一般的意見 第6 (1995)
高齢者の経済的、社会的及び文化的権利(E/1996/22, Annex IV)




‐1‐ 序 


   1.世界の人口は、着実かつ、非常に劇的な速さで高齢化している。60歳以上の人々の総数は、1950年の2億人から、1982年には4億人に増加したが、2001年には6億人に、そして2025年までには12億人に達すると予測されており、その時にはその70パーセント以上が、今日の途上国にいることになる。80歳以上の人々の数は、さらに劇的に増加しまた増加し続けており、1950年の1300万人から今日の5千万人以上へ、そして2025年には1億3700万人に増加すると予測されている。これは、 60歳以上のグループについて6倍の増加率、全人口については3倍をわずかに超える率であるのに比べると、世界で最も急速に増加しつつある人口グループである。

2.これらの数字は、静かな革命を表すものであるが、広範囲かつ予測できない結果をもたらし、現在、世界的なレベル及び国内レベル双方で社会の社会・経済構造に影響を与えており、また将来はさらに大きな影響を与えると思われるものである。

3.規約の締約国のほとんど、とりわけ産業国は、特に社会保障に関して、その社会・経済政策を人口の高齢化に対応させる任務に直面している。途上国においては、社会保障による保護の欠如ないし不足が、人口の若年層の移民及び、その結果としての、高齢者の主な支えという家族の伝統的役割の弱まりによって悪化している。


‐2‐ 高齢者に関連して国際的に支持されている政策


4.1982年に、高齢化に関する世界会議は、「高齢化に関する国際行動計画」を採択した。この重要な文書は、総会によって支持されたが、国際人権規約で宣言された権利の文脈において高齢者の権利を保護するために加盟国が取るべき措置を詳細に述べている点で非常に有用なガイドである。これは62の勧告を含み、その多くは、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に直接関連するものである。

5.1991年に、総会は「高齢者のための国連原則」を採択したが、これも、そのプログラム的性格ゆえに、ここでの文脈において重要な文書となる。この原則は、規約で認められた権利に密接に関連する5つの部に分かれている。「独立」と題する部は、十分な食料、水、住居、衣服及び健康ケアへのアクセスを含む。これらの基本的権利に加え、有給の労働に対する機会並びに、教育及び訓練へのアクセスが含まれている。「参加」においては、高齢者はその福利に影響する政策の策定及び実施に積極的に参加し、その知識及 び技能を若い世代と分かち合うべきであること、運動や団体を組織することができるべきであることが述べられている。「ケア」と題する部は、高齢者は家族ケア及び健康ケアの利益を受けるべきであり、住居、ケア又は介護施設に居住する際には人権及び基本的自由を享受できるべきであることを宣言している。「自己実現」に関しては、原則は、高齢者はその社会の教育的、文化的、精神的及び娯楽的資源へのアクセスを通して自らの可能性の完全な実現の機会を求めることができるべきであると述べている。最後に、「尊厳」と題する部は、高齢者は尊厳をもってかつ安全に、搾取及び身体的又は精神的侵害を受けずに生きることができるべきであり、年齢、性、人種的又は種族的出自、障害又はその他の地位にかかわらず公平に扱われるべきであり、経済的貢献と関係なく評価されるべきであると述べている。

6.1992年に、総会は、2001年に向けての高齢化に関する8つのグローバル・ターゲット及び、国内ターゲットを設定するための簡潔なガイドを採択した。多くの重要な点において、これらのグローバル・ターゲットは、規約の締約国の義務を強化するのに役立つものである。

7.同じく1992年に、高齢者に関する国際行動計画の採択10周年を記念して、総会は、高齢化に関する宣言を採択し、高齢の女性が、ほとんど認められていない社会への貢献について十分な支持を与えられ、高齢の男性が、生計維持者であった期間に発展させることができなかった可能性がある社会的、文化的及び感情的能力を発展させるよう奨励されるよう、ケアを与えることについて家族が支援を受け、かつ家族のすべての構成員がケアを与えることへの協力を奨励されるよう、また、2001年に向けての高齢化に関する グローバル・ターゲットを達成するための戦略において国際協力が拡充されるよう、高齢化に対する国内的なイニシアチブを取ることを強く求めた。総会はまた、1999年を、人類が人口学的に「成年」に達したと認めて、「高齢者の国際年」と宣言した。

8.国連の専門機関、特にILOも、それぞれの権限分野において、高齢化の問題に注意を払ってきた。


‐3‐ 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に関連した高齢者の権利


9.高齢者を描写するために用いられる用語は、国際文書においてさえも相当に異なっている。それには、「高齢者(older persons)」、「老齢者(the aged)」、「老人(the elderly)」、「第3の年代(the third age)」、「加齢者(the ageing)」、及び、80歳以上の人を指すものとして「第4の世代(the fourth age)」が含まれる。委員会は、総会決議47/5及び48/98で用いられている語である「高齢者」(フランス語ではpersonnes agees、スペイン語ではpersonas mayores)を選択した。国連統計局の慣用によれば、これらの用語は、60歳以上の人を対象としている。(欧州連合の統計局であるEurostatは、「高齢者」は65歳以上の人を意味するとみなしているが、これは、65歳が最も一般的な退職の年齢であり、傾向としてさらに遅い退職の方向に向かっているからである。)

10.経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、「社会保険その他の社会保障に対するすべての者の権利」を扱った第9条が老齢給付に対する権利を認めることを含意しているとはいえ、高齢者の権利についての明示的な言及を含んではいない。しかしながら、規約の規定が社会のすべての構成員に完全に適用されるという観点から、高齢者が規約で認められた権利の全範囲を享受する権利があることは明らかである。このアプローチは、高齢化に関する国際行動計画にも十分に反映されている。さらに、高齢者の権利の尊重から要求される限りにおいて、締約国は規約により、利用可能な資源を最大限に用いて、特別の措置を取ることを要求される。

11.もう一つの重要な事柄は、年齢に基づいた差別が規約で禁じられるかどうかということである。規約も世界人権宣言も、禁止事由の一つとして年齢に明示的に言及してはいない。この欠落は、意図的な排除とみるよりも、おそらく、これらの文書が採択された時には、人口学的な高齢化の問題が現在ほど明白な又は急迫したものではなかったという事実によって説明するのが正しいであろう。

12.しかしながら、このことは問題を決着させるものではない。なぜならば、「他の地位」に基づく差別の禁止は、年齢についても適用されると解釈できるからである。委員会は、年齢に基づく差別が規約によって包括的に禁止されていると結論することは未だできないが、かかる差別が認められる事柄の範囲は非常に限られていることを注記する。さらに、高齢者に対する差別が認められないことは、多くの国際的な政策文書で強調されかつ、大多数の国家の立法において確認されている。義務的な退職年齢や、第3次教育へのアクセスのような、差別が認容される数少ない分野において、明らかに、かかる障壁の撤廃に向けての傾向がみられる。委員会は、締約国は可能な最大限に、この傾向を迅速にするよう努めるべきであるという見解である。

13.従って、経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は、規約の締約国は、高齢者の経済的、社会的及び文化的権利を促進し及び保護するために特別の注意を払う義務があるという見解である。この点での委員会自身の役割は、女性及び子どものような他の人口グループの場合と異なり、高齢者の権利に関連しては未だにいかなる包括的な国際文書も存在せず、この分野でのさまざまな国連の原則に対していかなる義務的な監視制度もないという事実によって、一層重要なものになっている。

14.第13会期の終わりまでに、委員会及びその先行機関である政府専門家の会期内作業部会は、153の第1次報告、71の第2次定期報告及び、規約第1条から第15条までに関する25のグローバル・レポートを審査した。この作業によって、世界のすべての地域を代表し、異なった政治的、社会・経済的及び文化的体制をもつ相当数の締約国において規約の実施の際に直面しうる問題の多くを認識することが可能になった。これまで審査された報告は、社会保障に対する権利に関する第9条の実施についての、完全度において異なるさまざまな情報を除いては、規約との合致に関して高齢者の状況について体系的なかたちで情報を提供してこなかった。

15.1993年に、委員会は、見解を作成するのに資するため、この問題について一般的討論の日をあてた。さらに、委員会は最近の会期で、高齢者の権利についての情報に実質的により多くの重要性をおき始め、何回か、委員会の質問によって非常に価値のある情報を引き出した。しかしながら、委員会は、大多数の締約国の報告はこの重要な問題についてほとんど言及しないままであることを注記する。従って委員会は、将来、すべての報告において、規約で認められた権利のそれぞれに関連して高齢者の状況が十分に扱われることを要求することを述べておきたい。この一般的意見の残りの部分は、この点で関連する具体的な事柄をあげる。


‐4‐ 締約国の一般的義務


16.集団としての高齢者は、人口のその他と同様に不均質かつ多様であり、高齢者の状況は、その国の経済的及び社会的状況、人口学的、環境的、文化的及び雇用の要素、また個人のレベルでは家族の状況に、教育のレベルでは、都市又は農村の環境、並びに労働者及び退職者の職業によって異なる。

17.健康でありかつ、受け入れられうる財政状況にある高齢者と並んで、先進国においてさえも、十分な生活手段がない多くの人々がおり、それは主として最も弱くマージナルな、保護されていないグループの中にみられる。景気後退及び経済の再調整の時期には、高齢者は特に危機にさらされる。委員会が以前に強調したように(一般的意見第3(1990年)、パラグラフ12)、深刻な資源の制約の時でも、締約国は、社会の弱い構成員を保護する義務を負っている。

18.高齢者に関して規約の下で負った義務を履行するために締約国が用いる方法は、基本的に、他の義務の履行のために用いるものと同じであろう(一般的意見第1(1989年)を見よ)。それには、定期的な監視を通して国内における問題の性質及び範囲を確定する必要性、要求に対応するために適切に策定された政策及び計画を採択する必要性、必要な時には立法を制定し、いかなる差別的な立法をも撤廃する必要性、並びに、関連の予算措置を確保し又は、適切な場合、国際協力を求める必要性を含む。この最後の点に関連して、規約の第22条及び第23条に従った国際協力は、いくつかの途上国が規約の下での義務を履行することを可能にする特に重要な手段となりうる。

19.この文脈で、1992年に総会によって採択されたグローバル・ターゲット第一が、国内的及び国際的な開発計画において高齢化に関する政策及び計画を促進するために国内の支援インフラストラクチャーの設立を求めていることに注意をひくことができる。この点で、委員会は、政府がその国内計画に組み込むことを奨励されている「高齢者のための国連原則」の一つは、高齢者が高齢者の運動又は団体を組織できるべきであるということを注記する。


‐5‐ 規約の具体的規定

 男女同等の権利(第3条)


20.締約国が「すべての経済的、社会的及び文化的権利の享受について男女に同等の権利を確保する」ことを約束した規約第3条に従い、委員会は、高齢の女性すなわち、人生のすべて又は一部を、老齢年金を受ける資格を与えるような報酬のある活動に携わることなく家族の世話のために費してきたため、また寡婦年金を受ける資格もないためにしばしば危機的状況にある女性に、締約国が特別の注意を払うべきであると考える。

21.かかる状況に対処し、かつ規約第9条及び高齢化に関する宣言のパラグラフ2(h)に完全に合致するために、締約国は、納入金によらない老齢給付又は、性にかかわらず、国内法で特定された年齢に達した時に資金がない状況にあるすべての人に対するその他の支援を施行すべきである。平均寿命の長さ及び、納入金による年金をもたないことが多いことから、女性が主な受益者になるであろう。


労働関係の権利(第6−8条)


22.規約の第6条は、自由に選択し又は承諾する労働を通して生計を立てる機会に対するすべての者の権利を保護するよう適切な措置を取ることを締約国に要求している。この点で委員会は、退職年齢に達していない高齢の労働者がしばしば、職を探し及び維持するにあたって問題に直面していることを考慮し、雇用及び職業において年齢に基づく差別を防止するための措置の必要性を強調する。

23.「公正かつ良好な労働条件を享受する」権利(規約第7条)は、高齢の労働者が退職まで安全な労働条件を享受するのを確保するために特別の重要性をもつ。特に、高齢者は、その経験と知識が最も良く生かされうる状況で雇用されることが望ましい。

24.退職に先立つ期間においては、高齢者が新しい状況に対処するのを準備するため、雇用者及び労働者の代表組織、並びにその他の関係機関の参加を得て、退職準備計画が実施されるべきである。かかる計画は特に、高齢の労働者に、年金受給者としての権利及び義務、職業活動を継続し又は自主的な労働を行うための機会及び条件、高齢化の不利な影響と戦うための方法、成人教育及び文化活動のための便益、並びに余暇時間の利用についての情報を提供するべきである。

25.規約第8条によって保護される権利、すなわち退職年齢以後を含む労働組合権は、高齢の労働者にも適用されなければならない。


社会保障に対する権利(第9条)


26.規約第9条は、保障されるべき保護のタイプ又はレベルについて具体的に述べることなく一般的に、締約国は「社会保障についてのすべての者の権利を認める」と規定している。しかしながら、「社会保障」という用語の含意するところでは、人のコントロールできない理由で生存の手段を失うことにかかわるあらゆる危険を対象としている。

27.規約第9条及び、ILOの社会保障条約−社会保障(最低基準)に関する102号条約(1952年)並びに、障害、老齢及び遺族給付に関する128号条約(1967年)−に従い、締約国は、特定の年齢から開始する、一般的な強制的老齢保健の制度を設立し、国内法で規定するよう適切な措置を取らなければならない。

28.上記の二つのILO条約に含まれた勧告及び、高齢の労働者に関するILOの162号勧告と歩調を合わせ、委員会は締約国に対し、人口学的、経済的及び社会的要因を正当に考慮しつつ、従事される職業及び老齢者の労働能力により柔軟であるような退職年齢を設定するように求める。

29.規約第9条の規定に効果を与えるためには、締約国は、社会保障の対象となっていたか又は年金を受給していた生計維持者の死亡に伴い、遺族及び孤児給付を与えることを保障しなければならない。

30.さらに、すでに上記のパラグラフ20・21で述べたように、規約第9条の規定を完全に実施するためには、締約国は、国内法で定められた年齢に達した時に、有資格者となるための分担金支払期間を完了しておらず老齢年金又はその他の社会保障給付もしくは援助を受けるを受ける資格がなくかつ他の収入源がないすべての高齢者のために、利用可能な資源の範囲で、分担金によらない老齢給付及びその他の援助を与えるべきである。


家族の保護(第10条)


31.規約第10条1項及び、高齢化に関する国際行動計画の勧告25・29に従い、締約国は、家族を支援し、保護し及び強化するため、また、それぞれの社会の文化的価値観の制度に従い、扶養されている老齢者のニーズに家族が応えるのを助けるため、あらゆる必要な努力を行うべきである。勧告29は、政府及び非政府組織に対し、家庭に老齢者がいる時には家族全体を支えるための社会サービスを設けること、及び、老齢者を在宅させたいと希望する低収入の家族に対して特別に措置を取ることを奨励している。この援助はまた、一人で住んでいる人、又は在宅のままでいることを希望する老齢の夫婦に対しても与えられるべきである。


十分な生活水準に対する権利(第11条)


32.高齢者のための国連原則の原則1は、高齢者の独立に関する部の初めにおかれているものであるが、次のように規定する。「高齢者は、収入、家族及び社会の支援が与えられること並びに自助を通して、十分な食料、水、住居、衣服及び健康ケアに対するアクセスを有するべきである」。委員会は、規約第11条に含まれた権利を高齢者のために要求するこの原則に、大きな重要性をおく。

33.高齢化に関する国際行動計画の勧告19から24は、老齢者のための住居は単なる避難所(shelter)以上のものとみなされなければならず、身体的なものに加え、考慮に入れられるべき心理的及び社会的意義をもつことを強調している。従って、国内政策は、修復、開発及び住居の改善並びに、老齢者が住居にアクセスしかつ使用する能力に合わせて住居を適合させることを通して、老齢者が自らの家にできる限り長く住み続けることを助けるべきである(勧告19)。勧告20は、都市再建築並びに開発計画及び法が高齢者の問題に特別の注意を払い、高齢者の社会統合を確保するのを支援する必要性を強調している。勧告22は、高齢者により良い生活環境を与えるため、高齢者の機能的能力を考慮し、十分な交通手段の供給を通して移動及び通信を容易にする必要性に注意をひいている。


身体的及び精神的健康に対する権利(第12条)


34.規約第12条1項に従い、満足できる身体的及び精神的健康の水準を享受する高齢者の権利を実現する観点から、締約国は、高齢化に関する国際行動計画の勧告1から17までを考慮に入れるべきである。これは、老齢者の健康を維持するための保健政策に関するガイドラインを与えることにもっぱら焦点をあてたものであり、予防及びリハビリテーションから末期医療のケアにわたるまで、包括的な観点にたっている。

35.慢性的な、退行性の病気の増加及び、それが伴う高い入院費用は、治療のみによっては解決されえないことは明らかである。この点で、締約国は、高齢期にわたるまで健康を維持することは、基本的には健康な生活習慣の採用(食物、運動、たばこ及びアルコールを絶つことなど)によって、生涯の全期間の間の投資を必要とすることを考慮に入れるべきである。高齢者のニーズに合わせた定期的検査による予防は、リハビリテーションと同様、高齢者の機能的能力を維持することによって決定的な役割を果たし、結果として、健康ケア及び社会サービスへの投資費用を減少させる。


教育及び文化に対する権利(第13−15条)


36.規約第13条1項は、教育に対するすべての者の権利を認めている。高齢者の場合は、この権利は二つの異なった、かつ補完的な観点からアプローチされなければならない。それは、(a)教育計画から利益を得る高齢者の権利、(b)高齢者の知識及び経験を若い世代に利用できるようにすること、である。

37.前者に関しては、締約国は以下のことを考慮に入れるべきである。(a)高齢者のための国連原則の原則4の勧告。その趣旨は、高齢者はふさわしい教育プログラム及び訓練に対するアクセスを有するべきであり、従って、その準備、能力及び動機に基づいて、識字訓練、生涯教育、大学へのアクセスなどに関する適切な措置の採用を通して教育のさまざまなレベルへのアクセスを与えられるべきだということである。(b)高齢化に関する国際行動計画の勧告47。これは、ユネスコの宣言した生涯教育の概念に従い、高齢者がその独立独行及び社会的責任の感覚を発達させるためのインフォーマルな、社会ベースの(community-based)かつ娯楽志向のプログラムを勧告している。かかるプログラムは、各国政府及び国際組織の支援を受けるべきである。

38.高齢化に関する国際行動計画の、教育を扱った勧告の中で言及された(パラグラフ74−76)、高齢者の知識及び経験の利用に関しては、老齢者及び高齢者がほとんどの社会で情報、知識、伝統及び精神的価値の伝え手としてなお重要な役割を果たしていること、また、この重要な伝統は失われるべきでないこと、に注意をひく。従って、委員会は、行動計画の勧告44に含まれた次のメッセージに特に重要性をおく。「教師又は、知識、文化及び精神的価値の伝え手として老齢者を前面に出した教育プログラムが開発されるべきである。」

39.規約第15条1項(a)及び(b)において締約国は、文化的な生活に参加しまた、科学の進歩及びその利用による利益を受けるすべての者の権利を認めている。この点で、委員会は、高齢者のための国連原則、特に以下の原則に含まれた勧告を考慮に入れるよう締約国に強く要請する。原則7:「高齢者は、社会に統合され続け、その福利に直接に影響する政策の策定及び実施に積極的に参加し、その知識及び技能を若い世代と分かち合うべきである」。原則16:「高齢者は、社会の教育的、文化的、精神的及び娯楽的資源に対するアクセスを有するべきである。」

40.同様に、高齢化に関する国際行動計画の勧告48は、政府及び国際機関に対し、文化的施設(美術館、劇場、コンサートホール、映画館など)に対する高齢者の身体的なアクセスを容易にするための計画を支援するよう奨励している。

41.行動計画の勧告50は、政府、非政府組織及び高齢者自身が、身体的及び心理的障害に苦しみ、独立して機能することができず、また社会の中で役割も地位も有していないという、高齢者のネガティブでステレオタイプ的なイメージを克服するよう努力する必要性を強調している。これらの努力は−メディア及び教育機関も参加すべきである−、高齢者の完全な統合を誇る社会を達成するために不可欠である。

42.科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利に関しては、締約国は、高齢化に関する国際行動計画の勧告60、61及び62を考慮に入れ、高齢化の生物学的、心理的及び社会的側面について、並びに、機能的能力を維持し、慢性的な病気及び障害の開始を防止し及び遅らせるための方法についての研究を促進するよう努力するべきである。この関連で、国家、政府間組織及び非政府組織は、かかる機関が存在しない国においては、老人学、老人病医学及び老人病心理学の教育を専門とする機関を設立することを勧告する。



‐訳:申 惠手(青山学院大学法学部助教授)‐


脚注を含む全文は、「『経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会』の一般的意見(二)」青山法学論集第40巻3・4合併号(1999年)を参照して下さい。

‐無断転用を禁ず‐


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