2002のポケミス

Hayakawa Pocket Mystery



 毎年夏休みになると、各社の文庫が推薦図書めいたコレクションを揃える。例
えば「新潮文庫の100冊」と言った具合である。
 その真似と言うわけではないが、筆者が溺愛するミステリ・シリーズ「ハヤカ
ワ・ポケット・ミステリ」から、この夏の読書のために5冊のセレクションをし
てみよう。
 ポケミスの解説目録<2002年>を入手し、その中から選んだので、当然イ
ンプリントである。若かりし頃、古書店の棚を目を皿のようにして探したことを
思えば隔世の感がある。

 以下、順不同で5冊。

 
475 ギャラウエイ事件(アンドリュー・ガーヴ) 874円

     最近は全くといって良いほど無視されているガーヴであるが、この作家
    の小説は本当に面白い。単なるサスペンスものと思えば、びっくりするよ
    うな結末が待っていたりして油断のできない作家なのだ。筆者の好きな外
    国人作家の一人である。そのガーヴの最高傑作と断言しても良い作品であ
    る。この楽しさのための874円は安すぎる。

1277 黒い霊気(ジョン・スラデック) 1100円

     ご存じ「見えないグリーン」(HM文庫)の作者の第1作。ディクスン
    ・カーばりの不可能興味。新本格ブームの今、この作品を読んでそのミス
    テリ・マインドに感激して欲しい。

 
675 モルダウの黒い流れ(ライオネル・デヴィッドソン) 1165円

     この作品も誰も持ち上げないので、本当に腹立たしい。CWA賞受賞作
    だが、冒頭からハラハラ、ドキドキの連続である。始まってすぐにあるど
    んでん返しには本当に驚いた。あとはジェットコースター・ノベルである。
    アンストッパブルとはこの作品のためにある言葉だ。最近現実に起こった
    事件を思えば、考えさせられる結末である。

 
178 風が吹く時(シリル・ヘアー) 922円

     シリル・ヘアーも国書刊行会の全集の常連となっているが、この作品も
    国書の全集の収録作品に引けを取らない傑作。「法の悲劇」が品切れなの
    が残念至極だが、本書も素晴らしい出来栄えである。もっとヘアーは評価
    されても良い作家だ。

 2
44 王子を守る者(レジナルド・ヒル) 1200円

     レジナルド・ヒルの冒険サスペンスの巨編。今まで読んだヒルの作品の
    中では最高の出来。最近の長編を読んでヒルを敬遠している方にぜひとも
    読んでもらいたい傑作。もちろん初めてヒルを読む人にも自信を持ってお
    薦めする。筆者のお気に入りの一つである。英国ノッティンガムでのバウ
    チャーコンでレジナルド・ヒルにサインをしてもらったのは、当然本書で
    ある。



  目次に戻る