最終更新日3月6日
竜騎奮迅
第九話
(23)
夜も明け切らぬうちからライアットはトレアと共に宿を出た。竜舎で翼を休めるグレーバウルの元に向かう。
「なにがあったのだ?」
開口一番、グレーバウルはライアットの体調をみてとったらしい。不審げな声で、そんな言葉を投げかけてきた。
ライアットは自らが不覚をとって背中に斬撃をうけたことと、フィレルの行方が判らなくなっていることを手短につげた。
「なんということだ」
グレーバウルが低い唸り声と共に、巨大な頭と長い尾を左右に振った。
「ともかく、今は大会に出ることを考えるしかない。力を貸してくれ」
「無論。儂も全力を尽くすつもりだ」
「さ、大会が始まるよ。用意もあるし、そろそろ行こ」
トレアがライアットの腕を引いた。
預けていた竜騎槍を自ら担いで竜舎を出たライアットと、その傍らに付き従うトレアの前に、大会運営の係員が立ちはだかった。
大会出場者の資格を確認するのが彼の仕事らしかった。
「魔法士はどこにおられますか?」
係員が生真面目な表情で問うた。
ライアットの従者兼魔法士として、いつも付き従っているフィレルのことを覚えていたのだろう。従者としてトレアの姿しかないことに首を傾げている。
「彼女は体の調子がすぐれなくてな」
ライアットの言い訳に、係員は困った顔になった。ライアット個人にとりたてて意趣があるというのではなく、単に仕事熱心で規定を遵守しようとしているだけなのだろうが、迷惑な話だった。
「ご存じでしょうが、魔法士抜きで試合に参加することは許されていません。危険すぎますからね。特に全国大会ともなれば。……他の魔法士を都合付けることは出来ませんか」
「アタシが魔法を使えるから、大丈夫だよっ」
トレアがごまかすような早口で言った。が、かえって不審を招いただけだった。
「貴女は魔法士ではないでしょう」
係員は、怪訝そうな表情でトレアのほうを見た。トレアの左手には魔法士の証である篭手がないのだから当然だろう。
「彼女はこう見えても精霊魔法の使い手だ。精霊魔法では魔法士にはなれないが、彼女の実力からすれば、落竜したところでなんの不安もない」
すかさず、ライアットが横から言葉を挟む。
「まあ、そう仰るのでしたら。精霊魔法には鑑定士がおりませんから、魔法士の資格が無くても参加は可能ですが」
不承不承といった体で、係員はうなずいた。ただし、と彼は付け加えるのを忘れなかった。竜士にとって、魔法士は命綱に等しい存在です。くれぐれもお気をつけて。
「言われなくても判っているさ。もっとも、落竜するつもりはないがな」
と、ライアットは手を振って答え、闘技場へと向かった。
各選手に与えられる個室の控え室には、それぞれの名前が木札に大きく記されて扉の前に掲げられている。ライアットは自分の控え室を見つけて入った途端に、長椅子に身体を投げ出すようにして座り込み、背を丸めて深いため息をついた。
「苦しそう」
横にちょこんと座ったトレアに言われ、ライアットも頷いた。
「ああ、実際、きびしい言い抜けだったな。トレアが精霊魔法を使えて助かった」
「そうじゃなくて。脂汗浮いてるよ」
「む」
トレアに指摘され、ライアットは額を拭った。手がべたついた。我ながらひどい顔をしているのだろうと想像して顔をしかめる。
「ホントに大丈夫?」
「ああ。特に痛むということはない。ただ、魔法で傷を塞いだ分、身体の力を一気に消耗している。こればかりはどうしようもない」
嘘だった。確かにフィレルの魔法によって傷口は塞いである。しかし、斬られた身体の肉が元通りになっているわけではない。今はかろうじて繋がっているという程度に過ぎないのだ。常に激痛が走り続けている。
幾多の戦場をくぐり抜けてきたライアットにしても、背中に、それもこれほどの深手を負ったのは初めてのことだ。こんな状態でまともに槍が振るえるのか、正直なところ自分でも判らなかった。
「そう……。それにしても、フィレルのやつ、こんな大事なときにどこに行ったんだろ」
怒ったような口調ながらも、トレアの横顔には心配を押し隠せない不安の色が浮かんでいる。
「あいつに限って、たいした理由も為しにいなくなるなんてことがある筈がない。誘拐かも知れない」
斬られて意識を喪っていたライアットを助けてくれた縁もあり、ロテティとその一党が、フィレルの探索に助力をしてくれている。
とはいえ、ここはエストニカの首都・ウラドである。
その規模は島内有数であり、あまりに人が集まりすぎて土地が手狭になった為に遷都すら考えられているほどの雑然とした町並みが広がっている。魔法の助けを借りても、街の中からたった一人の人間を探し出すのは並大抵のことではない。
「でも、なんでなのさ。フィレルをさらってなんになるっての」
「理由は二つあると思う。一つは、魔法士の不在によって墜落死を防げないことで、心理的に不利な情勢に立たされること」
「うん、判るよ」
「そしてもう一つは、この後、フィレルを人質にして俺を脅迫してくる可能性だ」
「アグレスに勝たせろ、って言ってくるってこと? ちくしょー、ひどい事しやがる。ねぇ、なんとかなんないの? いくらなんでもそんなことしてくる奴を、誰かなんとかしてくれないの」
「無理だな。なにもアグレスが直接手を下した訳ではないだろう。賭けが絡む世界だ。何を思いつく奴がいても不思議ではない。第一、証拠もなにもない」
「そんな脅迫がホントにあったら、ライアットはどうするの?」
トレアの問いかけに、ライアットは苦渋の表情を浮かべる。背中に感じる痛みからくるものだけではなかった。
「見殺しにしたくはない。……だが、あいつは自分のせいで俺がアグレスを倒す機会を逸したなどとは、死んでも聞きたくないだろうな」
「そう思うよ。だけど」
トレアが涙目になってライアットにすがりつく。
「もしそうなっても、フィレルを助けてあげてよ。お願いだから。取り澄ましてヤな奴だと思ったこともあったけど、フィレルは、あたしの、大事な友達だから……」
「判っている」
ライアットは無理に笑みを作ってトレアの頭を撫でた。
係員が来て、一回戦の参加を告げた。その声の響きはいつになく非情にライアットには思えた。
(24)
「んんっ」
フィレルが目を覚まして、状況を理解するまでに数拍を要した。いや、わずかな間に自分の置かれた立場を把握したというべきかもしれない。
後ろ手に縛られ、足もまた同様にきつく縛り上げられている。荒縄でなく、布地なのがまだ幸いだったが、猿ぐつわをされた上に目隠しまでされているので、どうにも為す術がない。
風を感じないので、なんとなく建物の中にいるような気がする。目隠し越しに明るさを感じるのは、窓から差し込む日の光のせいだろうか。となると、とっくに夜は明けていることになる。
(もう、大会は始まってしまっている……)
ふと、左手の篭手が外されていない事に気づき、相手の迂闊さにほくそ笑む。が、いざ魔法を発動させようとするとひどい脱力感と眠気におそわれ、精神を集中できない。
(頭に、なにかかぶせられている……。そうか、これは……)
どうやら、魔法を封じる呪冠をかぶせられているようだ。これではどうにもならない。
恐怖と絶望、そしてライアットへの申し訳なさで、フィレルはがっくりと肩を落とした。
と、かすかに話し声が聞こえた。反射的に耳をそばだてる。
「どうして殺してしまわないんですか? 面倒な手を使って監禁するまでもないと思いますが」
見張りらしい男が話しているらしい。声はまだ若い。
「荒事を望んでおられぬ。それに、相手は魔法士だ」
別の男が不機嫌そうに応じている。こちらは声質からして先ほどの男より年上だろう。
「縁起を担いで、ですか?」
魔法使いを殺すと祟りがある、という類の話はどこの国にもある。その割には迫害の末に殺された者も少なくないのだが。
そんな事を思いながら、フィレルはなおも動きを止め、息を殺し、そっと聞き耳を立てる。
「それもあるが、あの女がただの魔法使いではなくて魔法士だってことが問題なのだ。殺せば、篭手に埋め込まれた魔法の宝玉がその死を立ちどころに魔法委員会に報せる。そうなればアグレス様もいらぬ嫌疑をかけられかねん」
やはりアグレスの差し金か。
自分を捕まえて監禁し、御大将を脅迫でもしているのだろう。自分の身などと引き替えに、本懐を遂げられないとしたら、私は二度と御大将に顔向け出来ない。
フィレルは胸の中に憎悪の炎が灯り、怯えを焼き払っていくのを強く感じた。奴の思惑どおりにはさせない。
せめて自分の居場所を誰かに伝えることが出来れば。
呪冠によって魔法の発動を封じられながらも、フィレルは懸命になって篭手の宝玉に意識を集中した。宝玉によって魔法の効力を増強させると、その波動が周囲の魔法士が持つ宝玉に共鳴反応を生じさせる。
その気配を察知してくれれば、とフィレルはかすかな期待に全てを賭けた。
(25)
いよいよ、全国大会が始まる。
グラベルグの海沿いに面した闘技場は、元々は竜騎槍試合用に作られたものではなかった。しかし、ウラド王城の背後にある山の中腹にそびえるウラドの円形闘技場は、まさしく竜士達の為だけのものだった。そして、その観客席の巨大さはリフィベル島内随一である。実に六万名もの観客を収容できるのだ。
今や、その観客席は全て埋まり、通路にも当たり前のように立ち見客が詰めかけている。彼等があげる雑多な声は一つのうねりとなり、波となって円形闘技場の中に響きわたる。
数万の目が、竜士の一挙手一投足に集まる。場慣れしていなければ、雰囲気に圧倒されてしまいそうな光景だった。
その中にあって、ライアットは背中の痛みと、フィレルの安否に気をとられ、かえって場に呑まれることもなく、傍目には淡々としていた。
グレーバウルの背に跨り、トレアが渾身の力で差し上げる竜騎槍を受け取る。背中に力が入ると、それだけで苦痛に顔がゆがむ。それを見られてはまずい、と兜の面覆いを早々に降ろす。
「一年間、この日が来るのを待ち続けたのだ。だが、まさかこんな気持ちで臨むことになるとは思わなかった」
ライアットの苦しい胸の内である。
「今の貴公に出来ることは、戦い、勝ち続けることだけじゃ。邪念は全て捨て去れ」
グレーバウルは泰然としながらも、敢えて厳しい言葉でライアットを叱咤する。
「判っている。心ここにあらずの状態で勝てるような試合ではない」
一対一での対戦により勝敗を決していくのだが、事前の組み合わせ抽選の結果により、参加者全員が同じ回数勝ちを収めれば優勝できるわけではない。
組み合わせはとことん正竜士に優位であり、エストニカに所属しない浪人竜士に特に厳しくなっている。ライアットはアグレスよりも四回も多く戦わねば決勝まで勝ちあがることが出来ない。
だが、ライアットは手傷を負った身ながら戦い続け、勝ち続けた。
本大会に駒を進めるほどの竜士となれば、ただの一合で相手を突き落とすような勝ち方は期待できない。背中に激痛を抱えた状態を隠しながらの対戦となればなおさらだ。
それでも、ライアットの槍は的確に対戦相手の胸を捉え、相手が繰り出す切っ先は紙一重で鎧兜をかすめていた。
日の出から間もない頃から一回戦は始まっていた。そして太陽が南の空に駆け上り、さらに東の空へと落ちていく頃には、全国から集った精鋭達の数は両手から片手の指で足りるほどになっていた。
突き上げるような歓声が円形闘技場を揺るがす。
ライアットの剛槍が、またも敵竜士の胸を捉えたのだ。鞍に上体を屈した敵竜士はそのまま起きあがることも叶わない。乗竜が所在なさげに旋回し続ける。
高々とライアットの勝利を報せる太鼓の音が響きわたるが、それすらも歓声にかき消されてしまう。
この勝利により、ライアットは決勝進出を果たしたのだ。
「あとは、アグレスの野郎をぶっ倒すだけだろ? なーに、ライアットならちょろいもんさ」
控え室に戻ってきたライアットに対し、トレアが殊更にはしゃいでみせる。だが、ライアットの表情からは全く喜びが感じられない。
「フィレルの事が気になるのか?」
「当然だろう」
憮然とした表情で応じる。そしてそれにも増して、疲労と痛みが隠せない。傷を魔法で塞いだ以上、これ以上治療の施しようが無い。
「ちょっとでも疲れがとれたらいいんだけど」
そういいながらトレアが癒しの力を持つ精霊魔法を試してくれるが、自然とはもっとも縁遠い場所にあっては、精霊の力を借りるなどほとんど不可能だった。気休めほどの効果しかなかった。
「フィレルを捕らえておいて、このまま終わるとは思えないしな」
「だけど今のところ、なんの脅迫も来ないし、大丈夫だよきっと」
「なにも言ってこないことがかえって気に掛かる」
「ダメだよ、ライアット」トレアが大きく首を振った。「それじゃますます敵の作戦に引っかかるだけだよ」
「そうだな。策には充分効果があるということだ」
控え室の扉が軽く叩かれ、ラナエルが顔を覗かせた。
「ライアット殿、まずは決勝進出、おめでとうございます」
「そんなのはいいからさ。フィレルの事、なにか判った?」
すがるようなトレアの問い。しかしラナエルは首を横に振った。
「残念ながら、まだ」
「なんだよもう。早く何とかしてよ。もし万が一、ライアットが落竜したって、あたしの魔法じゃ助けられそうもないんだから。場所が悪すぎるよ、こんなに人が一杯いるところじゃ、精霊が力を貸してくれる筈ないんだから」
不安と焦りで、トレアの声が上擦っている。
その気持ちはライアットにも充分伝わっていた。
(フィレル……。無事でいてくれ)
彼女に何もしてやれない、自分がもどかしかった。
(26)
突如、凄まじい音とともに空気が震えた。埃っぽい空気が流れてきて、思わずむせる。
「フィレル! 無事かっ! まだ生きているか!」
そう叫びあげる声は、ロテティのものだ。
(助けに来てくれた!)
大声で自分の居場所を報せたいのだが、しばられ、猿ぐつわをされている状況ではどうにもならない。懸命に身体をばたつかせ、音を立てようと試みる。
幸いにも、すぐに誰かが駆け寄ってくる気配があった。目隠しを外してくれる。他ならぬロテティ本人だった。
「良かった。ガルプがお前の魔法力を探知したと言ったんだが、その通りだったな。あやつの魔法はなかなかたいしたものだ」
ロテティが凄みのある顔つきで微笑む。真紅の竜士装束に身を固め、両刃剣を右手に下げた様はどこから見ても、一国のお姫様というよりも凛々しい女戦士のそれだ。
「ありがとうございました」
「だが、賊には逃げられた。アグレスの仕業という証拠がない」
フィレルの手足を縛っていた布地を、ロテティが短剣で素速く切り落とす。
ロテティの壁には大穴があき、その穴の向こうから赤竜ガレルジアスが首を突っ込んでフィレルを見下ろしている。
こんな恐ろしげな竜に空から襲いかかられたのでは、自分を拉致した賊がどんな相手か知らないが、逃げ出す以外になにも出来ないだろうとフィレルは思った。
「誰の仕業とか、そんなことはどうでもいいのです。それより、御大将は大丈夫ですか?」
頭にはめられた呪冠を忌々しげに外したフィレルが訊ねた。半ば無意識のうちに、縛られた痕がついた手首をさすっている。
「ライアット殿は決勝に進出した。相手はあのアグレスだ。ちょうど今頃、決勝が始まっているはずだ。はやくお前の無事を伝えないと、ライアット殿も勝負に集中出来まい」
「では、ロテティ様の竜に、同乗させてはいただけませんか?」
「判った。急ごう」
二人は壁にあいた穴から建物の外に出る。
西の空から、はやくも夕焼けが迫りつつあった。
フィレルは首を巡らせ、闘技場の場所を探した。山の中腹に建てられた巨大な石造りの闘技場は、ウラドの街のどこからでもその姿を見ることが出来る。
「かなり遠くまで来てる……」
あらためて周囲を見回してみると、フィレルの捕らえられていた建物は川沿いに建つ水車小屋で、かなり街の中心から離れた場所にあるのが判った。
「さあ、行くぞ」
ロテティがひらりと鞍に跨った。フィレルにはそんな真似は出来ない。ロテティに引っ張り上げられ、どうにか赤竜ガレルジアスの背に乗った。
「しっかり掴まってろよ」
「はい……」
(どうか、御大将の戦いに間に合いますように)
羽ばたきをはじめたガレルジアスの背で、フィレルはそれだけを一心に祈った。
(27)
翼の具合を確かめるようなゆっくりとした羽ばたきが、次第に鋭く、力強くなっていく。 土埃が巻きあがる中、二騎の竜が相次いでその巨体を地上から舞い上がらせた。
(ついに、この時が来た)
次第に高度をとっていくグレーバウルの背にあって、ライアットは全身に走る震えを抑えかねていた。
自分をエストニカ竜士隊から追いやったアグレスに復讐の槍を突き立てる。その一念でこれまで戦い続けてきたのだ。
いかなる策謀を巡らそうと、姑息な手で立ち向かってこようと、今回は負けるつもりはなかった。だが、背中の傷はいかに強靱な精神力があろうと、間違いなく槍さばきを鈍らせる。そして、フィレルの安否が心にかかっている状態では、アグレスを相手にどこまで戦えるか、自分でも計りかねていた。
ライアットが、並々ならぬ気合いで立ち向かってくるであろうことは、アグレスにも想像がついていた。
正々堂々、竜騎槍試合の場で借りを返そうという意気込みはいかにも竜士らしい直情さだとアグレスは思う。だが、これまでライアットは特に手強い竜士ばかりを相手に戦い、決勝まで進んできている。疲労は生半可なものではないはずだ。
それに比べると、アグレスが相手にしたのは格下の者ばかりで、準備運動のようなものだった。その時点で既に差がついている。
加えて、ライアットは手傷を負い、しかもいつも連れている魔法士が不在である。その事実をアグレスは知っていた。手はずを配下に指示した本人なのだから知っていて当然だ。
ライアットにとって不利な状況が重なっているにもかかわらず、その突きは一年前よりもさらに鋭さが増し、そら恐ろしい勢いで繰り出されてくる。だが、アグレスも防戦一方ではない。それどころか攻撃をかわすと同時に自らの槍も正確に突き入れるだけのゆとりがある。
腰の入った重い攻撃を仕掛けることと、相手の突きを身体をひねってかわすことはいかなる竜士にとっても矛盾した動作である。そして、魔法士のいないライアットは相討ちで二人とも落竜しても、自分だけが墜落死してしまう為、どうしても自分の身を守ることを優先せざるを得ない。
なにも、ライアットが命を惜しんでいる訳ではない。
竜騎槍試合において二人が同時に落竜した場合、再試合は行われない。戦場において一度落竜してしまえばそれで終わりだというのがその理屈だった。
その場合の勝敗は、検分席で観戦している主催者と、審判団によって判定され、どちらかの優勢勝ちとして決着する。そうなれば、前年度優勝者と浪人竜士とでは判定に差がつくことはライアットならずとも簡単に予想できる。
ライアットは、判定勝ちではなく堂々と勝利を収めなければならない。その制約こそがアグレスの付け目だった。四合、五合と槍をあわせていくうちに、次第にアグレスが主導権を握りはじめていた。
だが、いくらその前の数合で押し込んでいても、ただ一度の直撃で全てが終わるのが竜騎槍試合の恐ろしさだ。
優勢であることを自覚はしていても、アグレスは油断などしていなかった。ここで負ければ全てを失うことも痛いほど理解していたからだ。
(ライアットは、俺の地位を奪い取るつもりなのだろうか)
人間は、自分の判断基準を他人にも当てはめて相手の考えを類推しがちだ。正攻法だけでなく、様々な策を弄して立場を高めてきた彼には、ライアットの心中をそのようにしか推し量ることしか出来ない。復讐、などという後ろ向きな思いこみだけでここまで這い上がってこれるなどとは、彼には思えない。
六度目の突撃を促す太鼓の音。両者、間髪を入れずに突進に入る。
アグレスの突きだした槍を、ライアットの槍が弾く。衝撃でライアットの姿勢が一瞬崩れたが、どうにか踏みとどまった。二騎の竜が互いの巻き起こした乱気流に身体を揺さぶられながらすれ違う。
(苦しいな)
決して声にはしないが、その思いがライアットの脳裏に爆ぜる。
心理的に追いつめられているのを自覚していた。アグレスが優位に立ち、余裕を持って自在に槍を繰り出してくるのに対し、ライアットのほうはといえば致命的な一撃をもらわないようにまず身構えながらの攻撃となっている。
背中の痛みは耐えられるが、しかし焦りは隠しようもない。
その時、思いも寄らない方向からの光がライアットの目を射た。
「なんだ?」
グレーバウルは緩やかな旋回をしている。まだ次の突撃までには数拍の間があった。ライアットは首を捻って光の方向を見た。
一騎の竜が、夕陽を背に飛翔していた。
夕焼けの陽を浴びてその姿が赤く見える、と思ったがそれは錯覚で、その竜は遠目にもはっきりと判る真紅の鱗を持っていた。
「ガレルジアス……、ロテティか」
ライアットの目に飛び込んだ光は、その竜の背に乗る人影から放たれたのだ。
目を凝らす。遠視気味の視力は高速で間合いを詰める敵を少しでも遠くから発見せねばならない竜士にとっては必須だ。
不意に、面覆いに隠された表情が喜びに緩む。
ガレルジアスの背に跨るのはロテティだけではない。ロテティの腰にしがみつくフィレルの姿があった。左手に装着した篭手の宝玉に魔法力を送り込み、自らの無事を知らせようと輝きを放っているのだ。
「無事だったようだな」
グレーバウルもその姿に気づいた。
「ああ、これでなんの心配もなくなった。これ以上の禍根を残さない為にも、アグレスはここで倒す!」
直後、太鼓の音が下界から間延びして轟いてきた。
二騎の竜はともに右旋回して再び首を互いの正面に向けた。
「何故だ。なぜこうまで戦える」
アグレスが信じられない思いで呟く。七合目。はじめてライアットが本気で仕留めにかかる突きを放ってきたようにアグレスは思った。この突きは槍で弾くのが精一杯で、反撃する余裕も無く行き違うことになった。
先ほどから遠くを飛ぶ赤竜の姿は彼も気づいていたが、それに自分が誘拐を手配した魔法士が同乗しているとは想像の外にあった。
ライアットは確かに手負いであるはずだが、その所作には全く隙が感じられなくなっていた。先ほどまでとは気迫が違う。
「奴には失うものなど、なにもないというのに」
私には、任された領地と召し抱えた多くの家臣、そしてメシュリーナがある。それらを守るために戦い、勝たねばならない。だが、既に浪人となった奴には、一体なにが残っているというのだ。そこまでしてエストニカの竜士として復帰したいのか。
判らない。
奴の実力をもってすれば、エストニカとザエリラム以外の国であれば、どこでも喜んで召し抱えるのではないのか。
(案外、嘘から出た真なのかもしれぬな)
ライアットがエストニカに戦乱をもたらす。それは、ライアットをおとしめる為に広めた噂に過ぎなかったはずだ。しかし、今の彼の武威と乗竜の知名度を考えれば、あながち絵空事とも言い切れない。
(ということは、私の勝利が、今度は本当に国を救うことになる)
その皮肉に、思わず兜の下で含み笑いを漏らす。
負傷と魔法士の不在、さらに前回、ライアットを倒した自分の奇策を警戒して思い切って仕掛けてこられない、とアグレスは判断していた。
が、先ほどの突きを考えると、どうもそれだけではないような気がしてきた。
八合目の突撃に備えて旋回に入る乗竜が、不意にぶおっ、と息をついた。姿勢が崩れる。アグレスは気合いを発して手綱を引き、体勢を立て直す。
(……そうか。持久力か)
にやりと笑う。
こちらの竜が疲れ、突進力が弱るのを待っているのか。
相手の考えが読めたことで、心に余裕が生まれた。
一気に仕掛ける、アグレスはそう決めた。
ライアットの手は、竜騎槍試合においてはさほど珍しくもない策ではある。が、乗竜の地力から言えばやはり英雄竜と呼ばれるだけあってグレーバウルはあなどれない竜であり、相手の消耗を待って反撃に移る戦法にも、それなりに勝算があるのだろう。
だからこそ、相手の策に乗る訳にはいかない。
「どうやら、次で決めにかかるつもりらしいな」
アグレスが見せた乗竜への気合いの入れ方を見てとり、グレーバウルが言った。
長時間の飛行ではないが、風向きを無視して羽ばたき続け、猛烈な突進と旋回を繰り返すのは竜にとっては体力を消耗する行為だった。それでもグレーバウルの声には疲れの色はうかがえない。
老いたりとはいえ、いや、経験豊富な老竜だからこそ、無駄な動きを極力抑え、疲れを溜めない術も心得ているのだ。
「ならば、こちらも相応の受け方をせねばなるまい」
ライアットはうなずき、賭けに出た。
手綱を腰に巻き付けた。次いで、鞍の前にある輪に左足を引っかけた、鞍の上に立ったのだ。強烈な向かい風にも動じず、その体勢から右足を後ろに引き、両手でしっかりと柄を握った竜騎槍を上体ごと大きく腰をひねって構える。
グレーバウルもライアットの槍の軌道に影響を及ぼさないように翼の羽ばたきを最小限に押さえる。
「行くぞ!」
「おうとも!」
ライアットとグレーバウルの咆哮が一つに重なった。
「勝った!」
アグレスは面覆いの下で大口を開けて笑った。鞍の上に立った相手など、アグレスの槍さばきをもってすれば造作もなく弾き落とせる。
槍を突き入れるのは胸でなくてもよい。竜士は、腰から下には臑あて以外の防具らしい防具はつけないものだ。もちろん、顔面や金的を狙うのは竜士としてはあるまじき行為だが、ライアットを落竜させてしまえばその後の言い訳はどうにでもなる。
両者が接近し、間合いに入った瞬間、アグレスは自信を込めて体重の乗った必殺の突きを繰り出した。
鞍の上に立って槍を振りかぶった状態では、ライアットは身をよじってかわすこともままならない。万が一かわせたとしても攻撃など繰り出せるはずもないから、こちらは相手の槍に気を取られることなく渾身の一撃を喰らわせることが出来る。
だが、アグレスがこれまで竜士として積み上げてきた経験の全てを込めて繰り出した槍の切っ先は、空を切っていた。
「なにっ!」
「もらったあっ」
アグレスが槍を突き入れた瞬間、ライアットは躊躇いもなく鞍の前縁の輪にひっかけた足を抜いて、身体を後方に投げだしていた。同時にその膂力にものを言わせて槍を振り抜いた。
それは、かつてライアットがグレーバウルと初めて出会ったとき、グレーバウルの顎を紙一重でかわしながら、振りかぶった槍を逆鱗に叩きつけたのと同じ戦法だった。
手綱が身体をつなぎ止めているとはいえ、身体を投げ出した以上は、ライアットは傷を負った背中から竜の背中に叩きつけられる事になる。正気の沙汰とは思えない手だった。
「馬鹿な!」
昨年、ライアットが放ったのと全く同じうめき声を、今度はアグレスの口が発していた。
次の瞬間、身体がひしゃげるようなすさまじい打撃が、袈裟切りのような角度で胸に叩き込まれていた。
この衝撃に、アグレスの身体はひとたまりもなく空中に投げ出されていた。つかんでいた手綱が引きちぎれる。手から離れた槍が、綱一本でつながったまま同じく宙を舞う。
(そうか。奴にもあった。守るべきものが)
身体の回転が止まらぬまま、地上へと落下している今更になって、アグレスは先ほどの疑問の答えを見つけていた。
守るべきもの。それは名誉だ。奴は己の名誉を守る、ただその一念だけで戦い続け、こうやって自分を討ち果たしたのだ。
なんということだ。
領地や部下、そして妻という具体的な存在を何一つ抱えず、自身の誇りだけが奴のより所だったのに、その誇りを失わせたのは他ならぬこの私だったとは。
不思議と後悔はなかった。因果応報とでも言うべきなのか、不本意な謀略に手を染めた報いがてきめんに現れた、そう考えると怒る気にもなれなかった。
さて、自分の雇った魔法士はこの身体を傷つけずに浮遊させることが出来るだろうか。正直なところ、彼の技量は心許ないところがあるが。
閉じていた目を開き、アグレスは下界を見た。彼の落下する地点から逃れようと右往左往している観客の姿が目と鼻の先にあった。
(28)
優勝者は闘技場にて表彰を受けた後、改めて王城へと呼ばれ、褒賞の目録が与えられるのが決まりだった。そこには従者といえど同行は許されない。ライアットは一人で、久しぶりの王城へと足を運ぶこととなった。
ライアットが数刻して戻ってくると、宿屋の部屋にはフィレルとトレアの他にも、ラナエルやロテティとその郎党が集まり、賑やかに彼の帰りを待っていた。
彼の優勝は既に街中に知れ渡っている。宿屋の周りも大騒ぎだった。今晩ばかりは、酒場で祝宴などあげていてはどんな騒ぎになるか知れたものではない。残念ながら、自重せねばならないだろう。
「御大将……。申し訳ありませんでした。お身体はなんともございませんか?」
フィレルが泣きはらした目をこすりながら深々と頭を下げた。
「無事に戻ってきてくれたのだ。それで充分だ。身体のほうは、時が経てば痛みも収まるだろう」
「そうですか。ついに本懐を遂げられましたね。おめでとうございます。これほど嬉しいことはございません」
観客席のただ中へと落ちたアグレスは、今もエストニカ王家の抱える治癒を専門とする魔法士がかかりきりで治療にあたっているが、未だ生死の行方は定まらない、という話だった。
ライアットは、アグレスの生死にはそれほどこだわっていない。竜騎槍試合において命を落とすのは竜士の宿命であり、たとえ命を長らえたとしても、ライアットが勝利をおさめたという事実はなにも変わらないからだ。
「フィレルを無事に救い出してくれて、感謝する」
ライアットはロテティに礼を言った。
「貴殿には、勝って貰わねば困るのでな。ライアット殿がいなければわたしが代わりに優勝するつもりだったのだから」
照れくさそうに言って、ロテティは顔をそむけた。どうも正面からライアットの顔がみれないらしい。
「それでさ、王様にはどんな褒美をもらったんだい?」
そんな二人のやりとりを横に押しやって、トレアが下世話な事を口にする。もっとも、他の誰も言葉には出さないが、同じ興味を抱いているのは雰囲気ですぐに判った。
「賞金と、エストニカの正竜士の座。そして、もしアグレスが手当の甲斐なく命を落とした場合には、後任としてバグナドの地を納める領主になれと」
「メシュリーナ姫様は……」
おずおずとフィレルが訊ねる。アグレスが死ねばメシュリーナ姫は未亡人となる。二人の間にまだ嫡子はないという話だから、再婚相手としてライアットが選ばれる可能性もあるのでは、とフィレルは勘ぐっていた。
だが、ライアットは笑って首を振った。
「そんなことにまで気を回す必要はないぞ。なにしろ、俺は賞金以外の褒美は全て断ったのだからな」
「断った? なんで」
トレアが目を丸くする。他の全員も意外な言葉に顔を見合わせている。
「一つ、皆に申し渡しておかねばならんようだ」
咳払いして、ライアットは部屋に集まった仲間を見回した。
「なんでございましょうか」
「皆、これから後の事を考えているだろう。俺がフェテリア再興の為の戦さでも起こすのではないか、と」
「もしライアット殿が立たれるのであれば、拙者はどこまでも随身致す所存ではありますが……」
すかさずそう応じたラナエルがロテティのほうに目を向ける。貴女は自分と同じ考えなのか、と目だけで問いかけていた。
「我等は――」
口を開きかけたロテティは困ったような表情で、傍らの老魔法士・ガルプと視線をかわす。
「ご無理はなされるな」
ライアットが微笑んでロテティの言葉を遮った。
ロテティが赤面してうつむく。
「俺とロテティ殿とは、進む道が違うのだからな」
「ライアット殿はフェテリアの、我等はスゴーの家を、それぞれ再興するのが進む道だと仰るのか」
「早まった事を言ってもらっては困ります。……確かに、皆が俺の武力を評価してくれた。フェテリアの再興も、考えなかったと言えば嘘になります。しかし、今の俺に、御家再興を行うつもりはまったくありません」
「なんと……」
ロテティが思わぬ言葉に絶句する。
「訳をお聞かせ願えますか?」
と、ラナエル。
「理由は二つある。いまや戦乱の時代は去った。浪人竜士を集めてひと合戦やれば、一時は城も持てよう。領地も得られよう。しかしそれは、リムギア大陸全てを敵に回す事を意味するのだ。勝てる道理がない」
「……」
「そしてもう一つ。今、民は曲がりなりにも平和な世の中を納得して、穏やかに暮らしている。竜騎槍試合に一喜一憂していられるのも、平和だからだ。彼らの平和を妨げてまで家を再興したところで、信頼を得られるものでもあるまい」
「では、どうなされるおつもりか。せっかく優勝して、エストニカの正竜士に取り立ててもらえる機会を得たというのに、それも断ったと申される」
ロテティがすがるような目になって問う。
「今更エストニカに、そこまで忠節を誓う理由がなかったからです。そして、アグレスを倒した今、もはやこの地にとどまっている理由もない。……俺は、ジスチャードに渡るつもりだ」
「えっ」
居合わせた全員が虚を突かれていたが、中でもフィレルが一番驚いていた。
「では、ザエリラムと戦うため、ジスチャードに仕官すると?」
「仕官が叶う可能性は低いが、傭兵として参加出来ればと思う。それに、我がベラルハール家に親子二代に渡って使えてくれている魔法士・フィレルにとってジスチャードは父祖の国でもあるのだ。出来れば、ザエリラムなどに黙ってくれてやりたくはない」
「御大将……。うれしく、思います」
涙をこぼしながら、フィレルは再び頭を垂れた。
(29)
港では三本の帆柱を立てた大型の帆船が、出港の準備を進めている。
船体後部の甲板上には竜舎が作られており、その中では既にグレーバウルが尾を抱え込むようにして丸め、翼を休めている。さすがにジスチャードまで飛んでいくのはグレーバウルにも酷な話だった。
いや、自分自身だけならどうとでもなるが、とグレーバウルは言った。が、ライアット達全員が海を渡るには、やはり船のほうが無難だった。なにしろ、ジスチャードの情報はほとんど何も判らないと言ってもよい有様なのだ。
「結局、賞金と手持ちの資金だけでは、グレーバウルを載せるフネを手当するだけで精一杯だったな」
埠頭では、荷物の積み込み作業に手落ちがないか目を光らせつつ、ライアットは嘆息していた。予選大会での賞金も残らず注ぎ込んでしまったため、ジスチャードでの仕官が叶わなければ路頭に迷うことになる。
「すぐに頭数を揃えて後を追います。それまでになんとか足がかりだけでも作っていただけると助かります」
ラナエルが一切の手配を引き受けてくれているおかげで、ライアットは難しい仕事に頭を悩ませずに済んだのだ。ライアットは感謝の面もちでうなずいた。
「俺もできればそうしたいが、なにせ相手のある話だからな。フィレルの顔がどこまで効くか、だな」
「そんな……! わたしは、ただの、従者ですから……」
フィレルが思わずうつむいて口ごもる。彼女の両親がいかなる理由で大陸へと渡り、ベラルハール家に仕えるようになったのかはライアットはおろかフィレル自身ですら知らない。ジスチャードでの暮らしで何があったのかも聞かされていないのだ。
両親が繰り返し語ったのは美しい自然と助け合って生きる人々の素晴らしさのみ。その口調からは、故郷への恨みを感じたことはなかった。
「ライアット。ロテティが来たよーっ」
帆船の中央にある最も高い帆柱の頂部にある見張り台に登って周囲を見おろしていたトレアが大声をあげた。
「見送りにでも来てくれたか」
だが、集まっているのが予想外に大人数であることに、ライアットは表情を固くした。いまにも戦さでも始まりそうな出で立ちと険しい気配からして、どうにもただの見送りとは思われない。
「既に我等の船の準備は整えてあります。私と、スゴー家旧臣一同、ライアット殿の仲間に加えて下さい」
ロテティが進み出て、ライアットに頭を下げた。
「それはいったい、どういう事ですかな」
「皆で話し合ったのです。我等にしても、まずは地力をつけねばなりません。ならばライアット殿の計画に乗るのが一番確実ではないのか、と。迷惑をおかけするつもりはありません。」
「では、ロテティ殿が我等を率いて下され」
なにしろ隠れ無き王家の跡継ぎが参加するのだ。そんな相手を、一介の浪人竜士が率いることなど出来るはずもない。
「それは出来ません。わたしは……、ライアット殿の下で戦うつもりでおります。皆も、ライアット殿と共に戦えるのであれば負けることはあり得ないと信じております。使い潰しにしてくださって結構」
「そいつはまた、とんだ買いかぶりに思えるが……」
「御大将ならばきっとやれます。さあ、そろそろ時間ですよ」
逡巡するライアットはフィレルに促され、船上の人となった。別口で船の都合をつけたロテティ達もその後を追ってくることになる。
ほどなく大きな帆を張った船は岸壁を離れ、外海へと進んでいく。
(槍一本で、命を託せる竜と共に自らの将来を切り開く。それこそが竜士の真の本懐だ。勝負はこれからだ……)
ライアットは舳先に近い甲板に立って潮風を浴びながら、未知の世界に思いを馳せた。
(おわり)
一塁側ベンチに戻る
INDEXに戻る
作者メモ(その9)
前回にましてシーン切り替えが多くなった。ばたついている感がいなめず。
最後の二話で想定以上に文章量が多くなっている。
特に、大多数の台詞まわしに工夫が必要。
ライアット
フィレル
トレア
ロテティ
ラナエル
の五人で会話をしているのだが、これですら今の自分には手に余る。
一通り書き上がったと言えるのか。精度の低下は目をおおわんばかり。
時間を掛けて修正していくよりなし。