社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)

第十一条

1.この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。

(外務省ホームページより抜粋)

適切な居住の権利 一般的意見4

・・・ パート I(1〜7) ・・・


1。社会権規約に参加している国は、日本も含め、すべての人々に「適切な生活」を営む権利があるということを、認めなければなりません。適切な生活とは、食べ物、着るもの、住むところが、適切だということ、そして生活の向上をはかれることです。
 「居住の権利」、すなわち「住まいは人権」という考え方は、この「適切なレベルの生活を送る権利」にもとづいています。これは、社会的権利の中でも、とくに大切なものです。

2。社会権規約委員会は、これまで、居住の権利についての情報を、たくさん集めてきました。これらは、1979年から審査してきた75の報告書や、1987年の「ホームレスのための国際住居年」、1987年12月の総会で決まった「西暦2000年に向けての世界住居戦略」から出てきた情報、そして「人権委員会」や「差別防止と少数民族保護小委員会」からの報告や書類などから、得たものです。1989年と1990年の会期には、居住権の問題について、特別に時間を割いた話し合いを持ちました。

3。適切な居住の権利に関する国際文書は、数多く、それをもとに、さまざまな角度からの取り組みが行われています。その中でもっとも包括的で重要なのは、社会権規約第11条1項でしょう。

4。適切な居住への権利がいかに大切かということは、これまで何度も、国際社会で確認されてきたことです。にもかかわらず、世界各地で見られる状況は、社会権規約第11条1項からかけ離れています。
 とくに差し迫った問題をかかえているのは、発展途上国のいくつかです。しかし一方で、先進国の社会にも、ホームレスや不適切な居住の問題は、存在しています。
 国際連合の試算では、世界中で、家のない人は1億人以上、適切ではない住居に住んでいる人が10億人以上います。この数は減っていません。社会権規約の参加国の中で、居住の権利に関する重大な問題をかかえていない国はありません。

5。委員会が審査した報告書の中には、報告者である国が、適切な居住の権利の保障は難しいということを認め、そう述べているものもあります。しかしほとんどの場合、提供された情報は不充分で、その国の状況について適切な判断を下すことができません。
 したがって、この一般的意見の目的は、居住権の主要なことがらを明らかにすることなのです。

6。適切な居住の権利は、すべての人に当てはまります。「自己およびその家族」と訳されている部分の原文は「himself and his family(彼とその家族)」ですが、これは社会権規約が定められた1966年という時代の一般的な考え方を反映しているだけです。現在では、ひとりで生活している人や女性を世帯主とする家族などに、この権利が当てはまらないとする解釈はなりたちません。ここに出てくる「家族」は、広い意味で捉えられなければなりません。さらに個人も家族と同様、年齢や経済状況、どういうグループに属しているかなどということに関係なく、適切な居住の権利を持っています。居住の権利についての差別は、どんな形のものであっても許されません。これは特に規約第2条第2項にもとづいています。

7。居住の権利は、頭の上に屋根があればいいとか、住居を商品として扱うような、狭い限られた意味で解釈すべきではありません。居住の権利とは、人が安全に、平和に、尊厳を持って生活をする権利のことを言います。
 これには2つの理由があります。まず1つは、居住の権利と、社会権規約でうたっている他の人権や基本原則とを、切り放して考えることはできないということです。人権規約の源とされる、「人間に本来そなわっている尊厳」にもとづけば、なにが「住居」かを考える場合には、直接の「住」以外のことにも配慮しなくてはなりません。とくに、居住の権利は、収入や経済状況に関係なく、すべての人に保障されなければならない権利です。
 第2に、第11条1項の「住」は、単なる住居としてではなく、「適切な住居」を示すと解釈されなければなりません。「人間居住委員会」も「西暦2000年に向けての世界居住戦略」も述べているように、「適切な住居とは、適切なプライバシー、適切な広さ、適切な安全、適切な照明と換気、適切な基礎インフラストラクチャー、仕事や基本的な設備を備えたという意味での、適切な場所を意味する」のです。


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専門家バージョン  英語原文(国連のページ)  「居住の権利」目次



[訳/文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子]

 これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。

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