2018年07月10日号
■改憲手続法 小手先の改定ではなく、抜本的な見直しを
  延長国会では改憲手続法(国民投票法)改正も焦点になっている。 今国会では憲法審査会の実質的な審議が一度も行われていない。自民党は、憲法審を少しでも動かし、自民党の改憲案を中心に改憲論議を進めたいところだったが、立憲民主党などが「憲法審査会でまず改憲手続法の改正を優先させるべきだ」としたため、自民はこれに応じざるを得なかった。
 自公両党が合意した国民投票法改正案は、2016年の公職選挙法の改正内容に沿って、国民投票法を改めるもの。駅や商業施設への共通投票所設置や投票の開始・終了時間の弾力化、遠洋航海中の洋上投票の対象者拡大など7項目にわたる。
 もともと改憲手続法は、第1次安倍内閣の下で2007年5月に自公両党によって強行採決されたもので、参議院の採決では、極めて異例な「3つの附則」と「18項目の付帯決議」がつけられるという「欠陥法」だった(同法は2010年5月施行)。
附則は、@投票年齢の見直しなど、A公務員の運動自由化のための措置、B重要問題についての一般的国民投票の検討であり、18の付帯決議は、最低投票率の導入の検討や教育者・公務員の地位利用の規定、テレビ・ラジオの有料意見広告問題など、重要な事項の再検討を要求したものだった。
 「欠陥法」は、第2次安倍政権下の2014年6月、自民、民主など与野党8党の賛成で、一部「改正」され成立した。しかし、根本的な欠陥(重要問題)は放置されたままだった。社民、共産は反対した。
 前述のとおり、与党の改正案は、 附則や付帯決議で指摘されている改憲手続法の根本的な欠陥について回避し、枝葉末節の部分だけを取り上げ、審議が停滞している憲法審再開の呼び水にしたい思惑が見え見えである。
 例えば、国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられていないために(CMの規制がない)、資金力のある団体の主張が投票結果に影響を与えかねないことなど、「カネの力」で国民投票がゆがめられてしまう恐れもなしとはしない。2015年の大阪都構想住民投票で、「推進派は約1カ月で数億円をつぎ込み、橋下氏のテレビCMを精力的に放送。冷静な議論より資金力がものをいう懸念が広く共有された」(6月22日付・毎日社説)。
 憲法審は、小手先の法改正でごまかすべきではない。与党が改憲手続法の抜本的な再検討に反対するわけは、安倍首相が企てる改憲スケジュールが大幅に狂いつつあるからであろう。
 改憲手続法の抜本的な見直しなしには、国民投票がゆがめられてしまう。国民投票運動の公平・公正を保障する抜本的な見直しを強く求めていこう。
自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党は6月27日、国民投票法改正案を衆院に提出し、今国会での成立を目指す。立憲民主と国民民主は与党の共同提出の呼びかけに応じなかった。共産、社民はもともと反対。
(中)
2018年06月26日号
■「専守防衛」の原則投げ捨て、「軍事大国」へ 自民・防衛大綱提言
 自民党は、政府が年末に策定する「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(中期防)への提言を安倍首相に申し入れた(提言の内容は前号の小欄参照)。
 提言は、現在の安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」と位置づけ、これまでGDP比1%以内を目安としてきた軍事費を、NATO(北太平洋条約機構)が2%の達成を目標にしていることを「参考」に一層の拡大を求めている。
 さらに提言が、海上自衛隊最大の「いずも」の改修を念頭に「多用途運用母艦」(攻撃型空母)とその搭載機としてF35B最新鋭ステルス戦闘機の導入を盛り込んでいることも重大である。また、敵基地攻撃能力の必要性を訴え、巡航ミサイルの保有検討の促進を求めている。
 他国への軍事攻撃を可能とする自民党の提言が 憲法に違反するのは明白であり、戦後の防衛政策の基本を転換する画策に他ならない。情勢の流れに逆行するものだ(下記「防衛の基本政策」参照)。
 安倍政権復帰後初めての13年度予算から軍事費は6年連続増額され、現在5兆円を突破している。NATOなみのGDP比2%にすれば10兆円超になる。軍事大国化への道は到底認めるわけにはいかない。
 軍事費を聖域として戦争に突き進んだ「いつか来た道」を歩むことを許してはならない。
《参考―防衛の基本政策》
〈専守防衛〉
 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。
〈軍事大国とならない〉
 軍事大国という概念の明確な定義はないが、わが国が他国に脅威を与えるような軍事大国とならないということは、わが国は自衛のための必要最小限を超えて、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しないということである。(いずれも2017年版防衛白書から)
■9条改憲阻む世論大きく 全国市民アクション1350万人分国会提出
 安倍9条改憲NО!全国市民アクションは6月7日、4月末までに集約された「安倍9条改憲NО!憲法を生かす全国統一署名」の第1次提出集会を衆院議員会館で開催した。
 会場には段ボール箱260個が山積みされ、当日に各地、各団体から持ち込まれた署名用紙の束も加わった(市民アクションHP)。野党4党・2会派の代表に署名を手渡し、「9条変えるな」「3000万人署名を1日も早く達成しよう」とコールした。
 5月以降の1カ月間にも各地で署名が増え続け、1500万人を超えたと推測されており、通常国会に提出できなかった分は、秋の臨時国会に提出することになっている。
 事務局では今後も署名活動を継続し、署名用紙を逐次、全国市民アクションに送付するよう呼びかけている。
(中)
2018年06月12日号
■衆院憲法審査会 与野党綱引き 実質審議入り見通せず
 衆院憲法審の与野党筆頭幹事が5月29日、国民投票法改正案の取り扱いをめぐって協議した。自民党は「審査会を来月7日に開き、改正案の趣旨説明と質疑を行うことを提案した」(時事)が、立憲民主党は「他の野党の手続きの遅れを理由に困難との認識を示した」(同)。
 与党は、駅や商業施設への共通投票所設置や遠洋航海中の洋上投票の対象者拡大など8項目の改正案をまとめている。
 立憲党は、国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられておらず、資金力のある団体の主張が結果に影響を与えかねないとしてCMの規制など踏み込んだ改正を求めている。与党は拒否。
 与野党の調整が長引けば、今国会中の憲法審で自民党が3月の党大会でまとめた改憲4項目の審議に入るのは困難になる。
 衆・参憲法審のHPは「開会予定の審査会はありません」(5月31日現在)と表示している。
■防衛大綱 自民提言案 空母も、巡航ミサイルも、F35Bも持つ 大軍拡すすめ、「専守防衛」の原則投げ捨て
 「未曽有の財政難をよそに防衛費を聖域化し、専守防衛の原則から逸脱する軍拡路線であり、到底認められない」―5月30日付・朝日新聞社説の書き出しである。
 自民党の安全保障調査会と国防部会は先月25日、合同会議を開き、政府が年末決定する予定の新らたな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画(中期防)に反映する提言案をまとめた。
 歴代政権は「自衛のための必要最小限度」を超える攻撃型兵器の保有を禁じてきたが、その具体的な例の1つが攻撃型空母であった。提言は「空母」の明記を見送り、「多用途運用母艦」に改め、海上自衛隊最大の艦船「いずも」を念頭に「既存艦艇の改修を含めた導入の検討を進め、早期実現を図る」とした。
 同鑑に搭載するF35B最新鋭ステルス戦闘機の取得を盛り込んだ。F35Bは、短距離の滑走で離陸や垂直着陸ができる。対地攻撃を行うF35Bの運用は、「いずも」を違憲の攻撃型空母に変ぼうさせるものである。
 また、提言は、敵基地攻撃能力の必要性を強調し、「巡航ミサイルなどの保有について検討を促進」と明記している。さらに、「弾道ミサイルのほか、敵の航空機や無人機、巡航ミサイルなどに総合的に対処する統合防空ミサイル防衛(IAMG)の体制構築」も打ち出した。
 現在の安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」とし、これまで防衛費をGDP比で1%以内を目安としてきたが、提言は1%の突破を求めた。5兆円台に膨らんだ防衛費を、北大西洋条約機構(NATO)なみの2%を「参考」として例示している。10兆円規模に倍増しろというもの。
 戦争法の成立を強行した自民党。5年ぶりに見直す「防衛大綱」はキバをむきだしてきた。専守防衛の原則をこともなげに投げ捨て、大軍拡路線を推し進め、軍事大国への道を突き進む。
(中)
2018年05月29日号
■いらだつ自民党 憲法審査会をめぐる攻防
 自民党の高村副総裁は、記者団に「審査会が動いていないことは困ったことだと思う」「今年中の発議を諦めていないが、できないのであれば、来年のできるだけ早い時期にと考えている」(NHK)と述べ、立憲など野党の抵抗で、改憲論議がままならないことへのいらだちを見せた。
 安倍首相は憲法記念日の5月3日、改憲右翼団体の日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが開いた改憲集会にメッセージを出し、「自衛隊違憲論が存在する最大の原因は、憲法にわが国の防衛に関する規定が全く存在しないことにある」(朝日)と持論を繰り返した。
 多くの国民は、メディアの世論調査でも明らかなように安倍政権下の改憲に反対している。9条への自衛隊明記が、3原則の一つである「平和主義」を根底から覆すことになるからである。戦前の歴史への反省を否定する道であることを理解しているからにほかならない。
 自民は憲法審を開き、同党がまとめた改憲4項目の条文案(たたき台素案)の議論に1日も早く入りたいのが本音であろう。だが、国会における与野党の対立が激化し、憲法審開催もままならない。
 自・公は5月15日、憲法審開催の呼び水にしようと改憲手続法の改定案を合意した。洋上投票の拡大など8項目からなる。5月17日の衆院憲法審の幹事会に提示した。
 幹事会後に開かれた今国会初の憲法審は、国民民主党結成に伴う新幹事の選任のみに終わり、実質審議は行われていない。参院は5月23日に憲法審。幹事選任で審議なし。
  野党は抵抗の姿勢を崩していない。(5月17日記)
■戦争法で「戦闘を伴う任務遂行」増大 陸幕作成文書に明記
 安倍政権は2015年9月19日に安保法制(戦争法)の成立を強行したが、その直後に開かれた「防衛相直轄の会議用資料に『戦闘を伴う任務遂行』の可能性が高まる」(東京新聞)と記載されていることが、5月11日の衆院外務委員会で明らかになった。外務委で共産党の穀田議員が示したのは、陸自の陸上幕僚監部が作成した「陸幕施策等説明」という表題の文書。
 文書は戦争法に基づく集団的自衛権の行使について「米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務遂行の可能性は増大する」と指摘している。
 また、PKOの新任務(駆け付け警護など)により「武力行使を伴う任務遂行の可能性が増す」と記述している。
 安倍首相は、戦争法の審議を通じて「集団的自衛権の行使は限定的で、米軍の戦争に巻きこまれることはない」と明言。「平素から訓練が可能になりリスクは下がる」と答弁してきた。
 この政府の見解は文書の内容とまったく異なる。文書によれば、政府は戦争法によって「自衛隊員が戦闘に加わるリスクを認識していたことになる」。
 それ故、一連の陸自日報の隠ぺいが行われたのではないか。戦争法は廃止するしかない。
(中)
2018年05月15日号
■ 憲法施行71年 年内発議めざしうごめく自民党
 内閣支持率が急落し、政権の足元が揺らぐ中、自民党は年内の改憲発議を目指し蠢動している。
 憲法改正推進本部の細田本部長は日本記者クラブで記者会見し、「政治情勢にかかわらず憲法改正を目指す」と強気な発言。「国会で議論されるのが正しい民主主義だ……各党との憲法審査会での協議を早期に開始したい」(NHK)と呼びかけた。
 また、公明党や立憲民主党が、憲法審査会で改憲手続法の改正を優先させるべきだとしていることについて、「国会で協議することはやぶさかではない」(毎日)と要求を受け入れ。応じなければ改憲論議が遅れると判断したようだ(5月3日現在、衆参の審査会日程は未定)。
 一方、安倍首相は4月20日、党所属の都道府県議を対象にした研修会で「自衛隊の違憲論争に終止符を打とう」と持論を繰り返した。改憲スケジュールが厳しくなっている中、「みなさんとともに新しい日本をつくりあげていきたい」(毎日)と協力を求めた。研修会は、国民投票で過半数の賛成を得るには、有権者と日常的に接している地方議員の理解を深める必要があるとみて開かれたもの。
■自民改憲4項目 すべてで「反対」が「賛成」を上回る 共同通信世論調査
共同通信社は4月25日、郵送方式で実施した憲法に関する世論調査の結果をまとめ、発表した。
 それによると、自民党が目指す改憲4項目すべてで「反対」や「不要」の否定的意見が上回り、世論の理解が得られていない現状が明らかになった。
 9条改憲に反対は46%、賛成44%で拮抗した。教育充実のための改憲は不要70%で、必要28%に大差をつけた。
 9条改憲に次いで自民党が重視している緊急事態条項の新設については、内閣の権限強化・私権の制限に反対は56%、賛成42%。参院選の合区解消については、62%が改憲不要とし、33%が必要とした。
  民党が年内の改憲発議を視野に2020年の改正憲法施行を目指していることについて反対が62%、賛成は36%だった。安倍首相の下での改憲に61%が反対し、賛成は38%だった。 安倍政権下の改憲反対が60%を超えているが、本丸である9条改憲の賛否が拮抗している。「3000万署名」の成功をはじめ、安倍9条改憲の危険性を訴える学習会や集会、街頭宣伝などの諸活動が喫緊の課題となる。
■導入予定のミサイル 「敵基地攻撃」可能
 毎日新聞は、米軍のシリア攻撃で、「日本政府が導入する方針の航空機搭載型の長距離巡航ミサイルが使われた。政府は、このミサイルを離島防衛などのため敵の対空ミサイル射程外から攻撃する『スタンドオフ・ミサイル』と位置づけているが、敵基地攻撃が可能であることが実証された形だ」と報じた。
 自民党の安全保障調査会は、9条の制約上、保有できないとしてきた「敵基地反撃能力保有」の検討を提言している。
(中)
2018年04月24日号
■ いま、重大な岐路に 「3000万署名」をやり抜き、改憲発議阻止へ
 相次ぐ公文書の改ざんや隠蔽によって、安倍政権の足元が大きく揺さぶられているなか、安倍首相は国会答弁で、「自衛隊の違憲論争に終止符を打つのは、防衛政策の基本ではないか」「現行憲法で積み重ねた安全保障の原則は変わらない」「(国民投票で改憲案が否決されても)自衛隊の合憲性は揺るがない」(4月9日の参院決算委員会)……改憲に強い意欲を示し、強気の答弁を繰り返している。
 自民党の細田憲法改正推進本部長は共同通信のインタービューに応じ(4月10日)、「連立与党の公明党、野党の日本維新の会などの協力に期待感を表明する一方、森友学園や自衛隊の日報隠蔽などの問題が収束しなければ協議は進みにくいとの認識を示し、改憲発議の時期は『白紙』と強調した」。
 また、「憲法9条への自衛隊明記など4項目の条文案は、他党との協議を通じて改憲原案を作成するための『たたき台』と説明。『修正はこれからの話し合いだ。そこは柔軟だ』と述べた」。
 細田氏は、「年内発議」など、改憲スケジュールも大幅に後退を余儀なくされている現状を認めている。自民党は先の党大会で改憲4項目の条文案決定に至らなかったが、各党協議などに提示する「たたき台素案」をまとめている。
 こうした中、公明党は、改憲手続法(国民投票法)について「事前に決められた投票所以外でも投票可能な『共通投票所』を駅の構内やショッピングセンターなどに設置できるようにする」(NHK)など同法の改定を自民党に求めている。山口代表は「国民投票法が、きちんと整備されることが優先課題だ」(同)と指摘し、憲法審査会で先行して議論すべきだとしている。
 立憲民主党は、「国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられていないため、資金力のある団体の主張が結果に影響を与えかねない」(同)などと指摘し、改定案の国会提出を検討している。
 今後、改憲手続法改定の取り扱いが、改憲論議の進展に影響を与えることも予想される。  自民党が、9条に自衛隊を明記するなどの「たたき台素案」をまとめたことは重大である。憲法はもっとも重大な岐路に立たされている。
 「たたき台素案」の危険性については、前号の本小欄でも指摘しているが、「9条の2」を新設し「前条(9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として…… 自衛隊を保持する」と明記することで9条1項、2項を死文化し、戦争法で「限定的」とされた集団的自衛権のフルスペック(制約のない全面的な)行使にまで道を拓くことを狙っている。
 多くの国民は、森友・加計疑惑、公文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽など安倍政権の悪政に怒っている。安倍内閣糾弾の闘いと一体になって、「3000万署名」をやり抜き、9条改憲の発議を阻止する大きな世論をつくりあげることである。
(中)
2018年04月10日号
■安倍・自民9条改憲案2項空文化 歯止めなき海外での武力行使
  「いよいよ、結党以来の課題である憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」―3月25日に開いた自民党大会における演説で、安倍首相は9条改憲への異常な執念を示した。
 採択された2018年度運動方針では第1項目で「憲法改正案を示し、改正実現を目指す」としたが、「大会では具体的な条文案を示さず、了承手続きもなかった」(東京)。党内や与党内での異論が強かったということであろう。
 二階幹事長は党務報告で改憲4項目の「『条文イメージ・たたき台素案』について、一定の方向性を得ることができた」(同党HP)と報告している。
 憲法改正推進本部は、「9条1、2項を残し、自衛隊を明記する」安倍改憲案に沿って、昨年6月から改憲4項目(@9条への自衛隊明記A緊急事態条項の新設B参院選挙区の合区解消C教育無償化)について議論を重ねた。
 もちろん改憲の本丸は9条である。
 推進本部は当初、「2項を維持して『9条の2』を新設した上で、『必要最小限度の実力組織』として『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する』」とする案で集約する段取りであったが、3月15日の全体会合では「定義があいまい」などの反対意見が相次いだ。
 このため、大会を直前にした3月22日の全体会合では、「必要最小限度の実力組織」という表現を削除し、「必要な自衛の措置をとる」に置き換えた案が示されたが、それでも異論が続出したため推進本部の執行部は議論を打ち切り、強引に細田本部長への一任を決めた(参考)。
 二階幹事長は党務報告で、「今後、『たたき台素案』をもとに衆参の憲法審査会で議論を深め、各党や有識者の意見も踏まえ、憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指す」と強調した。
 歴代政府は、戦力不保持の2項があるために、自衛隊を「軍隊ではない」「自衛のための必要最小限度の実力組織である」から合憲だとしてきた。「必要最小限度の実力組織」という文言を削除し、「必要な自衛の措置」に置き換えれば、合憲の根拠を投げ捨てることになり、「専守防衛」の放棄につながる。
 自民党が、9条に自衛隊を明記するなどの「たたき台素案」をまとめたことは重大である。「自衛の措置」とは「自衛権」であり、個別的自衛権だけでなく集団的自衛権も含まれる。戦争法で容認している集団的自衛権の行使を憲法上でも認めることになる。
 さらに、9条2項が海外での武力行使を許さない歯止めになってきた。新設された9条の2の1項は「前条(9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として…… 自衛隊を保持する」と規定。憲法9条2項は死文化され、海外での武力行使の歯止めがはずされてしまう。
 危険極まりない安倍・自民改憲を断じて許してはならない。
 9条に象徴される徹底した平和主義は、多くの国民から、そして国際社会からも幅広い支持を受けている。「9条の心」を世界にはばたかせることこそ、いま、日本がとるべき道である。
《参考》
 各党協議などで自民党が提示を想定している9条改憲の「たたき台素案」(現行9条を残して、9条の2を新設)
 第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
 2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
■防衛大綱 自民提言案―敵基地攻撃能力 空母・F35B保有を提唱
 自民党安全保障調査会は3月20日、政府が年末の決定を目指す新たな「防衛計画の大綱」に向けた提言の骨子をまとめた。
 提言は、空母の導入や艦上で短距離離陸・垂直着陸が可能な最新鋭F35Bステルス戦闘機の取得を明記した。政府は、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」などの「攻撃型空母」への改修を検討しており、搭載されるF35Bは対地攻撃を主任務とする。
 さらに、提言は政府が憲法9条の制約上、保有できないとしてきた「敵基地反撃能力保有」の検討や、「弾道ミサイルのほか、敵の航空機や無人機、巡航ミサイルなどに総合的に対処する統合防空ミサイル防衛(IAMD)の態勢構築」(毎日)を盛り込んだ。
 自衛隊の装備体系が大きく変質され、9条の改憲策動と一体になって「戦争する国」づくりへ突き進んでいく。
(中)
2018年03月27日号
■安倍9条改憲は平和主義を根底から破壊 7つの条文案提示
  自民党憲法改正推進本部は3月15日の全体会合で9条改憲について議論した。会合では条文案として、「2項維持・自衛隊明記」が3案、「2項維持・自衛権明記」が2案、「2項削除」が2案の計7案を提示(別表参照)。
 細田本部長らは安倍首相の意向に沿って「2項を維持して『9条の2』を新設した上で、『必要最小限度の実力組織』として『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する』」(東京)とした別表@案で一任取り付けを狙ったが、石破元幹事長らの抵抗が強く、この日の意見集約を見送った。20日にも全体会合を開く方針。
 「2項維持・自衛隊明記案」は「幅広い理解が得られる現実的な案だ」などといった賛成意見が優勢だったようだ。
 一方、「2項削除案」を唱えている石破氏らは「必要最小限度だから戦力ではないと分かる人はどこにいるのか」(毎日)「必要最小限度という表現を憲法に書くと防衛力を過度に制約しかねない」(東京)などとする反対意見も相次いだ。
 7つの条文案のいずれも憲法9条の平和主義を根底から破壊するもので、断じて許されない。「3000万人署名」をなんとしても成功させ、安倍首相と自民党の改憲への野望を打ち砕こう。(3月16日記)
《別表》自民9条改憲7案(要旨)
●2項維持・自衛隊明記
@必要最小限度の実力組織として、自衛隊保持(「9条の2」を新設)
A前条(現行9条)の範囲内で、各行政各部の一として自衛隊を保持(9条の2)
B前条(現行9条)の規定は自衛隊保持を妨げない(9条の2)
●2項維持・自衛権明記
C前2項の規定は自衛権の発動を妨げない(3項新設)
D前2項の規定は自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を保持
●2項削除
E総理を最高指揮官とする国防軍を保持(9条の2)
F陸海空自衛隊を保持(9条2項)
■小野寺防衛相 「いずも」の「攻撃型空母化」研究認める F35B搭載
 小野寺防衛相は参院予算委員会で(3月2日)、「海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦(「いずも」など)についてステルス戦闘機F35Bを搭載する空母化が可能か調査研究していることを初めて認めた」(毎日)。
 敵基地攻撃能力をもつF35Bは、短距離の滑走で離陸や垂直着陸が可能な最新鋭の戦闘機。艦艇に離発着できるよう「いずも」の「攻撃型空母」への改修を検討している。
 政府はこれまで専守防衛のもと攻撃型兵器の保有を禁じており、大陸間弾道弾や長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を例示している。政府が年末の決定をめざす「防衛大綱」に対する自民党の提言骨子案が明らかになった。「敵基地攻撃能力保有の検討」や「F35Bの取得」などを要請している。
 憲法違反の「攻撃型空母」保有への検討は許されない。
(中)
2018年03月13日号
■石破氏 「党決定なら従う」 9条改憲原案の意見集約が加速
 9条2項の削除か、維持かで対立していた自民党の憲法改正推進本部の9条改憲原案(条文案)の意見集約が加速することになろう。
 2項削除の急先鋒であった石破・元幹事長は2月27日、国会内で記者団に、安倍首相提案の改憲案(1、2項をそのままにして自衛隊を明記)が正式に決まった場合、「従うのは党員としての義務だ」と明言した。石破発言を受けて、難航している党内の条文案の意見集約が進む公算が大きくなった。
 同時に石破氏は自民案が党大会(3月25日)でまとまった場合でも「(2項削除)の持論は封印しない」とも語っており、9月の総裁選に出馬し9条改憲を争点にすると表明した。
ちなみに、石破氏は推進本部に提出した「9条改正案」を自身のブログで公表している。
 2項を削除して「陸海空自衛隊を保持する」と明記。2012年の党改憲草案で「国防軍」とした部分を変更し、自衛隊の国会による統制や、最高指揮官を内閣総理大臣とする規定なども盛り込んだ。
 2月28日の推進本部の全体会合は、焦点の「自衛隊の明記」について議論を促進するために党所属の国会議員から条文案を募った100を超える案を5つに類型化して議論した。2項を維持する案が最も多かったという。
 細田本部長は「3月中旬に9条を課題とした全体会合を再び開き、2項維持を含めた具体案を提示する」(日経)と表明。石破氏は、全体会合の様子を「一定の方向に収れんする感じではない」と記者団に説明(毎日)。
 3月25日の党大会までに改憲案の集約を目指す。
■まず9条加憲、次に2項削除 自民党の船田氏9条改憲の本音語る
 自民党の船田・憲法改正推進本部長代行は2月15日の国会内集会でビデオ出演し、かねてから唱えている9条の「2段階改憲論」をあからさまに語った。
 船田氏の「2段階改憲論」は、まず安倍首相が提案している9条1、2項をそのままにして自衛隊を書き込むことによって2項を空文化し、次の段階で2項を削除するというシナリオを描いている。安倍9条改憲の隠したかった手の内を正直に語ったことになる。「2段階論」は改憲右翼団体「日本会議」から出ている。
 安倍首相は、「自衛隊を明記してもその任務や権限に変わりはない」と繰り返し国会答弁しているが、大きなウソであることが明らかになってきている。
 9条に明記される自衛隊はこれまでの自衛隊ではない。いまや自衛隊は2015年に制定された戦争法によって変質しており、集団的自衛権の行使が容認された自衛隊である。いつでも、どこでも海外に出かけて行って、米軍のあらゆる戦争を支援することができる新しい自衛隊である。
 たんに自衛隊の存在を書き込むだけという現状維持的なものではない。安倍9条改憲は戦争への道であり、憲法の平和主義を根底から破壊するものである。
(中)
2018年2月27日号
■安倍首相のおかしな改憲発言 誤魔化しの手口は許さない
 「自衛隊の存在を憲法に明記してもしなくても、明記した改憲案が国民投票で承認されてもされなくても何も変わらないのなら、改憲案を発議し、国民投票にかける意味がどこにあるのか」―2月10日付「東京新聞」の社説である。
 前号の本小欄でも触れているが、 安倍首相が混乱した国会答弁を繰り返している。 @自衛隊を明記してもその任務や権限に変わりはない(1月24日の衆院本会議、2月5日の衆院予算委)、A自衛隊が合憲であることは政府の一貫した立場である。明記案が国民投票で否定されても合憲性は変わらない(2月5日の衆院予算委)……と。
 それならば、安倍首相は何のために改憲を提案しているのか、何のために850億円もの巨費をかけて国民投票を実施するというのか―誰が、どう考えてもおかしい。答弁の混乱は安倍改憲に道理がないことを示すものである。
 他方、安倍首相が得意とする国民を言いくるめるための誤魔化しの手口でもある。集団的自衛権の行使が容認されている自衛隊を明記すれば9条の意味は大きく変わり、空文化する。
 長くなるが2月9日付の「朝日新聞」社説を引用する。
「両者(2項維持論と削除論)が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。『変わらない』と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう『変わる』のかを国民に説明しなければならない。自民党の改憲論議は、深いジレンマに陥っている」―と指摘している。
■安倍9条改憲阻止 3000万人署名で世論喚起を
 安倍9条改憲の野望を阻止する上で世論の動向が重要だ。ここに、全国で取り組まれている3000万人署名運動の大きな意義がある。
 共同通信社の全国世論調査(2月12日付「東京」)によると、自民党が改憲論議で集約しようとしている9条2項を維持したまま自衛隊の存在を明記する(安倍首相案)への賛成は38・3%(無党派層30・5%)だった。2項を削除し自衛隊の目的・性格を明確化する(2012年の自民党改憲草案)は26・0%(同24・3%)で、自衛隊明記の改憲は必要ないは24・9%(同31・3%)だった。
一方、安倍首相の下での改憲に反対は49・9%(1月の前回調査54・8%)で、賛成は38・5%であった。
 さらに年代別に見ると2項維持支持は30代以下の若年層で47・0%に達しており、60代以上の高年層は30・7%に止まっている。改憲は必要ないの答えは若年層で16・3%しかなく、高年層では32・4%。
民意は割れており、安倍9条改憲案は広がりを見せていない。自民党内の意見集約も難航している。
(中)
2018年2月13日号
■「実現する時」 アクセル踏み込み続ける安倍首相 改憲発議に執念
 通常国会が開会した1月22日、自民党の両院議員総会で、安倍首相は党総裁として「わが党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた」と強調し、「私たちは政治家だから、それを実現していく大きな責任がある。いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たしていこう」(東京)と自民党議員にゲキを飛ばした。
 一方、この後の施政方針演説では「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法である。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待している」(官邸HP)と議論の加速化を促した。
 演説に対して立憲民主党の枝野代表は、「国の理想の姿を語る」という首相の憲法観を「近代国家では主権者が政治権力を制限するルールだ。理想の姿は、各政党が綱領や政策で示していくものである」と反論し、特異な憲法観では「まっとうな議論ができるはずもない」(同党HP)と首相の間違った憲法観を批判し、「向こうの土俵にはのらない」(毎日)と明言した。
 安倍首相が演説で、各党に改憲の具体案を提示するよう求めたことについて、与党の公明党の山口代表は、「白紙で臨む。憲法審査会の議論がどうなるかをよく見て対応を考えたい」(産経)と語り、首相ペースで改憲論議が進むことをけん制した。
 安倍首相は1月24日の衆院本会議で(各党代表質問)、9条2項を維持し、自衛隊を明記した場合、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」(日経)と明言した。
 ところが、30日の衆院予算委では、9条1、2項を残し自衛隊を明記する“安倍9条改憲案”について「2項を変えれば、書き込み方でフルスペック(全面的)の集団的自衛権の行使が可能になる。2項を残すという私の提案では、2項の制限がかかる」(毎日)と説明し、2項を残せば限定的な集団的自衛権の行使にとどまると強調。戦争法で認めている集団的自衛権の行使を憲法に明記すると言うにひとしい。重大なことを企んでおきながら、どこが「任務や権限に変更がない」と言えるのか。
 首相は、国民を言いくるめるためのごまかしの議論がお好きなようである。歴代総理大臣の中で、これほどしれっと大ウソをつく首相も珍しい。多くの国民は安倍政権下の改憲を拒否している。
■自民党 3月の党大会までに改憲案を策定
 自民党の憲法改正推進本部は1月31日、今年初めての全体会合を開き、党内の意見集約ができていない緊急事態条項の新設について議論した。政府への権限集中や私権制限は見送り、国会議員の任期延長に限定する案への一本化をはかろうしたが、賛否が割れ、意見集約を先送りした。3月25日の党大会までに改憲案を策定するため9条改憲案とともに意見集約を急ぐ。
 石破元幹事長は、政府への権限集中などを盛り込んだ2012年の党改憲草案の議論を要求。
(中)
2018年1月23日号
■改憲発議阻止へ 正念場の年
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」(憲法前文)
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 安倍首相は自民党の仕事始めで(1月5日)、1955年の「保守合同」にふれ、「占領時代に作られた憲法をはじめ、さまざまな仕組みを、安定した政治基盤の中で変えるために合同したのであり、時代に対応した国の姿、理想の形をしっかりと考え議論していくことが、私たちの歴史的な使命だ」(NHK)と強調。年頭記者会見(1月4日)から改憲への異常な執念をあらわにしてきた。「政権は今年を『勝負の年』と位置付ける」(朝日)。
 自民党の憲法改正推進本部は、昨年末にまとめた改憲4項目の「論点整理」をもとに月内にも意見集約の作業に入り、通常国会への改憲原案(条文案)の提出を目指す。
 国民の多数は改憲を望んでいないことは世論調査などでも明らかである。日本世論調査会が先月実施した世論調査によると、安倍首相の下での改憲に53%が反対し、国会論議については67%が「急ぐ必要はない」と答え、53%が9条改憲に反対している。
憲法施行71年目になる2018年は、憲法をめぐり、日本の命運を左右する年になる。立憲野党の共闘を前進させ、すでに全国で繰り広げられている「3000万人署名運動」に全力をあげ、地域・職場で草の根運動を積み上げ、改憲案の発議を阻止することが最重要課題となる。
◇            ◇
■2017年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・2日 自民党、都議選で歴史的惨敗
・7日 国連、核兵器禁止条約を圧倒的多数で採択
・11日 共謀罪法施行
・24日 辺野古新基地建設で沖縄県は国を相手に岩礁破砕の差し止め訴訟を起こす
・26日 海上自衛隊、戦争法に基づく米艦防護の共同訓練実施を発表

〈8月〉
・3日 第3次安倍内閣第3次改造内閣発足
・4日 小野寺防衛相、「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明
・8日 2017年度防衛白書発表 
〈9月〉
・5日 自民党の石破元幹事長は、9条2項を改めて自衛隊を明記するよう提起
・28日 衆院解散
 民進党は両院議員総会で、新党「希望の党」から立候補させる合流方針を了承
〈10月〉
・2日 自民党、改憲を重点項目に格上げした総選挙公約発表
 民進党の枝野代表代行、新党「立憲民主党」を結成すると表明
・10日 第48回総選挙公示
・22日 総選挙投開票
改憲勢力(自民、公明、維新の会、希望の党)が議席の8割を占める
〈11月〉
・1日 第195臨時国会開会 第4次安倍内閣発足
・7日 公明党の山口代表、自民党との改憲協議に否定的な見解を示す
・16日 自民党の憲法改正推進本部、総選挙で中断していた議論再開
・21日 安倍首相、参院本会議で自衛隊の存在を憲法に明記しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と答弁

〈12月〉
・6日 立憲、共産、自由、社民、「無所属の会」は、共謀罪法の廃止法案を衆院に共同提出
・15日 安倍首相、防衛大綱について「従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と大幅見直しを明言
・20日 自民党の憲法改正推進本部、全体会合を開き、改憲4項目の「論点整理」を承認
(中)