ポケミス番付帖
(1701〜)


1784 花崗岩の街 スチュアート・マクブライド 北野寿美枝訳 2006年3月15日 初版 Cold Granite (2005) 7点

 450ページもある分厚い小説であるが、一気に読める。連続幼児誘拐殺人?と帯にあるが、この「?」が重要なのである。主人公のローガン・マクレイ刑事がいい。そして相棒のジャッキー・ワトスン婦警がもっといい(名前が意味深である)。冒頭の幼児の死体発見から次々に襲ってくる悪条件に立ち向かう主人公という設定はよくあるものだが、これでもかこれでもかと悪い状況に陥って一時はどうなるかと思わせる。それでも悲壮にならない主人公はやはりタフである。
 難点は事件が起こりすぎるということである。数多くの事件を起こしたためにその解決が薄められてしまって、肝心なところが弱くなってしまった。事件が起こるたびに報道関係にリークされるのだが、ここのところは良かった。
 次回作も期待したい。

訳者あとがき(北野寿美枝)


1785
 白薔薇と鎖 ポール・ドハティ 和爾桃子訳 2006年3月15日 初版  The White Rose Murders (1991) 6点

 あのドハティがいよいよ紹介された。帯によれば、「歴史ミステリの名手」とある。確かに本書は英国の歴史を題材にした不可能興味を持つミステリである。
 冒頭からワクワクさせられるシーンが続く。これはもしかしたらと思わせるのだが、途中から展開が遅くなり(これは英国ミステリの特徴で、あまり気にならないのだが、今回は少し気になった)、うまく物語の流れに乗ることができなかった。それと登場人物が多く、少し混乱した。
 解決も思わず唸ると言ったものではなかったので、期待が少しはずれてしまった。しかし作品リストを見ると、英国では非常に多くの著書が出ている。このような作者の作品について、この一作で判断すべきではないというのが正直な感想である。エリス・ピーターズのカドフェル物もポケミスでは一冊出たきりで終わってしまって、その後現代教養文庫で出版されて人気が出たという例もある。ドハティの実力はこのようなものではないはずである。次作を大いに期待したい。

訳者あとがき イギリス・ルネサンスの食えない面々(和爾桃子)


1786 手袋の中の手 レックス・スタウト 矢沢聖子訳 2006年4月15日 初版  The Hand in the Glove (1937) 7点

 レックス・スタウトと言えばネロ・ウルフと来るのが普通だが、本書は違う。探偵はドル・ボナーと言う女性探偵である。解説によれば、女性探偵の元祖らしい。探偵のキャラクター設定は一般的にエキセントリックなものだが、ドル・ボナーは普通の女性である。地道な捜査を続けるような性格である。
 驚いたのは、本書がオーソドックスなミステリであると言うことである。派手な展開は全くなく、淡々と事件の捜査が進行していくのだ。途中に意外な展開があったりして、読む方は退屈はしない。お薦めである。翻訳がもっと早く出ていても不思議はない作品である。

訳者あとがき(矢沢聖子)


1788 紳士同盟 ジョン・ボーランド 松下祥子訳 2006年6月15日 初版 The League of Gentlemen (1958) 7点

 ポケミス名画座の一冊。完璧な銀行強盗を実行するために、仲間を集め、綿密な計画をたてる。そして、その計画を実行するまでの過程は、実にわくわくする。このあたりのことは、よくわかっていただけると思う。解説もあるとおり「七人の侍」のパターンである。こちらも、ああそうかと思っていても心躍らせてしまうのである。
 もちろん読む方の想像どおり計画は破綻するのであるが、そこの部分が少し弱い気がする(もちろん伏線はちゃんと張ってある)。これは本の厚さにも関係していると思う。もう少し分量があれば、多く書き込めたと思うのに非常に残念である。しかし、集団強盗の話は、いろいろとバリエーションがあって本当に面白い。
 驚いたのは強盗の首謀者が計画を起てるにあたって参考にした本である。それは『逃走と死と』(ライオネル・ホワイト)なのだが、これは佐倉潤吾の訳で翻訳が出ている(ポケミス649)。これも読む必要がある。(2006.7.9)

チーム・プレイの醍醐味(評論家 尾之上浩司)