「新社会兵庫」 3月10日号
 本紙前号に掲載の、神戸市北区の縫製工場叶上に働く中国人女性8人のたたかい。「研修」「技能実習」の名目はともかく、働いた3年間の残業代を法律どおりに支払ってと要求しているに過ぎない▼しかし、会社は、道義も法律も無視して黙りを決め込んでいる。一人約400万円になる残業代に、回答は5万5千円のみ。これでは3年ぶりに子どもにも会えると思っても中国に帰れない▼駅での宣伝行動や研修の第1次受入機関である協同組合(豊岡市)への申し入れなどを行っているが、なかなか進捗はない。会社から返ってくるのは「最低賃金どおり払ったら会社がやっていけない」など、違法行為を恥じらうそぶりもない言葉。しかも、外国人技能研修実施機関の指針に反する事例のオンパレードだ。たとえば、賃金を振り込む預金通帳は会社管理で、本人たちには月1万円の現金だけを渡す、1年目の研修ではさせてはならない残業、等々▼この外国人研修・技能実習制度、建前と本音がはじめから乖離している。海外進出の資金力のない企業を支援するために考え出された制度だろうが、矛盾だらけだ。ただ、そのしわ寄せを実習生たちにだけ押しつけてのほっかむりは許せない。
3.23から兵庫で連鎖座り込み
鉄建公団訴訟控訴審判決を前に
 また2月16日がやってきた。JR不採用通知の日、私たちにとってどうしても忘れることのできない日だ。22年が経ち、いま国鉄闘争は重要な時期に来ている。これ以上解決を引き延ばすことは許されない。すでに1047名の被解雇者のうち51名が亡くなっているし、多くの人が病に伏している。もちろん、どんな解決でもいいとは言っていない。
 1047名の闘争団とその家族は、“解雇撤回・JR復帰”という目的に向かって闘ってきたが、多くの犠牲も払ってきた。子どもの進学・就職・結婚などごく当たり前にあるはずのことが、被解雇者であるがゆえに悩み、我慢も強いられてきた。私もそうだったが、家族が崩壊しそうになった仲間も少なくない。事実、離婚した人もいる。たいへんな苦労を強いられてきたが、「不当な解雇は許せない」という強い意思と家族や仲間の支えが今日まで私たちを支えてくれた。
 一枚岩であったはずの闘争団が、98年5月28日の東京地裁の不当判決でその団結に暗い影がさしてきた。そして、00年の「4党合意」問題で意見の対立が深まり、その後、組織を二分する事態となり、共闘関係にも大きな影を落とした。そして、鉄建公団訴訟を起こした300名に対する統制処分や生活援助金の凍結という事態で決定的な溝を作り、もはや修復不可能な状態になったかと思われた。
 そんな関係が、05年9月15日の鉄建公団訴訟の判決で再び動き出した。初めて国鉄闘争にからむ裁判で、一部とはいえ不当労働行為を認め、慰謝料の支払いも認めたのだ。もちろん、解雇は有効、慰謝料も500万円と到底納得できる内容ではなく、当然ながら控訴となったが、不当労働行為認定の意義は大きかった。このことで一筋の光明が見えてきた。そして、この判決を機に1047名の統一が言われるようになり、その後、「4者・4団体」がつくられることになった。完全修復ではなくても、闘う土台はできた。
 さらに、昨年1月23日の全動労判決でも鉄建公団訴訟判決とほぼ同様のものが出され、東京地裁の意思が労働者救済の方に向かったと思われていたが、3月13日の鉄道運輸機構訴訟(国労第2次訴訟)では大方の予想を裏切って、「時効」という超反動的な判決を下した。意見陳述、証人尋問で立証された不当労働行為の事実に目をつむった不当判決である。この判決は、「不当労働行為がなかった」とは言えなかったために事実を隠すための姑息な判断だと言わざるをえない。このため、多少の戦術変更は余儀なくされるが、前の二つの判決を基礎にして更なる上積みの内容の解決を勝ち取る闘いが私たちには課されている。
 また、昨年6月2日には「分割民営化」の国鉄内部での仕掛け人と言われた現JR東海会長である葛西敬之の証人尋問が行われたが、このことに東京高裁・南裁判長のこの裁判への意気込みを見て取れる。さらに、7月14日の控訴審期日後、南裁判長は「ソフトランディング」という言葉を使いながら話し合いによる政治解決を示唆した。それを受け、冬柴国交大臣(当時)も当事者ではないとした上で「解決のために誠心誠意努力する」と表明をした。
 しかし、安倍、福田の政権投げ出しや麻生内閣の混迷で先行きは不透明だが、先の2・16中央集会には民主、共産、社民、国民新党の4野党と与党である公明党も出席したことで政治解決の道が消えたわけではない。ただどんな内容でも受け入れていいわけではなく、解雇撤回を前提とした「雇用」「年金」「解決金」の要求は一歩も譲ることはできない。
 鉄建公団訴訟控訴審は昨年12月24日に結審し、正式に決まってはいないが判決は3月末から5月連休前だと言われている。これからの時期は、判決をただ待つのではなくあらゆる大衆闘争で政府・国交省・鉄道運輸機構などに解決を迫る必要がある。当面は判決が出るまでの大衆闘争に全力をあげることなるが、今の政治状況では政治解決が進展するかどうかは不透明であるため、判決後のことも想定しながら当面の闘いに全力をあげたい。
 兵庫では3月下旬には県下4カ所で駅頭の座り込みを予定している。多くの皆さんの御支援と参加をお願いしたい。
大串潤二(鉄建公団訴訟原告団)
『子どもの命を守る日』に
 都賀川……。堰き止めた「プール」で子どもたちは幼い頃よく泳いでいました。せせらぎの音を聞きながら川べりの遊歩道を歩いたり、桜の花の咲く河原でみんなで花見をしたこともありました。震災のときは、冷たい水で洗濯したり水汲みをしたり……。灘区に住む私たちにとって都賀川は心安らぐ、親しみのある川でした。
 ところが、その穏やかな川が一転し、恐ろしい川に豹変したのです。昨年の7月28日午後2時頃、灘区の上空に見る見る暗雲が立ち込めたかと思うと大雨が降りはじめ、それとともに川の水がまるで津波のように上流から押し寄せてきました。その水の勢いに足をすくわれた多くの人が押し流され、5人の尊い命が奪われてしまいました。ほんの一瞬のできごとでした。
 私は、議会で、都賀川事故の問題を採り上げました。神戸市の防災対策が不十分だったこと、都市型河川の構造に問題があったこと、それに対しての安全対策が不十分だったこと。しかし、神戸市は、「これまで」の検証よりも「これから」の対策に終始しました。
 あれから7カ月。都賀川は今、まるで何ごともなかったかのように穏やかさを保っています。でも、私はもう川べりの遊歩道を歩くことはできなくなりました。子どもたちの命を守ることができなかった……、遺族だけでなく多くの人が自責の念に駆られています。
 大切な家族を失うことは想像を絶する哀しみがあります。同時に、忘れられていくことの空しさや置き去りにされていくことの寂しさを感じつつ、それでも日々働き生きていかなければならない―このような遺族のつらい思いに私たちは少しでも寄り添うことができればと思いました。
 今、子どもたちが通っていた小学校の保護者や障がいをもつ子の保護者が、7月28日を『子どもの命を守る日』にしようと動き始めています。集まって話し合う、皆でチラシを作る、そのチラシをもって学校や保護者会を訪ねる、障がい者小規模作業所や学童保育所を訪ねる……、何もかもがはじめての経験ばかりです。小さな手づくりの輪が人から人へと少しずつ広がり始めています。5人の命の重さを忘れないためにも、5人が今まで精いっぱい生きてきたという「証」を残していくためにも、ぜひ実現させていきたいと思っています。
(小林るみ子)
二つのたたかいを軸に09春闘
 09春闘は、中国人実習生問題と田崎真珠のリストラ問題でスタートした。
 神戸の真珠ブランドではトップ企業の田崎真珠は、08年秋に創業者一族が退陣し、外資を投入。12月には「450人の希望退職」を募って、経営改善を行うことを新聞発表した。希望退職の条件は、「会社都合での退職金+2・5〜4・0カ月(割増退職金)」と費用(40〜55万円)は自己負担の「就職斡旋会社の紹介」だけ。
 従業員1200人以上の企業だが、労働組合がない。ユニオンが初めての労働組合になった。会社への分会結成の通知は1月13日。当日は、朝ビラで夕方開く「労働組合説明会」への参加を呼びかけ、12人が集まった。「希望退職」とは名ばかりのリストラだとわかった。「新しい田崎にあなたの名前はない」「ここの部署はなくなる。希望退職届けを書け」など、希望退職にはほど遠い、退職強要が行われていた。会社は、残す人のリストを作っていたらしい。ある従業員は希望退職に応じようとしたが、面談で「会社に残ってほしい」と言われ、希望退職に応じる意志を伝えたところ、「会社が残ってほしいと言っているのに退職するなら自己都合退職だ」と言われ、退職金や雇用保険の受給も自己都合になり、割増退職金も支給されないと説明されたそうだ。
 これまで6回朝ビラを行い、ユニオン加入を呼びかけた。ビラはよく取ってくれ、あいさつもしてくれる。従業員からのメールには「ユニオンのこと、会社で話題になっています。がんばってください」とあった。だが、新たな加入者がない。何日かは夜中に目が覚め、考えると眠れなかった。そのうち、「ユニオンががんばっても、そこで働く人が声をあげなければ、何も変わらない」と大声で叫びそうになった。しかし、冷静に考えれば、創業から50年間労働組合がなく、社会的にも労働組合の信頼度は高くないのか、加入のハードルは高いのだろうと思うことにした。
 労働組合があれば、退職条件なども交渉できたはず。退職強要も止められていたはず。労働組合がないということは、労働者を守る術がないということだとあらためて感じ、重く受け止めた。今後も労働組合の必要性を訴え、あきらめずにユニオンへの加入を呼びかけていこうと思う。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)