一般的意見第5(1994)
障害をもった人(E/1995/22, Annex IV)



1.障害をもった人の人権に関しての経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の中心的重要性は、国際社会によってしばしば強調されてきた。かくして、障害者に関する世界行動計画及び国際連合障害者の10年の実施についての事務総長による1992年の評価は、「障害は経済的及び社会的要因と密接に結び付いて」おり、また「世界の多くの部分における生活条件はあまりに窮乏しているため、食料、水、住居、健康保護及び教育という基本的ニ−ズをすべての者に与えることが、国家計画の核心にならなければならない」と結論している。相対的に高い生活水準を有する国でも、障害をもった人は、規約で認められた経済的、社会的及び文化的権利の全範囲を享受する機会を否定されていることが非常にしばしばである。

2.経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会並びにこれに先立つ作業部会は、総会及び人権委員会の双方から、障害をもった人が関連権利を完全に享受することを確保する規約締約国の義務遵守を監視することを明示的に要求されている。しかし、今日までの委員会の経験は、締約国は報告の中でこの問題に非常にわずかの注意しか払っていないことを示している。このことは、「ほとんどの政府はなお」、障害をもった人の「状況を効果的に改善するような調和のとれた決定的措置を欠いている」という事務総長の結論と一致するように思われる。従って、規約に含まれた義務との関連で、障害をもった人の問題が生ずるいくつかのかたちをふり返り及び強調することが適当である。

3.「障害」の語の国際的に受け入れられた定義は今だ存在しない。しかし、ここでの目的上は、1993年の基準規則でとられている方法に従うことで十分である。規則は次のように述べている。「『障害』の語は、いずれの人民にも起こる多数の異なった機能的な制約を総括するものである。 … 人は、身体的、知能的もしくは知覚的な損傷、医療条件又は精神病によって、障害を持ちうる。そのような損傷、条件又は疾病は、恒常性のものでも一過性のものでありうる」。

4.基準規則でとられている方法に従い、この一般的意見は、「障害者(disabled persons)」という古い語よりも、「障害をもった人(persons with disabilities)」という語を用いる。「障害者」の語は、人として機能する個人の能力が障害を受けているということを含意するものと誤解されうる、ということが示唆されている。

5.規約は、障害をもった人に明示的に言及していない。しかし、世界人権宣言は、すべての人間は尊厳及び権利において自由かつ平等に生まれることを認めまた、規約の規定は社会のすべての構成員に完全に適用されるのであるから、障害をもった人は明らかに、規約で認められた権利の全範囲に対する権利を有している。加えて、特別の扱いが必要な限りにおいて、締約国が、その利用可能な資源を最大限に用いて、規約に定められた権利の享受という観点から、それらの人々がその障害から生ずる不利益を克服することができるよう適当な措置を取ることが要求される。さらに、「規定された」権利が一定の具体的に述べられた事由又は「その他の地位」による「いかなる差別もなしに行使される」という規約第2条2項に含まれた要求は、明らかに、障害に基づく差別にも適用される。

6.規約の中に明示的な障害関係の規定がないことは、黙示的なもののみによるというよりは、4半世紀以上前の規約の起草時、この問題に明示的に言及する重要性の認識を欠いていたことによるといえる。しかし、より最近の国際人権文書は、この問題に具体的に言及している。それらには、子供の権利に関する条約(第23条)並びに、経済的、社会的及び文化的権利の分野における米州人権条約追加議定書(第18条)が含まれる。このように、現在は、障害を持つ人の人権が、特別に意図されたものに加え一般的な法、政策及び計画によって保護され促進されなければならないということは、非常に広く認められている。

7.このアプロ−チに従い、国際社会は、以下の文書において、障害をもった人に対し人権の全範囲を確保するという取り組みを確認している。(a)障害者に関する世界活動計画。これは、「障害の防止、リハビリテ−ション並びに、社会生活及び発展への[障害をもった人の]『完全な参加』及び『平等』という目標の実現のための効果的な措置」の促進を目的とした政策的枠組みを提供するものである。(b)1990年に採択された、障害者に関する国内調整委員会又は同様の機関の設立及び発展のためのガイドライン。(c)1991年に採択された、精神障害者の保護及び精神治療の改善のための原則。(d)1993年に採択された、障害をもった人のための機会の平等に関する基準規則(以下、「基準規則」と呼ぶ)。その目的は、障害を持ったすべての人が「他の人と同じ権利及び義務を行使できる」ことを確保することである。基準規則が主に重要性を持ち、規約上の締約国の関連義務をより正確に認定するにあたって特に有用な参照ガイドとなるものである。


I.締約国の一般的義務


8.国際連合は、今日世界に5億以上の障害をもった人がいると推計している。そのうち80パ−セントは、発展途上国の農村地域に居住している。総計の70パ−セントは、その必要とするサ−ビスに対してのアクセスが限られているか又はアクセスを持たないと推計されている。このように、障害をもった人の状況を改善する課題は、規約の各締約国にとって直接に関連することである。このグル−プの経済的、社会的及び文化的権利の完全な実現の促進のために選択される手段は国によって不可避的に相当に異なるであろうが、大きな政策及び計画の努力が必要とされない国はない。

9.利用可能な資源を最大限に用いて関連権利の漸進的実現を促進する規約締約国の義務は、明らかに、単に、障害をもった人に否定的な影響を持ちうる措置を控えるというよりはるかに多くのことを政府に要求している。そのような弱く不利な立場にある人の場合の義務は、構造的な不利を減らすため積極的な措置を取ること並びに、障害を持ったすべての人にとっての社会での完全な参加及び平等という目的を実現するため、障害をもった人に適当な優先的処遇を与えることである。このことはほとんど常に、この目的のために追加的な資源が利用できるようになされる必要があること及び、広い範囲の特別に作られた措置が必要になることを意味する。

10.事務総長の報告によれば、先進国及び途上国双方における過去10年間の展開は、障害をもった人の視点からは特に不利なものであった。
「 … 低い成長率、高失業、公的支出の減少、現在の構造調整計画及び私有化に特徴づけられる現在の経済的及び社会的悪化は、計画及びサ−ビスに悪影響を与えた。 … もし現在の否定的な傾向が続けば、[障害をもった人が]ますます社会の周辺へ押しやられ、一時的な支援に依存するようになる危険がある」。

委員会が前に述べたように(一般的意見第3(第5会期、1990年)、para.12)、社会の中の弱い構成員を保護する締約国の義務は、深刻な資源の制約時にはより大きな重要性を持つのであって、その逆ではない。

11.市場主義経済を取る国が世界中に増加していることに鑑み、その文脈で、締約国の義務の一定の側面を強調するのが適当である。一つは、公的領域だけでなく私的領域も、適当な限度内で、障害をもった人の公平な処遇を確保するための規制に服することを確保する必要性である。公的サ−ビスの提供のための制度がますます私有化され、かつてない程度にまで自由市場に依拠されている状況において、私的雇用者、財及びサ−ビスの私的供給者、並びにその他の非公的主体が、障害をもった人に関して無差別及び平等の規範に服するべきことが不可欠である。そのような保護が公的領域の外に及ばない状況では、障害をもった人が共同体の活動の主流に参加し及び社会の活動的な構成員としての十分な可能性を理解する能力は重大にまたしばしば恣意的に制約を受ける。このことは、立法措置が私的領域における差別を撤廃するために常に最も効果的な手段だということではない。従って例えば、基準規則は、国家が「障害をもった人、それらの人の権利、ニ−ズ、可能性及び貢献についての社会の中での意識を高めるために行動を取る」必要性を特に強調している。

12.政府の介入なしには、自由市場は常に、個人的に又はグル−プとして、障害をもった人にとって不十分な結果を生むことがあろうが、そのような状況において介入し、市場の力によって産み出された結果を緩和し、補完し、代償し又は覆すため適当な措置を取ることは政府の義務である。同様に、障害をもった人をさまざまな方法で援助するため政府が私的なボランティア団体に頼ることは適当であるが、そのような取り決めは決して、規約上の義務の完全な履行を確保する政府の義務を免ずるものではない。障害者に関する世界行動計画が述べているように、「損傷につながる条件を是正し及び障害の結果に対処する最終的な責任は政府にある」。


II.実施手段


13.障害をもった人に対し規約上の義務を履行しようとするにあたって締約国によって用いられるべき手段は、本質的に、他の義務に関して利用できるものと同じである(一般的意見第1(第3会期、1989年)を見よ)。それらには、定期的な監視を通して、国内に存在する問題の性格及び範囲を確かめる必要性、そのようにして認定された要求に対応するための、適当に作られた政策及び計画を採択する必要性、必要な場合には立法を行い及び、既存のいかなる差別的な法をもなくす必要性、並びに、適当な予算手当を行い又は、必要な場合には、国際協力及び援助を求める必要性を含む。後者の点で、規約第22・23条に従った国際協力は、いくつかの途上国がその規約上の義務を履行できるようにするにあたって特に重要な要素となるであろう。

14.加えて、この分野での政策決定及び計画実施は関係代表者のグル−プ及び個人との緊密な協議及び関与を基礎として行われるべきだということは、国際社会によって常に認められてきた。この理由から、基準規則は、障害問題に対する全国的な焦点として役立つよう、国内調整委員会又は同様の機関の設立を容易にするため可能なすべてのことがなされるよう勧告している。そうするにあたって政府は、障害に関する国内調整委員会又は同様の機関の設立及び発展のための1990年ガイドラインを考慮に入れるべきである。


III.障害に基づく差別を撤廃する義務


15.障害をもった人に対する法律上及び事実上の差別はともに長い歴史を有しており、さまざまな形態を取る。それらは、教育を受ける機会の否定のような非常に不快な差別から、身体的及び社会的障壁を課すことにより達成される分離及び孤立化のような、より「微妙な」形態の差別までにわたる。規約の目的上、「障害に基づく差別」とは、経済的、社会的及び文化的権利の承認、享受又は行使を無効にし又は害する効果を有する、障害に基づくあらゆる区別、排除、制限、特恵又は合理的な便宜の否定を含むと定義できる。排除、区別又は分離によるものに加え、無視、無知、偏見及び誤った推測によっても、障害をもった人は非常にしばしば、障害をもたない人と平等の基礎のもとにその経済的、社会的及び文化的権利を行使することを妨げられている。障害に基づく差別の効果は、教育、雇用、住居、輸送、文化生活並びに、公的場所及びサ−ビスへのアクセスの分野では特に深刻である。

16.過去10年間の、立法の点でのいくらかの進歩にもかかわらず、障害をもった人の法的状況は不安定なままである。過去及び現在の差別を是正するため、並びに将来の差別を抑止するために、障害に関する包括的な反差別立法がすべての締約国において不可欠であると思われる。そのような立法は、障害をもった人に、可能かつ適当な限り司法的救済を与えるのみならず、障害をもった人が統合された、自己決定的な、独立した生活を送ることを可能にする社会政策計画をも定めるべきである。

17.反差別措置は、障害をもった人ともたない人との平等の権利の原則に基づくべきであり、これは、障害者に関する世界行動計画によれば、「それぞれの、すべての個人のニ−ズが同等の重要性を持つこと、それらのニ−ズが社会の計画作りの基礎とならねばならないこと、並びに、すべての資源が、すべての個人に参加のための平等な機会を確保するような方法で用いられなければならないことを含意する。障害政策は、すべての共同体サ−ビスに対する[障害をもった人の]アクセスを確保するべきである」。

18.既存の差別を是正し障害をもった人に公平な機会を設けるために適当な措置を取ることが必要なのであるから、そのような措置は、平等の原則に基づきかつその目的を達成するために必要な程度でのみ用いられる限りにおいて、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第2条1項の意味での差別と考えられるべきではない。


IV.規約の具体的規定
A.第3条 − 男女同等の権利


19.障害をもった人はときに、性別のない人間として扱われることがある。結果として、障害を持った女性の受ける二重の差別はしばしば看過される。国際社会は彼女らの状況に対し置かれるべき特別の重点をしばしば要求しているにもかかわらず、障害者の10年の間、非常にわずかの努力しかなされてこなかった。障害を持った女性の軽視は、世界行動計画の実施に関する事務総長の報告の中で何回かふれられている。従って委員会は、締約国に対し、経済的、社会的及び文化的権利関連の計画の実施に将来大きな優先順位を与えつつ、障害を持った女性の状況に注意を向けることを強く要請する。


B.第6−8条:労働関係の権利


20.雇用の分野は、障害に基づく差別が顕著かつ根強い分野である。ほとんどの国で、障害をもった人の失業率は、障害をもたない人の失業率の2倍から3倍の高さである。障害をもった人が雇用される場合、彼らは大抵、社会的及び法的安全のあまりない低賃金の仕事に携わっており、また、労働市場の主流から分離されていることが多い。障害をもった人の通常の労働市場への統合は、国家によって積極的に支援されるべきである。

21.「すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利」(第6条1項)は、障害をもった人に開かれている真の機会が、基準以下の条件のもとでのいわゆる「保護」施設で労働することでしかない場合には、実現されていない。一定のカテゴリ−の障害をもった人が実質的に一定の職業又は一定の物品の生産に限定される制度は、この権利に違反しうる。同様に、精神障害をもった人の保護及び精神治療の改善のための原則第13(3)に照らして、強制労働にあたる施設での「治療」も、規約に合致しない。この点で、市民的及び政治的権利に関する国際規約に含まれた強制労働の禁止も、関連をもちうる。

22.基準規則によれば、障害をもった人は、農村又は都市部のいずれにいるにせよ、労働市場での生産的かつ利益のある雇用に対する平等の機会を持たなければならない。このことが起こるためには、統合一般への、及び特に雇用への人為的な障害が除去されることが特に重要である。国際労働機関が注記しているように、障害をもった人が雇用されえない理由として引かれるのは、輸送、住居及び労働場所のような分野で社会が作った身体的障壁であることが非常に多い。例えば、労働場所が、車椅子がアクセス不可能なかたちで設計され建設されている限り、雇用者は、車椅子使用者を雇用しないことを「正当化」できるであろう。政府はまた、障害のある労働者のニ−ズに対し合理的な便宜をはかる弾力的かつ代替的な労働制度を促進及び規律する政策を発展させるべきである。

23.同様に、政府が障害をもった人にアクセス可能な交通手段を確保しないことは、これらの人が、教育及び職業訓練を利用しつつ、ふさわしく統合された仕事を見つけ並びに、あらゆる種類の施設に通勤する機会を大きく減じている。実際、適当かつ、必要であれば特別に作られた交通手段へのアクセスを与えることは、障害をもった人にとって、規約で認められた実質的にすべての権利の実現に決定的なものである。

24.規約第6条2項のもとで要求される「技術及び職業の指導及び訓練に関する計画」は、障害を持ったすべての人のニ−ズを反映し、統合された環境で行われかつ、障害をもった人の代表の十分な関与を伴って計画及び実施されるべきである。

25.「公正かつ良好な労働条件」(第7条)は、保護施設又は開放労働市場のいずれで働くにせよ、障害を持ったすべての労働者に適用される。障害のある労働者は、その労働が障害のない労働者と同等であるならば、賃金又はその他の条件に関して差別を受けてはならない。締約国は、障害が、低基準の労働保護の設定又は最低賃金以下の支払の釈明として用いられないことを確保する責任を有する。

26.労働組合関係の権利(第8条)は、特別の労働施設又は開放労働市場のいずれで働くかにかかわらず、障害を持った労働者に等しく適用される。加えて、第8条は、結社の自由に対する権利のような他の権利と合わせて読めば、障害をもった人が自らの組織を結成する権利の重要性を強調するのに資する。これらの組織がそれらの人の「経済的及び社会的利益の増進及び保護」(第8条1項(a))に実効的であるためには、これらの組織は、それに影響するすべての事項に関連して政府機関及びその他から定期的に意見を求められるべきである。また、その活動能力を確保するため、財政的及びその他の支援を受けることも必要であろう。

27.国際労働機関は、特に、障害をもった人の職業的リハビリテ−ション及び雇用に関する第159号条約(1983年)を含め、障害をもった人の労働関係の権利に関連して、有意義かつ包括的な文書を発展させてきている。委員会は規約締約国に、この条約の批准を検討するよう奨励する。


C.第9条 − 社会保障


28.社会保障及び収入保障体制は、障害をもった人にとって特別の重要性を持つ。基準規則に述べられているように、「国家は、障害又は障害関係の要素によって一時的に収入を失いもしくはその減少を受け又は雇用機会を否定された、障害をもった人に対し、十分な収入援助を与えることを確保するべきである」。そのような援助は、援助に対する特別のニ−ズ及び、障害に結びつけられることの多いその他の支出を反映するべきである。加えて、可能な限り、与えられる援助はまた、障害をもった人の介護を行う(圧倒的に女性の)人をもカバ−するべきである。障害をもった人の家族を含め、これらの人は、その援助役割のために、緊急の財政的支援を必要としていることが多い。

29.他の理由で必要とされない限り、障害をもった人の施設への収容は、これらの人の社会保障及び収入支援の十分な代替物とはみなされえない。


D.第10条 − 家族並びに母親及び子供の保護


30.障害をもった人の場合、「保護及び援助」が家族に与えられるべきであるという規約の要求は、これらの人がそう望む時に家族と暮らすことができるようにするため、あらゆる可能なことがなされるべきだということを意味する。第10条はまた、国際人権法の一般原則に従い、障害をもった人が婚姻し家庭を持つ権利をも含意する。これらの権利は、特に精神障害をもった人の場合、無視又は否定されていることが多い。このこと及びその他の文脈において、「家族」の語は、広くかつ適当な現地の用法に従って解釈されるべきである。締約国は、法並びに社会政策及び慣行がこれらの権利の実現を妨げないことを確保するべきである。障害をもった人は、その家庭内での権利及び義務を充足するため、必要なカウンセリング・サ−ビスへのアクセスを有するべきである。

31.障害を持った女性はまた、母性及び妊娠に関して、保護及び援助への権利を有するべきである。基準規則が述べるように、「障害をもった人は、その性的関心を表現し、性的関係を持ち及び親たることを経験する機会を否定されてはならない」。当該ニ−ズ及び願望は、認められるべきであり、娯楽及び出産双方の文脈で注意が向けられるべきである。これらの権利は通常、障害を持った世界中の男性及び女性双方に否定されている。説明を受けたうえでの事前の同意なしの、障害を持った女性の不妊化及び中絶の実行はともに、第10条2項の重大な違反である。

32.障害を持った子供は、搾取、虐待及び軽視を特に受けやすく、(子供の権利に関する条約の相応規定により強化された)規約第10条3項に従い、特別の保護を受ける権利を有する。


E.第11条 − 十分な生活水準に対する権利


33.障害をもった人が十分な食料、アクセス可能な住居及びその他の基本的な物質的ニ−ズに対するアクセスを有することを確保する必要性に加えて、「障害をもった人が、その日常生活において独立度を高め及びその権利を行使することを支援するため」利用できる「援助措置を含む支援サ−ビスを確保することも必要である。十分な衣類に対する権利はまた、特別の衣類ニ−ズを有する障害者に関しては、彼らが社会で十分かつ実効的に活動できるよう、特別の重要性を持つ。可能な場合には、この関連で、適当な個人的援助も与えられるべきである。そのような援助は、関係個人の人権を十分に尊重する方法及び精神で行われるべきである。同様に、委員会がすでに一般的意見第4(第6会期、1991年)で注記したように、十分な住居に対する権利は、アクセス可能な住居に対する障害をもった人の権利を含む。


F.第12条 − 身体的及び精神的健康に対する権利


34.基準規則によれば、「国家は、障害をもった人特に幼児及び子供が、社会の他の構成員と同じ制度内で、同じレベルの医療ケアを与えられることを確保するべきである」。身体的及び精神的健康に対する権利はまた、障害をもった人が独立できるようにし、それ以上の障害を防止し及びその社会統合を支援する、整形外科措置を含む医療及び社会サ−ビスへのアクセスを有しかつそれらから利益を受ける権利をも含意する。同様に、それらの者は、「独立及び活動の最適なレベルを達成し及び維持」できるようなリハビリテ−ション・サ−ビスを与えられるべきである。それらのサ−ビスはすべて、関係者がその権利及び尊厳を十分に維持できるような方法で与えられるべきである。


G.第13・14条 − 教育に対する権利


35.今日、多くの国における学校計画は、障害をもった人が一般教育体制の中で最良の教育を受けられるということを認めている。かくして、基準規則は、「国家は、統合された環境における、子供、青年及び成人のための平等な初等、中等及び高等教育の機会の原則を認めるべきである」と規定する。そのようなアプロ−チを実施するため、国家は、障害を持った子供を通常の学校で教育するよう教師が訓練を受け並びに、障害をもった人を障害のない仲間と同じ教育レベルに引き上げるために必要な設備及び支援が利用できることを確保するべきである。例えば、聾の子供の場合、子供がアクセスを有するべき、またその重要性が社会環境全体の中で認められるべき別個の言語として、手話が認められるべきである。


H.第15条 − 文化的生活に参加し及び科学的進歩の利益を享受する権利


36.基準規則は、「国家は、障害をもった人が、彼ら自身のためのみならず、都市又は農村部のいずれにいるにせよ、共同体を豊かにするためにも、その創造的、芸術的及び知能的能力を生かす機会を有することを確保するべきである。 … 国家が、文化パフォ−マンス及びサ−ビスの場所のアクセス可能性及び利用可能性を促進するべきである。 … 」と規定する。同様のことは、娯楽、スポ−ツ及び観光の場所にも当てはまる。

37.障害をもった人にとっての、文化的及び娯楽生活への十分な参加の権利はさらに、コミュニケ−ションの障壁が最大限に撤廃されることを必要とする。この点で有用な措置には、「音の出る本の使用、精神障害をもった人のために簡単な言語、明瞭な様式及び色で書かれた書類、[並びに]聾者のための劇」を含みうる。

38.障害をもった人の文化的生活への参加を容易にするため、政府は、障害について一般大衆に情報を与え及び教育するべきである。特に、例えば、てんかんを精神的な憑きものの一種とみなしたり、障害を持った子供を家族にもたらされた罰の一種とみなしたりするような、障害をもった人への偏見又は迷信を一掃するため、措置が取られなければならない。同様に、一般大衆は、障害をもった人が他の人と同じくレストラン、ホテル、娯楽センタ−及び文化的施設を利用する権利を有しているということを受け入れるよう教育されるべきである。


‐訳:申 惠手(青山学院大学法学部助教授)‐


脚注を含む全文は、「『経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会』の一般的意見(一)」青山法学論集第38巻1号(1996年)を参照して下さい。

‐無断転用を禁ず‐


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