「新社会兵庫」 4月28日号
 「川上」の中国人実習生8人は3月24日、大阪南港から、一人3個ずつの大きなケース、中国よりは性能がよいという炊飯器や家族への土産などを積んで、上海に帰った。船が見えなくなるまで別れを惜しんでいたが、日本を去る彼女たちの胸中に何が去来していたか▼日本で、上海で働くよりはおそらく何倍ものカネを手にすることはできた。3年間工場から外に出ることもなく働きづめ、しかも深夜に及ぶ残業(その大部分は不払い)で得たものだ。しかし、それによる健康の不安と同時に人間として尊厳をもって扱われなかったことの悔しさを持ち帰ったのでは▼1月に始まった神戸ワーカーズユニオンの闘いは、これからも8人が日本に不在のまま続く。日本滞在の最後に、集会・デモ、街頭での宣伝行動、豊岡への行動などユニオン書記長を中心とした支援のなかでやっと彼女たちの明るい顔を見ることができるようになった。日本にも共に闘う労働者がいたという記憶を、彼女たちが一緒に持ち帰ってくれたことを信じたい▼一方で、われわれの周囲にこんなふうに働かされている外国人がいること、いや日本人だってそうだということを見過ごしてはならないと改めて肝に銘じねばなるまい。
「反貧困・反首切りネット」立上げへ小さな一歩
 ひょうごユニオンが呼びかけた「反貧困・反首切りネットワーク設立に向けた懇談会」が先日、開かれた。地域ユニオンや路上生活者支援組織などによる反貧困の取り組みの広がりに向けた小さな一歩を踏み出した。
 この懇談会を開催した背景と動機には、@ユニオン運動だけでは解決できない、貧困化による生活相談の増加、A「年越し派遣村」の成果や問題提起、B神戸ワーカーズユニオンの基金づくり、ひめじユニオンのミニ派遣村の取り組みなどがある。懇談会への参加呼びかけで関係者に面談したが、多重債務によるサラ金苦で駆け込む人が後を絶たない(弁護士)、貧困と犯罪は表裏の関係、ネット設立で間口を広げても最終的には生活保護制度での生活支援活動にならざるをえない(路上生活者支援組織)などという意見を聞き、ネット設立の重大さを痛感した。
 設立に向けた動機の第1は、貧困の可視化という現実にある。「貧困の可視化」は、岩波新書『反貧困』を著した湯浅誠さんが使っている言葉である。ユニオンは、労働相談を通じて「助けてください。お金がなくてご飯を食べてません。身寄りもなく親しい人もいない。どうしようもなく路頭にさまよっています」というメールや滋賀での多くのブラジル人労働者の首切りとアパート退去など、生きていけないという貧困問題にも直面している。目を背けなければ誰にでも貧困を見て感じられる社会になってきた。1980年代からの労働法制改悪による非正規雇用・派遣労働者の急増と生活の深刻化という現実である。
 その第2は、「年越し派遣村」の成果と問題提起にある。500人もの派遣切り労働者らの生命をつなぐという大きな成果だけではなく、可視化された貧困が政府や政党を動かしえた力である。反貧困ネットとユニオンの新しい共同闘争という特徴もある。この派遣村は、この成果は限定的であるとして、企業に対しては16社33兆円の内部留保、株式配当や役員報酬などを取り崩し、派遣切り回避の社会的責任、政府に対しては派遣切り労働者への自立支援と労働者派遣法の抜本改正を求める声明を全国に発信した。
 その第3は、地域ユニオンなどの貧困に対する取り組みの始まりにある。ひとつは、3月14日に開催された「兵庫たたかう仲間の集会」で神戸ワーカーズユニオンが呼びかけた「働く仲間のたすけ愛基金」への定額給付金のカンパ活動である。もうひとつは、ひめじユニオンによる「ミニ派遣村」である。市民により提供されたアパート2戸、すでに半年で突然解雇された中国人労働者が入居して職探し中である。兵庫労連などが3月20日に神戸・東遊園地で「一日派遣村」に取り組んだ。連合中央は、「派遣村」の提起を受けて3〜5月に組合員一人1千円カンパを求める「雇用と就労・自立支援のための活動」に取り組んでいる。
 先日のネットワーク設立に向けた懇談会の趣旨は、労働・雇用、社会保険、公的扶助のセイフティーネットに関係する人々による自立支援のための労働・生活相談活動の取り組みである。路上生活者支援組織からは「非正規に無関心でいた労働組合が今後は派遣切りなど貧困問題に取り組むと言われるが、何故これまで取り組めなかったのか」という厳しく重い指摘から始まった。ネットの立上げに向けては「ユニオンとしても生活保護制度活用のノウハウなど学んで行きたい」、「一日派遣村」について「生活支援ということなら、もう少し長期的で幅広い活動が必要である」、連合のカンパについて「労働者の連帯や支え合いは必要なことであるが、社会保障制度や労働法の改悪を進めた自民党や資本に責任追及が求められている」、自治体の福祉事務所については「受給者の急増に対応できていない。自治体としてケースワーカー増員も含めた積極的姿勢が求められる」などの多くの意見が出された。
 この懇談会のなかで路上生活者支援組織から言われた「目の前に困った人がいるから、どう生きていくのかを支援する」という言葉が心に深く残った。ユニオン運動も生活支援活動も、この原則は同じだ。ここにネット設立の糸口が隠されている。5月に予定している次回の懇談会では、路上生活者支援活動と生活保護制度の問題点などを中心に相互交流を深めて、ネットワーク設立に向けた創造的な活動を始める。
菊地憲之(ひょうごユニオン運営委員)
母の死に思う
 私は、空気がおいしい瀬戸内海に面した田舎で生まれ育った。父も母も兄たちも私のことを可愛がってくれた。弟たちからは、怖い姉だったらしい。今は父も母もいない。
 振り返ってみるに、両親は決して仲が良いとは思えなかった。しかし母は、入浴介護を兄に手伝ってもらっていた以外、3年間父を介護し、看取った。父94歳、母85歳。典型的な老老介護である。
 葬儀の席に着けないほど体調を崩してしまっていた。それまでは、老人大学でフォークダンス、お絵描き、お習字と、趣味に生き生きとしていた。
 しかし、父が亡くなってからは、デイケアにお世話になる。それも一気に車椅子生活になる。それでも、しばらくは、ぬり絵を楽しんだ。職員さんにほめてもらい、それが自慢だった。
 私は、お彼岸には父の墓参と母のご機嫌伺いに帰っていた。昨年の秋のお彼岸にも帰った。その時は、母は元気で「美恵子さん(兄の連れ合い)がよくしてくれて、幸せじゃあ」を連発していた。でも、義姉が居ない時は、私に愚痴ばかり言ってたのだから、日々気をつかって生きていたのが伺える。一緒にお茶しながら、「お母ちゃん、元気やねえ。お父ちゃんの年どころか、100歳まで生きるじゃろう」と言ったのを覚えている。
 ところが、具合が悪いと連絡を受けた時は信じられない状態だった。お彼岸から2カ月ほどしか経っていなかった。「食べない」「飲まない」「しゃべらない」点滴の姿。ショックだった。
 人間は生きる望みを失うと身体がそれに反応するのだろうか。自ら死を早める行為ではと思ってしまった。ショートステイのすぐあとからだった。かねてより母はそれを「地獄のようで嫌いじゃあ」と言っていたが、母のそばで過ごすよという私の思いは叶えられなかった。その時に看てやれなかったことで心が痛む。楽しかった頃のことを笑いながら心ゆくまで会話できていたら、精いっぱい生きたと満足してあの世に旅立っただろうに。入院してから2週間の出来事。母、91歳。
 人間って勝手である。遠く離れていて普段は母の面倒を看ていないのに、この時だけこんなことを思って悔やんでいる。ずーっとそばで看ていた兄夫婦の気持も知らないで。でも、そばで看病できなかった私は夜ごと泣くしかなかった。でも、母の死に顔が穏やかだったことで心を静めることとした。
 これを機に、もっともっと年を重ねたとき(生きておれば)、どう生きるか、どういう死に方をしたいのか、自分の思いを、しっかりしているうちにきちんと子どもたちに示してから死ねたらいいなあと思う今日この頃である。
(純)
“ボケる”暇がないほど多忙な行動
 熟年者ユニオンは4月28日に第10回総会を開き、結成10年目の運動方針を協議、決定する。
 今年の重要課題は、高齢者の生活と生存権を直撃する後期高齢者医療制度の廃止と敬老パスの無料化である。
 敬老パスが昨年10月に実施され「敬老パスの利用者が3割減少した」という新聞報道があったし、交通費が毎月3千円以上かかる高齢者も多い。
 2010年10月からは、敬老パスの運賃が現在の2倍になる。利用者の減少はさらに増え、交通費の負担も2倍になる。
 敬老パスの有料化は高齢者を家に閉じ込め、認知症の患者を増やす。高齢者の生活の質を引き下げるだけでなく、医療・介護の費用を増やす典型的な悪政である。
 熟年者ユニオンは、市長選挙に向けて「市長を替えて敬老パスの無料化を実現させよう」とビラ配布に取り組む方針だ。
 後期高齢者医療制度についても、現在は保険料の8割減、5割減など総選挙目当ての見直しで、後期高齢者医療制度の狙いは隠されているが、2年ごとの見直しで「高い保険料・低い医療の給付」となることは確実である。
 熟年者ユニオンは、総選挙で自民・公明の議員を減らして後期高齢者医療制度を廃止させるためにビラ配布など全力で取り組む方針を提起している。総選挙と市長選挙が重なる可能性もあり、大変な取組みになりそうである。
 このような大きな課題とあわせて、高齢者の組織には楽しい行事も欠かせない。カラオケ、マージャンなどのグループ行事とハイキング、小旅行など少なくとも毎月1回は全体で取り組む行事が必要だ。
 熟年者ユニオンは、3年前に、小泉構造改革に抗して「意地でも長生きしてやる」と総会で決定したが、長生きするための食事や健康管理の学習会が必要だという意見も出されている。
 今年もボケる暇がないほど忙しい1年になりそうだ。
米岡史之(熟年者ユニオン)