「新社会兵庫」 10月10日号
 個人的な思いの事柄で恐縮だが、ぜひ行きたいとずっと思っていながら、そう遠くでもないのに、なかなか行く機会がない町がいくつかある。その一つが広島県福山市の鞆の浦だ。いまなお江戸期の風情を色濃く残す港と街並みで有名である。最近では映画「崖の上のポニョ」の舞台として全国的に注目を浴びた▼この町の交通渋滞の解消のため浜を埋め立て架橋するという計画をめぐって、このほど胸のすくような判決が出た。埋め立て免許の差し止めを求める住民の訴訟に対し、広島地裁は、鞆の浦の歴史的景観を文化的、歴史的価値を持つ「国民の財産ともいうべき公益」などとして、住民側の請求を全面的に認めた。画期的な判決だ▼かつて、わが郷里の和歌山市の景勝地・和歌の浦の歴史的景観をめぐっても同じような訴訟があったが、住民側が敗訴し新たな車道橋が架けられた。情緒ある風情が破壊されてしまった今の風景を見ては苦々しく思っていただけに、特別な感慨がある▼趣旨は少し異なるが、思いは、米軍新基地建設のためにジュゴンの棲む海が壊されようとしている沖縄・辺野古の海に転じる。阻止闘争は続いている。鳩山新政権の基本的、本質的な姿勢を問う大きな試金石である。
政権交代=「疑似革命」的状況に見る歴史上の共通点
 鳩山政権成立直後の各閣僚の言動は、従来の政権交代時に比べると瞠目ものである。
 「CO2削減25%は貫く」(鳩山首相)、「日米核密約は解明する」(岡田外相)、「後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の廃止、生活保護世帯の母子加算復活」(長妻厚労相)、「アニメ殿堂の建設中止」(川端文科相)、「八ツ場ダム建設中止」(前原国交相)、「公益法人の原則廃止」(仙谷行政刷新担当相)、「中小企業の借入金返済猶予法の立法化」(亀井金融相)等々。中秋の名月も近いというのに、季節はずれの花火大会のようである。
 功名争いの臭いがしないわけではないが、壁を突破しようとする意気込みと高揚感は感じ取ることができる。これらの発言を私たちはおおよそ支持することができる。しかし、はたして覚悟のほどは。興奮が冷めた鳩山首相の眼に映るものは、経団連・大企業労組(連合)の陣営に翻る「CO2 25%削減反対」の旗印であろう。返済猶予法案については「資本主義の根幹をなんと心得るか」という恫喝がすでに始まっている。日米核密約を解明し白日のもとにさらすことは、核の傘を問い直し、アメリカの核戦略に対峙する構えなしには不可能である。
 民主党にとって、自らのマニフェストにもとづくものとはいいながら、壁を突き破ることは容易ではない。壁を破る力は勤労大衆の中にあるのであるが、今回民主党に大勝をもたらしたものは、いまだ力にはなっていなかった「風」であった。民主党は党の性格からみても構成からみても「風」を利用することは考えても、「風」が力になることを望んではいない。
 今の状況は歴史上しばしば見られた擬似革命を想い起こさせる。擬似である以上、革命に近い政治現象も多々見受けられる。反対に正体を見極めれば、幽霊と枯れ尾花ほどの違いもある。それとこれを見分けるものは、言動や意気込みではなく、そこに横たわる階級的力関係の状況である。
 歴史上の擬似革命には、いくつかの共通点が見られる。まずひとつの現象は、大変な大衆の不満、怒りが存在していたということである。にもかかわらず、それは「風」といわれる状態に浮遊し、社会を動かす階級的、主体的な力として組織されずさまよっている。これをベクトル化する指導勢力は決定的に不足している。民主党にはその要素はない。  第2の現象は、指導勢力を欠いた大衆の期待や怒りはしばしばツムジ風のように「不条理」に激変し、あきらめやなげやりや政治不信となり、社会の動揺を増幅するということである。民主党の「マニフェスト・マジック」は2度は通用しない。
 第3の現象は、新政権とそれをとりまく勢力の中に現れる。高揚感もおさまり、風の力も弱まり、壁の厚さも切実に感じられる(しかもそれを破りうる労働者階級の強化には消極的である)ようになると新政権内部に、とまどい、焦燥、混迷、対立、抗争などが現れる。そこを突き、とって代わるはずの旧政権勢力は腐朽、崩壊から立ち直れず、混迷からの出口は容易には見出せない。
 第4の現象は、反動的な空気の台頭である。混迷からの出口は、改憲しかありえないという叫びが声高にある。
 以上が、擬似革命といわれるものに共通する現象であるが、わが国の政治がこのような現象にからめとられるのでないかという危惧は抱いていなければならない。
 再三言うように、現れるであろう混迷からの出口は、労働者階級の強化・前進以外にはありえない。私たちは民主党の正体も限界も理解している。しかし、多くの勤労大衆が民主党政権に期待して(幻想にとらわれて)いることを考えないで、民主党政権の限界の暴露を私たちの運動の出発点とすることはできない。なぜならば、民主党政権への期待にとらわれている勤労大衆の力に基礎をおき、前進を促す以外に私たちの運動はないのである。期待を主体的な力の前進にするために、私たちは大臣諸公の高言を実現するよう求める運動を勤労大衆に呼びかけ、組織していかなければならない。勤労大衆を他力本願%Iな期待から主体的な要求運動へと導かねばならない。そうすれば大衆自身が民主党の限界を認識するであろう。
 その際、私たちにとって大切なことは、民主党政権の「政策を支持する」ことによって、自分自身を民主党の限界に縛りつける愚をおかしてはならないということである。私たちが本当に支持しなければならないものは、労働者の前進だからである。そのために必要ならば民主党政権の限界を暴露することに躊躇があってはならないことは当然である。
今村 稔
終わりよければすべてよし
 今年の夏、98歳と8カ月で姑が亡くなった。私が21歳で結婚した時、姑は62歳。36年間一緒に暮らした。結婚した頃、「家付き・カー付き・婆抜き」という言葉があったが、夫との二人暮らしであったので、同居は当然と私も思っていた。その後、嫁姑の確執は常で、夫は右往左往していた。夜にけんかをすると「こんな家、出て行くわ」とわめきながら、朝になると「どっこも行くとこあらへん、ここにおいてな」と言う始末。保育所の問題もあり、年寄りひとりおいて家を出るわけにもいかず、30数年が過ぎた。
 姑は元気な人で旅行にもよく出かけていたが、胆石手術から始まって心臓病、大腸ガン、骨折、肺炎などなど10回近く入院をしたと思うが、その都度復活≠オ周囲もびっくり。90歳も過ぎると入院の度に認知症状や妄想に落ち込む。体が思うように動かなくなり、排便も失敗を繰り返すようになると、私にすまないと嘆き、「早う死にたい」と言いながら、医者と薬とごちそうが大好きだった。
 介護の終わり頃に読んだ羽田澄子監督が書いた『終わりよければすべてよし』の本に評論家の樋口恵子さんとの対談が載っていた。「今の社会は『病み上手の死に下手社会』ではないか。戦争までの『命を捨てる教育』が戦後『命を大事にしてもいいのだ』と180度転換し、今は人生80年から1世紀時代になった」と。「死=戦争=悪と結びついていたせいか、必ず来る『死』というものを考える事を避けてきたのではないか。現在の医療は『いつか人は死ぬ』ということをもっと考えるべきではないか。今は8割の人が病院で亡くなるが母が亡くなった時、みんなは本人の顔よりモニターばかり見ていて、医者だけ母の顔を見ていた」と冗談のように書いてあった。
 この10年間は日々介護に手を取られるようになり、夜中にも何度も起こされた。「おかあさん、おかあさん」と呼び続ける日もあり、いつまでこの生活が続くのかと落ち込んだ。3年前、ショートステイで発熱し入院をした。その朝は自力でパンを食べていたのに、そのあと入れ歯はもう入れられなくなり、6カ月の入院で状況が大きく変わった。退院後、脳梗塞のためかほとんどしゃべらなくなり、寝たきりの介護度5になったが、文句の多かった時に比べると精神的には介護は楽になった。
 今後もう入院はやめようと夫と話し合ったが、医者というか現在の医療は「安らかな人生の最後を患者に与える」という視点があるのだろうかと思ってしまう事がよくあった。その後も熱を出すと、「入院しかありません」の繰り返し。病院では点滴、膀胱カテーテル、経管栄養と続く。結果的には姑は病院で亡くなったが、最後の1年間、訪問看護師の適切な指導を受け、摘便こそできなかったが、発熱時の対応、痰の吸引までやった。今後、在宅介護を望む人は在宅医療を進めるかかりつけ医師を見つけておくことが必須だと思う。「人生の終わりよければすべてよし」となるように。
(K)
高齢者福祉の改悪阻止に全力あげる
 熟年者ユニオンは結成以来、高齢者福祉の改悪に反対し、改悪を阻止できる組織力を目指して活動してきた。
 神戸市の敬老パスの有料化問題では、06年末から有料化を阻止するために、市民にも呼びかけて学習会や出前トークを開催、市内13カ所で街頭行動、11カ所で署名活動、さらに「年金者組合」にも呼びかけて市役所前で座り込みを実施した。有料化された後も、有料化に賛成した会派を明記した報告ビラを6カ所で配布した。
 後期高齢者医療制度をめぐっては、2回の学習会を市民に呼びかけて開催、制度の廃止を訴える街頭行動を15カ所、廃止を求める署名活動を17カ所で実施した。
 署名終了後も、総選挙で自民・公明を少数に追い込むために、街頭行動を18カ所で実施。選挙日程が決まった後も総選挙向けの街頭行動を7カ所で実施した。
 こうした行動の中で会員も120人に拡大できた。しかし、順風満帆ではない。「熟年者ユニオンは政治的に中立が大原則です。総選挙だから当然のようにターミナル行動?投票行動を誘導するようなビラの中身になると思いますが、どうもおかしい。ターミナル行動には反対です。8月のサンドイッチマンデモ、参加者が暑さなどで倒れた場合、ユニオンが全責任をとるとデモの案内に明記してください」と、熟年者ユニオン結成の目的や運動を否定するような意見がFAXで寄せられた。最近加入した会員からのものだが、会員の拡大とともに、あらためて熟年者ユニオン結成の目的などの理解をうながす取り組みが必要になっている。
会員間の意思疎通をもっと大切に、組織運営をもっと慎重、柔軟にしながら、さらに高齢者 福祉改悪を阻止する運動と、趣味のグループ活動など楽しい行事を充実させていきたい。
米岡史之(熟年者ユニオン)