社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)

第十一条

1.この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。

(外務省ホームページより抜粋)

適切な居住の権利 - 強制立ち退き 一般的意見7

・・・ パート I(1〜4) ・・・


1。一般的意見4の中で、委員会は、すべての人は、今住んでいるところに住み続けられるという一定の保証を得て、強制立ち退きや嫌がらせなどの脅しから法的に守られるべきだと述べました。強制立ち退きが規約の要求するところと一致しないのは明らかだと結論づけています。近年、膨大な数に及ぶ強制立ち退きが報告されていますが、これらを考慮し、また加盟国が義務をないがしろにしていると委員会が断定する事例を含め、委員会は今、規約に盛り込まれた義務に関連して、強制立ち退きの実施の意味をさらに明確にしようと模索しています。

2。国際社会は長いあいだ、強制立ち退きを真剣な問題として認めてきました。1976年、人間居住に関する国連会議は、「大がかりな立ち退きは、保存や復旧の実行が不可能で、かつ再定住措置が採られる場合に限って、行われるべきである」という点に、特別の注意を払うべきだと述べました。1988年には、総会が決議43/181の中で採択した2000年に向けた世界居住作戦において、「家や近隣地区を損なったり破壊するのではなく、むしろ保護し、向上させるための(政府の)基本義務」が認識されました。行動計画21は「人々は、自分たちの家や土地から不公正に強制立ち退きさせられないよう、法によってまもられているべきだ」と述べています。ハビタット行動計画において、各政府は「法律に反する強制立ち退きから、すべての人々を守り、法的な保護と救済策を提供し、人権を考慮に入れ、(かつ)強制立ち退きが避けられないものであれば、それに代わる適切な解決を確保する」ことを明約しました。また人権委員会は、「強制立ち退きは人権の大きな侵害」だとしています。しかし、これらの声明が大切であるにもかかわらず、もっとも重要な問題、すなわち、どんな環境なら強制立ち退きが許されるのかという定義づけや、関連条約や規約の確実に尊重するためにどういう形の保護が要求されるかの詳細な説明は、未解決のままです。

3。「強制立ち退き(forced evictions) 」という用語の使用には、いくつかの点で問題があります。この表現で伝えようとしているのは、恣意性と違法性です。しかし「立ち退き」という言葉にすでに「強制」という意味が含まれるために「強制立ち退き」を重複語と見る人も多いのです。またその一方で、「違法立ち退き」という表現を批判する人々もいます。「違法立ち退き」は、その国にある関連法が規約に沿った適切な保護を与えているということを前提にした表現ですが、事実は必ずしもそうした適切な保護があるとは限らないからです。同時に「不公正な立ち退き」は、さらに主観的な表現だと言われてきました。法的枠組みについて述べるという効果が完全に欠落しているからです。国際社会は、特に人権委員会では、「強制立ち退き」という表現を選びました。他の候補の用語にも難点が多いというのが主な理由です。この一般的意見の中で使われている「強制立ち退き」という用語は、個人や家族、コミュニティの意思に反して、恒久的にあるいは一時的に、法的その他の適切な保護が提供されず、あるいは利用の道が開かれず、住んでいる家や土地から移動させられることと定義されています。ただし、法律に従って、国際人権規約の条項に沿って行われる立ち退きには、強制立ち退きの禁止は適用されません。

4。強制立ち退きはいたる所で行われ、先進国、先進途上国のいずれにおいても人々に影響を与えています。すべての人権は互いに関連し、依存しあう側面を持ちますから、強制立ち退きが他の人権を侵害することもしばしばです。このように、強制立ちのきを実施するということは、規約に正式に述べられている権利の明らかな侵害で、さらにその一方で、生命そのものに対する権利、人の安全の権利、プライバシーの権利、家族や家、財産を平和に所有する権利など、市民的及び政治的権利に関する国際規約の侵害という結果を引き起こすことにもなるのです。


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専門家バージョン  英語原文(国連のページ)  「居住の権利」目次



[訳/文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子]

 これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。

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