「新社会兵庫」 12月22日号
 62年前、戦後初の連立政権、片山内閣発足時の話。社会、民主、国協、自由の4党協定がまとまった後に、吉田茂(自由)は、社会党は党内左派を切れ、と難題をもち出した。左派がいれば秘密取引ができなくなるというのだ▼西尾(社会)は「党内で左派を羽交い締めにするから大丈夫」と応じたが、吉田はノーだった。密約なしの政治などありえないというのが本音だったのであろう▼70年前の話。当時、日本はソ連を仮想敵とする同盟を、ヒトラー・ドイツと結ぶことに懸命であったが、当のドイツはソ連と秘密交渉、独ソ不可侵条約締結、ポーランド侵入へと進んだ。仰天した平沼騏一郎首相は「欧州情勢は複雑怪奇」なる迷文句を残して総辞職した▼政治史は秘密交渉や密約だらけである。国民多数の利益に立脚していれば、秘密交渉、密約は不要である。一握りのために国民多数を蹂躙しなければならないからこそ、密約、隠蔽は必至となる▼今回の日米密約の露顕は、国民が政治の主人公として力を強め、民主政治を求める一歩としなければならない。核持込を認めれば密約は不必要となるという開き直りはどんなことがあっても許してはならない。密約政治、国民欺瞞の政治こそ徹底的に追及されねばならない。
「行きはよいよい、帰りは恐い」
嵐の中の関西3空港 − 神戸空港は?
改めて問われる国の空港行政
 日本航空の経営問題は、ひとり企業の問題を超えて、わが国全体の空港問題の深刻さを改めて浮かび上がらせた。そもそも、この狭い国土に97もの空港が乱立すること自体、一驚された方も少なくないだろう。2000年以降、開港もしくは滑走路を拡張した全国30空港のうち、着工前の需要予測を達成したのは、広島、岡山、山口宇部、天草の4空港に過ぎない(朝日新聞11月22日付)。来年3月開港予定の茨城空港に至っては、国内便の就航ゼロである。楽観的な需要予測に踊らされ、陸海空を含めた総合交通体系のあり方や、自治体の設置計画の厳しい審査を怠ってきたのではないだろうか。この国に航空行政はあったのだろうか。空港建設は何とかできても、バラ色の未来ばかりではないことは、だれしも分かることで、まさに、「行きはよいよい、帰りは恐い」である。

嵐の中の関西3空港
 空港の需要等は、社会経済情勢の変動に左右されやすく、現下のわが国の極めて流動的な状況から見て、予断を許さない要素を多く抱えている。今後なお長期的監視と検証とが欠かせないことを、私たちは神戸空港開港以前から指摘してきた。
 さて、間もなく神戸空港開港4年を迎えようとしている。利用客数が当初の需要予測の319万人を3年連続で下回る現状に加えて、利用客の4割を占める日航が撤退すれば、利用客の激減は必至である。さらに、このところ、関西3空港のあり方をめぐる議論が沸騰してきた。橋下大阪府知事の発言に振り回され過ぎの感があるが、空港問題が各自治体の死活につながりかねないとの危機意識からだろう。神戸空港の活性化が言われるが、徹底した関西3空港論議なくして、神戸空港の活性化論も成り立たないことは自明の理である。
 そもそも、神戸空港基本計画が策定され、大阪(伊丹)空港の存続が決定された1990年時点で、運輸省(当時)を含む広範囲な関係者間で、3空港のあり方(必要性、需要、採算性、位置付け、連係、メリット・デメリット等)について徹底した議論が怠られてきたところに、今日の迷走の遠因があったと考えるのは誤りだろうか。交通政策審議会航空分科会答申(02年12月)において、3空港の役割分担について、大阪―国内基幹空港、関空―国際空港、神戸―地方空港という曖昧な位置付けにとどまっている。特に3空港の相互関連についての広域的な、真剣な議論を欠いたところに、致命的な欠陥があったといわざるを得ない。大阪空港の存続決定および神戸空港の計画段階で、3空港問題についてどんな検討・議論がなされたか、現時点でいま一度検証・総括しておくことは無駄ではあるまい。
 折しも、11月16日、政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で、3空港の役割分担等が不明確な現状では、関空への補給金を凍結とのことが報じられ、関係者に衝撃が走った。12月中に結論を出すとされている関西3空港懇談会で、どの程度まで中身のある議論がされるのか疑問だが、関西3空港のあり方をめぐる徹底論議は今や焦眉の急である。3空港を一体的に運用する「一元管理案」などの声も出ているが、中身が問題だ。出席者が従来と同じく各空港の利益代弁者のままなら、進展はないだろう。

神戸空港の財政計画破綻
 関西経済同友会の山中諄(まこと)代表幹事が、個人的な意見と断りながら、「一元管理案は抜本的な解決にはならない」として、「神戸空港廃止」を視野に入れた議論を進めるべきだと述べたことが報道されている(読売新聞10月14日付)。事態は神戸市あたりが予想している以上に切迫していることを認識し直す必要があろう。
 3空港をめぐる議論が沸騰する一方、神戸空港の財政計画の修正を10月29日、各紙が報じたことが目を引いた。空港島造成のための借金(1982億円)について、来年度に返済期限が来る650億円のうち、395億円の償還が困難になったため、新たに市債を発行し、返済を最長で20年先送りする方針とのこと。返済を先送りすれば、金利負担は当然増え、新しい負担がのしかかる(残額は他の造成事業からやりくり)。
 当初の財政計画では、空港島の土地売却収入によって賄う予定が、全体の4%弱が売れただけ(08年度末)。市側は「価値が高い土地で、必ず売れる」と強気の姿勢を崩していないが、借金を返せなくなったため、さらに借金を重ねるという悪循環に陥ってしまっている。これはもう当初の財政計画が破綻してしまっていることを意味している。「市民の税金は使わない」と見栄を切ったが、このやりくりはいつまで続くのだろうか?
 神戸空港問題は決着済みではない。事と次第では、私たち市民の生命線にもかかわる全市民的課題だ。
中田作成(新しい神戸を作る市民の会・元世話人)
八方塞がりの状態でも
 36歳で結婚をして、38歳で双子を出産した。若い時に好きな事をして、「結婚」「出産」、おまけに一男一女の双子と、順風満帆とも言える状況であったが、現実はなかなかそううまくはいかなかった。
 高齢出産は無事クリアーしたものの、年がいってからの双子の子育ては、毎日ただただ大変だった。保育所入所、小学校入学など、イベントがあるたびに、全てが初めてで、パニックに近い状況でこなしてきた。それも双子ゆえ、2倍のパニックである。もちろん、病気の時も同じである。2人同時に病気になることはまずなく、必ず時間差で熱を出す。こちらは、時間差で休みを取らざるを得なくなる。年々労働強化が進む職場の中で、突発的な休みを取る事は周囲には大変迷惑である。外出は出来るだけ土曜日にして、日曜日は体を休める。夜遅くまで子供を連れ歩かない、などと出来るだけ病気にならないように気を使いながら、生活リズムをつくるものの、子供の病気は大人の都合には合わせてはくれない。「咳が出だした」「熱が出た」となると、心配もさることながら、つい仕事の事を考えてしまう。夫と私のどちらが休むかでの攻防があり、家の中は凍り付いた空気になる。そんな空気を敏感に察知していたのか、この間、息子が熱を出し、私が顔を曇らしたのを見て、自分もしんどいであろうに、「おかあさん、ごめんね」と言われて、思わず涙ぐんでしまった。こんな小さな子に気を使わせてしまう自分が情けなかったのと同時に、自分が置かれている状況が情けなかった。
 そんな子供たちも小学校の2年生になり、親も子供も学校生活に慣れ、ようやく少し子育てに余裕がでてきた。しかし、そろそろ子育てから解放されて、自分のやりたい事ができるかな?と思っていた矢先に、今度は実家に問題が浮上した。私の母は4年ほど前から認知症になり、妹が実家に帰り介護をしていた。妹も自身が鬱病を患っており、何とかこの間頑張ってくれていた。しかし、妹にも無理が来て、母のいる家には帰れずに友達の家に引きこもり状態になってしまった。子育てから解放されたと思ったら今度は介護の問題が降りかかってきた。おまけに、同じ時期に夫が度重なる仕事の心労から、精神疾患になってしまった。八方ふさがりの状態である。この社会の歪みが、我が家に集中したといった感じである。
 妊娠するまでは、「労働者が安心して働ける職場づくり」、そして「安心して暮らせる社会づくり」を目指して、学習会や講演会などに積極的に参加して頑張ってきた。しかし、私たちの目指す社会はまだまだ遠い。が、悲惨な我が家の状況の中でも元気で騒ぐ子供達のためにも、あきらめるわけにはいかないなと思っている。
(Y・S)
ユニオンと労働者の接近
 最近、相談が増えている。解雇や雇い止めが多くなっている。
 46歳の男性は、C病院の調理スタッフとして派遣されていたが、9月18日、契約期間中に中途解約されたと相談に来た。派遣会社の求人募集は契約期間1年になっていた。採用前の会社説明でも契約期間は1年という説明文書を交付したが、働きはじめて半月ほどで「契約期間は3カ月」と契約書へのサインを求められた。相談者が契約書について説明を求めたところ派遣会社は「契約書は形式的。1年は保証」と言い、相談者はサインした。ところが、9月18日に解雇を通告された。理由は、作業内容の細かいところや人間関係とのこと。
 ユニオンは、会社に対して7カ月分の賃金補償と解雇理由の明示を求めた。会社は「契約書は9月末まで。契約期間は3カ月更新だ」と主張。職安での求人募集、会社から交付された2枚の説明書にも「1年契約」であることが明記されている。
 労働者の立場は弱い。働きはじめたときに1年と言われても、3カ月の契約書を提示されれば、サインしてしまう。サインを断れば働けなくなり、サインすれば3カ月で雇い止めにされる可能性がある。いずれにしても「切られる」可能性があるが、サインすることによって3カ月は働け、トラブルにならなければ契約更新してもらえると思ってしまう。契約書を提示されたときにユニオンに相談すれば、交渉することもでき、3カ月の契約書にサインすることはなかったかもしれない。そのことがとても悔しい。
 11月17日に開いた「公開講座」には16人が参加した。そのうちの6人はユニオン未加入の一般市民だった。1年に2回、3年間開いてきたが、未加入者がこれほど多く参加した公開講座はなかった。相談や公開講座の参加が増えている実態から、ユニオンと労働者が近づいているように一瞬感じた。前述のように派遣切りされる前にユニオンに加入を呼びかけ、労働者にもっと近づけるよう努力していきたい。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)