

- Mr.&Mrs.スミス
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「Mr.&Mrs.スミス」を日本語に訳すなら「スミス夫妻」ということになるだろうか。
ストーリーは、ロメオとジュリエットのように、反目しあっている組織に所属する相思相愛の二人の物語である。違うところは、そのことに気づくのが結婚した後だったということである。
建築業者のジョン(ブラッド・ピット)とコンピューター・プログラマーのジェーン(アンジェリーナ・ジョリー)。二人が出会ったのは、政情不安定な南米コロンビアの首都ボゴタ。警官や兵士が、ホテルに泊まる個人を一人ひとり尋問している。その尋問を逃れるために、偶然そこに居合わせた二人はカップルを装い、その場をしのいだが、このことがきっかけで二人は急速に接近し結婚する。
しかし、この二人、只者ではない。表面的には平凡な市民生活を送っているように見えるが、ご両人とも、組織からの命令により暗殺を実行するプロの殺し屋なのである。そして、その組織というのがまたライバル同士であるというので、当然ややこしい問題が起こってくる。お互い、隠し通してきた秘密だが、ついにそれぞれの組織がスミス夫妻の相手のことに気づき、48時間以内に相手を抹殺するよう命じてくる。抹殺に失敗すれば、もちろん本人自身が組織によって抹殺される。
かくして、銃と格闘で相手を抹殺しようとする壮絶な「夫婦ゲンカ」が始まるのである。なんせ腕利きの殺し屋同士の戦いだ。これは、なかなか決着がつきそうにない。アンジェリーナが「気がついたらグーで殴っていたわ」と言うほどの真迫演技。そしてついに、48時間の制限時間が迫り、それぞれの組織から二人を抹殺する刺客が送り込まれてくる。
しかし、この喧嘩、一瞬銃声が止んだ瞬間瞬間に、これまでの夫婦生活の中で我慢してきたことや日頃の不満も相手をなじる兵器としてポンポン飛び出す。ところが、相手の言い分を聞いてみると、それは誤解であったり、相手を思うがゆえの嘘であったということが判ってくる。刺客との激しい撃ち合いやカーチェイスに応じながら、二人は、激論を交わし続ける。
そして、いつしか、わだかまっていた誤解が次々に解けていき、二人は、本当にお互いに愛し合っていることに確信を持つようになる。そうなれば怖いものはない。二人が力を合わせば、何十人という刺客など敵ではない。見る見るうちにバッタバッタと片付けてしまうのである。
監督は、「ボーン・アイデンティティ」のダグ・リーマン。これに今や誰もがアクションスターと認める主役の二人が加わるこの映画は、コメディータッチのノンストップアクション映画として、完成度は高い。
夫婦喧嘩を題材にした映画は多い。この「Mr.&Mrs.スミス」という題名も往年のヒッチコック映画「スミス夫妻」(1941年)と原題を同じくするところからみると、多分パロディー的な要素を意識的に採り入れているものと思われる。
ともかく、戌年の正月早々、「犬」も食わない「夫婦ゲンカ」に付き合わされたという感じもしないではない。教訓が得られたとすれば、まあ、好きで一緒になった夫婦なら、本音で話し合えば解けない誤解はないということか……。 (容)
 
- 船戸与一「蝶舞う館」 講談社 1995円(税込み)
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船戸与一の新作が出た。「蝶舞う館」だ。船戸の作品は、世界各地の虐げられた民や少数民族の怒りなどを題材にした冒険物が多く、今回は舞台がベトナムである。
ベトナム解放30周年記念特別番組TVクルーが日本から派遣される。制作会社プロデューサー宮永良治、リポーター知念マリー、現地で旅行会社を経営する菱沼大介、両足のない元戦場カメラマン岸谷浩司。知念マリーが誘拐されたことにより彼らは否応なくベトナムが抱えている少数民族問題に巻き込まれていく。ベトナムでの総人口は7千9百万強で、そのうち84パーセントをキン族が占め、残りが53の少数民族なのである。そしてもう一人重要な人物が公安局第二課長グエン・タン・ハイ。彼はキン族の優位性を疑わず、少数民族の「民族破壊」を徹底しながらも、賄賂には絶対手を染めない。今のベトナムを憂いているのだ。
ベトナム戦争時代、彼らの祖父が父がそして本人が深く関わっており、人物像がしっかりしているので感情移入がしやすく、読み出したらやめられない。ベトナム戦争後も虐げられた人々が多数おり、特にドイモイ政策後矛盾は広がる一方にある。とにもかくにも一度読んでみることをお薦めする。
今月のもう一作は 東野圭吾「容疑者Xの献身」 文藝春秋 1680円(税込み) である。いやはやおもしろい。よくこんなことを考えつくよなと感心する。「おもしろ本大賞」をあげたいが、すでにいろんなところでベスト1に輝いているのでそんな必要ないか。
花岡靖子、美里の親子が金の無心に来た元夫を殺害してしまう。同じアパートの隣の部屋に住んでいるうだつの上がらぬ風采の石神が完全犯罪の協力を申し出る。彼は言う「私の論理的思考に任せてください」と。
警視庁捜査一課の草薙俊平が事件を担当、早速、同級生である探偵ガリレオこと帝都大学物理学科助教授湯川学に相談に行く。そこで石神のことが話題に出て、彼は帝都大数学科の卒業者であるばかりか湯川学の学生時代の友人で、百年に1人という天才的な数学者であった。彼は、数学者エルデシュの信者で「よい定理には美しく自然で簡明な証明が必ずある」を追求している(このあたりのことを分かりやすく小説にしたのが「博士が愛した数式」でおもしろいこと請負です)。
彼は靖子と美里に完璧なアリバイを与え、次々と対策を講じていく。警視庁はなすすべがない、しかし湯川学が石神を追いつめていく。伏線がうまくちりばめられており、最後になって明かされる真実に愕然とするばかりか感動さえ覚えてしまった。
読書は至福の時間であることを知らせてくれる一冊である。 (芥明大)
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