
写真提供 小山和之 氏
最初に神戸アコースティックタウンのことを知ったのは、通勤途中の神戸市営地下鉄の吊り広告だった。
高田渡の垂水でのライブを楽しみにしていたのだが、何と言うことか日を間違ってしまい行けなかったから、出演者に高田渡の名前を見たときには余計に嬉しく思ったのである。
記念にチラシをもらっておこうと神戸元町のヤマハに行きチラシを入手すると、そこにアマチュアバンド募集とある。何となく応募してみようかという気になったので、久しぶりにギターを取り出して演奏してみると、指が全く動かない。そして、高い声が全く出ないことに驚いたのであった。
まあ、そんなことを気にしていても仕方がないので、練習を始めた。ギターは普通ピックを使い全弦をストロークしてリズムを刻んで歌うのがパターンだが、大学時代に凝ったのは(と言うより狂ったのは)、カントリー・ブルースだったので、フィンガー・ピッキングは得意なのである。だからその方面でやってみることにしたのである。
何を演奏するかが問題だが、これも大学時代に狂った上田正樹&有山じゅんじ「ぼちぼちいこか」の中から2曲を選んだ。「梅田からナンバまで」と「みんなの願いはただひとつ」である。
練習の成果でようやく何とか弾けるようになったが、声の方はどうしようもないので、そのまま録音した。録音機器は20年前のラジカセである。後で聴くと音質は最悪、歌も最悪だったが、再度録音する気にならなかったので、一発録音したテープで応募した。
当然オーディションに受かるとは思っていなかったが、ヤマハからの電話でリレーライブの話を聞いた時には直ちに応諾した。これは完全に悪ノリというものだろう。しかし、演奏する曲は変えてやれと思ったのであった(その後1曲にしてくれという依頼があった)。
先程書いたように、「梅田からナンバまで」「みんなの願いはただひとつ」はどちらも上田正樹&有山じゅんじ「ぼちぼちいこか」の曲なのであまりに芸がないと思い高田渡の曲を練習してみた。「生活の柄」はコードストロークかカーター・ファミリー・ピッキングなのですぐできるし、「自転車に乗って」も基本的なスリーフィンガーピッキングで面白くない。そこでよく鼻歌で歌っていた「失業手当」に目をつけた。CD「ごあいさつ」はスローなテンポだが、CD「高田渡ベスト・ライブ」は結構早く演奏しているので、こちらのテンポでやってみることにしたのである。
さて、当日のことであるが、出演者の特権で杉田二郎のリハーサルを見ることができた。本当は高田渡のリハーサルを見たかったのだが、贅沢は言っていられませんね。演奏する曲は通しで全部やるのだが、リハーサルなので高音部にくると無理をせず低音で歌っていた。「戦争を知らない子供たち」のサビの「歌うことだけさ〜」のところである。
「リレーライブ」の参加者は若い人が多く(ストリートで演奏している輩である)、歌は本当にうまい。実にうまい。そして真剣である。遊びで出ているこちらの不真面目さが罪に感じる。
さて肝心の本番であるが、最初PAの調子が悪いのか自分のギターの音が全く聞こえなかった(これはアガっていたかもしれないが)。途中からかすかに聞こえだして助かった。しかし、間奏の2フレーズ目でトチってしまった。
サムピックを使わず親指でリズムを刻んだので、やはり音量不足だったのかもしれない。
演奏が終わって、司会者と話をした後に席にひっこんだ。驚いたのはその時に若い男性がきて「ブルースですね」と声をかけてくれた。高田渡を知らないらしく「オリジナルですか」と聞かれる。「いや、高田渡ですよ」と答えて演奏したときに使用した歌詞を書いた紙をわたした。こんなオッサンでも声をかけてくれる若い輩がいると思うと本当に嬉しくなってしまった。
「リレーライブ」は6時20分位まで続き最後は「翼をください」の大合唱であった。このエネルギーは本当に凄かった。大学時代サークルでの大合唱を思い出した。自分の声が曲の中に溶けているというのを久々に体験した。
もはや怖いものはないので、いつかどこかのストリートで演奏しているかもしれない(現にその話があるところが本当に怖い)。ハハハ。
