政力
・依然として硬直化続く財政
・地方交付税への依存体質
・義務的経費が54.9%昨年度55.6%から若干改善も高止まりが続く。
・減少する投資的経費437億円(市政運営に最低必要380億円)、(平成5年2734億円)
■市債について
(一般会計改善進むが新都市整備事業や港湾事業で償還財源枯渇)
・起債償還額は1000億円 市税収入が2650億円で家計の38%が借金返済に。一時期、市税収入の60%が借金返済にまわされていたときよりは大きく改善されてきている。
・平成15年に1兆8624億円あった市債残高が平成23年度予算では1兆2427億円と、6000億円が削減された。したがって、実質公債費比率は2010年度決算で12.9%まで改善され、起債制限比率も2009年度予算で20%を割り込み大きく改善
・起債制限比率や実質公債比率には特別会計や企業会計での起債は入らず、企業会計では、平成24年度末見込みで9151億円の市債残高を抱えている。
特に、新都市整備事業では、空港島造成事業の企業債償還が平成21年度から始まり、平成22年度は725億円で空港島造成事業だけで650億円を償還。ところが、財源になる土地処分は進まず、200億円を借換え。更に、平成23年度は、ポーアイ2期の企業債償還(108億円)が上乗せされ、総額730億円を償還。このうち空港島償還が374億円の内200億円。土地売却が進まない中、ポーアイ2期108億円、西神南160億円、合計468億円がそっくり借換えに。平成24年度予算では、更に総額592億円を償還予定で、空港島280億円の内200億円、ポーアイ2期132億円、西神南85億円ははそっくり借換えで、その合計は417億円に。
今後、ポーアイ2期の償還が平成28年まで続くことから、借換えが継続することは明らかであり、子や孫の代まで、借金を先送りすることになる。
港湾事業会計でも、ポーアイ2期の償還108億円が始まり、今年度平成24年の132億円も返済の目処がたたずそっくり借換えされた。この返済も28年度まで続き、総額は693億円だ。また、新都市整備事業基金が廃止され、今後償還財源として自由に利用できることになる。本来、開発地のリニューアルも含め担保する必要がある基金だ。
2、神戸市政の抱える問題点
■議会基本条例が6月に制定
@会派構成 定数69人 民主 14人 自民党 13人 公明 12人 共産 9人
みんな 8人 自民党神戸8人 新社 2人 住民 2人 たちあがれ 1人
A神戸空港問題や住民投票などで与党野党の対立が先鋭化し、2元制議会の役割が見えなくなり、議院内閣制のような議会になっていた。請願陳情でも、中味よりも、どのグループが出したかで、採否が決まるような現状があった。ようやく、議会改革が始まり、すべての会議録や政務調査費は全面公開となったが費用弁償は継続。
B首長の議会との関係がいくつかの自治体で注目を浴び、地方議会の役割についての議論が全国の自治体で始まり、130を越える自治体議会で議会基本条例が出来上がっている。
地方議会は議院内閣制とは異なる2元代表制だとの議員の認識の統一、地方自治体は「民主主義の学校」であるとの議員の認識がその前提になる。「議会不要論」が一部首長から出ているが、首長と議会そして市民が相互にけん制し政策を熟議できる仕組みを作ることが議会改革の焦点。
神戸市議会でも昨年の7月から議会改革検討委員会、その象徴としての議会基本条例の制定へ向けての議論が始まり、この6月議会で制定される流れになっている。議決対象の拡大、通年議会を目指して当面は2会期の導入、本会議での一問一答選択性の導入と発言回数制限の廃止更に質問を理事者が確認できる反問権、一般質問の導入などです。更に、委員会活動の活性化に向けて議員間討議を通じた政策づくり、専門的知見の導入などが提案されています。
これら改革の中身を最終的に盛り込んだ議会基本条例を制定することに。これは、議会改革に向けた大きな前進です。ただ、残念ながら、改革の大きな柱であった議会報告会が将来的な検討課題とされたことは残念。しかし、ようやく議会改革の緒に就いたことは評価できる。
■予算議会の最大の焦点・・外郭団体の破綻整理問題
@海上アクセス再建で神戸市142億円の特別損失を計上
高速船で神戸、関西両空港を結ぶ第三セクター「海上アクセス」は167億円の累積赤字を抱え、民事再生手続きを行った上で開発管理業団と神戸ニュータウン開発センターの統合会社と統合する方針が打ち出された。民事再生手続きで、100%減資によって市の出資金9億6千万円を放棄。更に市債権の134億円が現物出資による資本化で、時価1億3千万円となり、132億円の差損が生まれ、合わせて142億円が神戸市港湾事業会計で特別損失として計上された。当局は「新たな負担はない」と強弁。貸付金が還ってこないことも市民にとっては損失。整理の遅れが損失を拡大し、自らの反省も不十分で責任の所在も明らかになっていない。
A舞子ビラ事業で105億円の損失
平成8年、舞子ビラ事業(マリンホテルズ)で、「民間の資金および優れた企画力と経営能力を積極的に活用できる手法」であると信託団(銀行団)に土地信託をする制度を採用。バブル崩壊後であるにもかかわらず過大な事業計画に。しかし、信託団はホテル事業のノウハウも持ち合わせずマリンホテルズが経営危機に陥っても、経営には積極的に関与せず、信託報酬の確保を優先し、神戸市への損失補償契約の締結に走る。そもそも過大な事業計画と信託団への賃料負担がゆきづまり多額の累積赤字に。しかし、信託制度での失敗の責任は銀行団にあるとの他自治体の訴訟がことごとく敗訴。結果、その損失補償として105億円を神戸市が負担することに。信託制度は解消し、舞子ビラについては賃貸か、売却。
B住宅供給公社の整理で約300億円が新たな負担に
住宅供給公社は、バブル崩壊後の分譲事業の評価損と特優賃事業で年間4億円の赤字で借入金額は433億円に。特優賃など賃貸事業は都市整備公社に引継ぎ、住宅供給公社は解散。結果、銀行への損失補償として約240億円の市負担が発生。更に、都市整備公社へ引継ぐ特優賃事業で平成30年まで市補助として計44億円、更に他賃貸事業も含め総合計約300億円の新たな市民負担が発生することになる。こうなった原因は、ほとんどの都市が借上特優賃事業から撤退する中、復興住宅戸数の数合わせで、逆に大量の借上特優賃住宅を建設し、多大な損失を出したこと。更に、バブル崩壊後も新都市整備事業による開発土地を分譲用地として大区画で購入し続け、土地価格の下落や売れ残りで約200億円の評価損をだしたことにある。バブル崩壊後もなぜ特優賃事業を拡大したのか、また開発地を分譲用地として大区画で買い続けたのかの意思決定過程や責任の所在が明らかにされていない。住宅供給公社の理事会や役員会の議事録でさえ存在しないことに驚く。また、借上特優賃事業をはじめ住宅供給公社の大半の事業を都市整備公社に引継ぎ2次破綻の可能性も指摘されている。
■「神戸空港」管理収支は7億円5千万円を越える実質赤字
別会計の新都市整備事業会計から3億8千万円を借り入れ
@需要予測(平成22年度から403万人)6年間連続で下回る
日航が全面撤退。スカイマークが増便するも、平成23年度は256万人と403万人の需要予測には遠く及ばず。
A管理収支は7億5600万円の赤字。その赤字を埋める財源として、新都市整備事業会計から全額借り入れ。直接的な市税投入をさけたが、昨年から別会計からの借入れが始まり、今年で10億円を越える。市債償還が今後も20億円規模で続くことから、借り入れは大きく膨らむことが予想される。
B関西一元化が叫ばれ、関空会社が発足したが神戸市は蚊帳の外になっている。
■敬老優待制度の激変緩和措置が一昨年9月で終了し、利用者減続く
3年前の暫定措置でも敬老優待パス利用者が激減。バス4割減。地下鉄で3割減。昨年2倍化で、利用減は更に進み、市バスで4割、地下鉄で3割の利用者減。有料化だけでなくフリーパス制度を乗るたび負担制度にしたことが、他政令都市に比べても利用減になっている。高齢者の社会参加と移動支援が脅かされ、国民保険や介護保険、後期高齢者医療の負担を増やすことにもなりかねない。商店街や市場の売上げにも影響がでている。敬老優待パスの政策としても目標が失われている。制度存続を理由にしているが、「角を矯めて牛を殺す」ことに。
■震災民間借上げ住宅の契約期間の延長問題を
震災民間借上げ住宅が20年の契約期間の期限が迫っている。住み替えの働きかけが、神戸市や兵庫県からはじまっている。対象者は震災で家を失い、本来復興住宅に入る資格がありながらも、住宅の数が少なく民間のマンションやUR団地を市や県が借上げ、公営住宅と同じ条件で20年の契約で入居した人たち。入居者は当時でも高齢化しており、現在では80歳や90歳を超えるような人もいる。強制的な移転を行えば、国際的な人権問題にもなり兼ねない。また、旧市街地での市営住宅募集での競争が激化している時に、より競争率が高まることは必至。市民同士の対立をあおることにもなりかねない。期限を切るのでなく、延長し、その財源保障を国に働きかけるべき。
■新長田再開発事業の失敗
海の神戸空港と陸の新長田再開発が神戸市破綻の引き金になるのではといってきた。本来バブルが崩壊したときに、市街地再開発手法で震災復興を担ったことがこのような悲劇を作っている。新長田再開発ビルの保留床の処分をあせるがゆえに売却を賃貸に修正し、しかも内装費を市が負担するなど実質値引きをしてしまったことが、商業施設そのものの価値を低めてしまった。そのことによって、権利者は、権利を売ることもできず、固定資産税を払い続けることになってしまっている。
■震災がれきの受け入れ問題
震災がれきの広域処理を巡って政府は、全都道府県と指定都市にがれき受け入れを文書で要請するなどする中、関西でも大阪府、大阪市での受け入れ検討が始まっており、大阪市は独自で北港処分地(夢州)での処理も検討している。また関西広域連合では、がれきを受け入れる際の放射性物質の統一基準を作成、焼却後の最終処分をフェニックス(大阪湾広域臨海環境整備センター)で行うことも議論されている。
神戸市の対応は、今議会での議論でも明らかな通り、現段階では放射性セシウムは水に溶けやすく、水と焼却灰の接触を避けることは困難であり、海面埋め立ての国の明確な基準が示されておらず、跡地利用にも影響を与えるため、現段階ではフェニックスでの受け入れは難しいという姿勢。
その中で、神戸市は3月19日、国に対し、@焼却灰海面埋め立ての明確な基準を示すこと、A埋め立て処分場の跡地利用制限の国の方針、B受け入れ廃棄物の現地での分別、再利用、C焼却施設作業員の労働安全対策、D放射性物質が濃縮する焼却施設の保全、管理問題について、国へ申し入れを行いました。
また、今市会最終日には、全会一致で「東日本大震災により発生した災害廃棄物の広域処理における基準等の明確化を求める意見書」を採択。
■災害への備えのためにも自治体労働者の役割の再評価を
東日本大震災での被災自治体では、平成の大合併で、自治体の範囲が拡大したにも関わらず、自治体職員が大幅に削減されたことで、職員体制が手薄で過重労働となり、それが“復興の足かせ”になっているとも、言われている。災害における自治体職員、とりわけ正規職員の役割の大切さ見直されている。神戸市も東日本大震災の被災自治体に対し、延べ1,796人の職員が、支援のために長期派遣され、今年度も被災地の復興事業での人手不足解消のための職員派遣をも計画されている。そうである以上、復興の“要”とも言える自治体職員の役割を見直すとき。