- 『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』中島らも・著
保久良山(神戸市東灘区本山北町)
- 「山頂から街をながめていると全ては事もなく平和そうで、さきゆきの不安にさいなまれている僕とは無縁のいとなみを続けているように見えた」。中島にとって保久良山は、青春時代の思い出がたくさん詰まっている場所である。
この本は、某新聞のサービス紙(播但版)に連載されたエッセー集である。阪神間から姫路、篠山などを舞台に、踏んだり踏まれたりしながら、「中島らも的」な人間がいかにして形成されたかを綴っている。コミカルに、そしてシニカルに、青春の断面が描かれている。なかでも震災で失われた神戸の風景が書き込まれていて懐かしい気分になる。その一方でハッとするような文章もある。「生きてアル中になって、醜く老いていって、それでも『まんざらでもない』瞬間を額に入れてときに眺めたりして、そうやって生きていればよかったのに、と思う」。浪人時代に自殺した仲間に送った言葉。きっと泣きながら書いたに違いない。
その中島は高校時代から酒と縁が切れなかった。小説、随筆、劇団、音楽と多才な人だったが、そうした作品の多くは、年とともに過度の飲酒のなかで生みだされた。
阪急岡本から北へ20分。
(浩) 2008年10月28日号
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