イラク占領1年目-今イラクはどうなっているのか  -  2004年2月
 こんにちは。ご無沙汰しております。元インターンの前川です。
 いつも新社会党の活躍の方HPなどで拝見しております。
 今日、大学で昨日イラクから帰国したばかりの政治アナリスト(クリスピン・ホース、シンクタンクユーラシアグループの中東局長)の講演があり、イラクの現状について英米の視点から聞くことができたので紹介させていただきます。(以下がまとめです。長くてすみません。)
 小泉首相は国際貢献といっていますが、イラク復興の展望は暗そうです。ますます混沌とするイラクに自衛隊がいってどうなるのか・・・不安です。
 3月20日のロンドンのデモがあるらしいので、またその辺も見てきてお知らせできればと思います。 それではお体お気をつけ下さいませ。


イラク占領1年目 − 今イラクはどうなっているのか

<政治>
 昨年8月から現在に至るまで、政治のシステム及び統治機構(国会、裁判所、行政)を作り直すことに尽力してきたが、あまり成果はでていない。
 2005年の12月に初の国民選挙をする予定だ。おそらくシーア派の候補者が大統領になるだろう。多民族国家のため、政府は少数民族の意思を反映できる連邦国家になるだろう。

<問題点>
 行政機関:現地の行政官の育成が遅れているため、役所を再編成することができない。
 立法機関: 他民族国家のため、大統領が選出されたとしても多数派民族であるシーア派の意思ばかりが反映され、反発を招くおそれがある。
どうやって少数民族の権利を保障するかが課題だ。
シーア派(約60%)、スンニ派(約20%)、クルド人(約17%)の国会内での選出比率をどうするかでもめている。また、イラク社会では伝統的にいくつかの有力な一族が実権を握っているため、真の民主主義が成り立つかどうかはあやしい。
 司法機関:法をアラブ語で作っているため、解釈をめぐって欧米と現地の役人の間で意見の違いがあったり言葉が違うのをいいことに情報操作をする役人もいて、作業は難航している。
 統治機構:CPAに派遣されているアメリカの役人は2、3ヶ月の任期で来ている人が多いため、長期的見通しをもった政策を持っていない。

<経済>
 復興事業に多額の費用をつぎ込んでいるが(日本の経済支援額が群を抜いている)、米大手企業が独占契約しているため、現地の経済活性化につながらない。米企業は現地の人々を雇用しているが、賃金はフセイン政権下と変わらないため消費文化も生まれない。一方、米企業の下請けを担った一部の現地人が小金持ちになりイラク人の間で経済格差が生まれてきている。
 イラク経済はフセイン政権時の石油産業への過剰な依存と中央集権化の為、民間企業が育ちにくく、景気回復が難しい。また、法が整備されていないため内外からの投資も少ない。経済の多角化とインフラ整備が当面の課題である。

<生活>
 莫大な資金投入にも関わらず日常必需品及び水と電気が特に不足している。

<安全>
 アラブ地域統治の経験があるイギリス軍の多い南部地域は比較的安全である。しかし、北部と首都近郊、アメリカ軍が占領している地域は危険である。バグダッドでは特にバース党の残党が多く、反米感情が強い。また、旧バース党員が逆に米占領下で迫害されることも多く、彼らの間に不安が広がっている。現地ではここ数ヶ月の抵抗勢力活動やテロはまだほんの序章にしかすぎないという見方が強い。これからますますそういったテロ活動が活発化してくるだろう。
 汚職は日常生活のいたるところにはびこっている。ほぼ無法地帯なため、店やタクシーなどは最低でも戦前の10%増し払わないとサービスを提供しない。また、特に国境地帯で密輸商人や麻薬売人など増え、治安が悪化している。

<アメリカの戦略と展望>
 イラク政権打倒はブッシュ政権発足以来の目標であり、イラク戦争はアラブ世界(とその石油)をアメリカの支配下に置くという長期的目標達成の為の一段階でしかなかった。が、ここにきてその展望に陰りがみえてきた。莫大な資金投入にもかかわらず、イラク情勢は泥沼になりかえってテロの温床をつくりだしてしまったことや、アラブ世界の反感を買ってしまった事、また国内での支持率の低下などから、アメリカは今戦略の転換をせまられている。

ソース: クリスピン・ホース、ユーラシアグループ中東アフリカ局長
"Year1 - Quo Vadis Iraq?" LSE, 2004/02/16
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