邀撃プリンセスナイン――如月女子高野球部奇襲命令
第一話『金属バットの青春』・解説篇
項目の後ろの()は、本作に対応している。
・早川英彦の最期(プロローグ)
早川英彦の死亡原因に関しては、原作では深く語られることはなかった。本作では、『邀撃マリアナ海戦』のキーパーソン・樋端久利雄が山本五十六と共に一式陸攻の機上で殉職することから、飛行機事故による死、という形をとった。
なお、事故のイメージは1985年の日航機墜落事故であり、年代設定は一致していない。本作品世界ではあの悲惨な事故は1988年に発生した、と理解していただきたい。
また、球界を追われた英彦は野球を捨てた、という問題には個人的に議論の余地があると考え、一度は諦めた真実解明への道を歩みだした、という設定にした。本当に野球を捨てたのであれば、娘にキャッチボールを教えるとも思えない。真実と向き合うのに十年近い時間を必要とした、と考えることも出来よう。
・木戸晋作の監督就任(1)
木戸晋作と氷室桂子との関係もまた、原作ではあいまいなままであった。「割に合わない大任であるため、候補者が皆、辞退してしまい、最後に残った木戸にお鉢が回ってきたのだ」という笑えない冗談まである。
本作でも監督就任を要請された訳、に関しては追求していない。ただ、基準として”早川英彦の野球を知る人物”があったことだけは間違いないであろう。原作では、ほとんど監督らしい指導力を発揮することはなかったのだが。
なお、原作では部室に潜り込んで寝ているシーンがあったが、実際に監督室に相当する部屋を与えられていたのかは描写がない。普段はどこにいたのだろう。謎である。
・南原宏美と一条慎也(3)
この二人の本作オリジナルキャラクタは、原作によって描かれなかった要素を出来るだけ取り込むことを目的としたキャラクタである。私自身が原作における涼・夏目、いずみ・高杉という二組の幼なじみの織りなすドロドロとした関係にあまり肌が合わなかったという意味も含んでいる。
一条は高杉のように軽薄ではなく、夏目のように野球をやらない訳ではない。南原は他の部員と違って突出した才能を持たず、スカウトされたわけでもない。ただ野球をやってみたいという純粋な好奇心を持って女子野球部に自ら飛び込む。
どちらも、「そういうキャラクタがいても良かったんじゃないのか?」という私自身の願望の現れである。一条は、愛すべき真面目で不器用な野球バカとして、南原は、天才集団の中にあって地道な努力と根性で目標に向かって前進するスポーツ少女として、本作における重要な役割を担うことになる。
『邀撃マリアナ海戦』における彩雲パイロット・南原宏作一飛曹から。なお、本作では”なんばら”ではなく、”みなみはら”と発音する。
・吉本ヒカルと堀田小春の役割(4)
本作では、木戸監督のサポート役として奮闘することになっている。『邀撃マリアナ海戦』における主人公、鼓武中佐配下の二人の助手、奥菜と長津田に相当する役回りである。
この配役に関しては、チーム創設当初から携わっている”野球経験者”という条件で決定した。東ユキも基準には合致するが、如何せんキャラクタが特異すぎるため、今回は主要キャラとしての採用を見合わせた。吉本・堀田とも話し言葉が方言であるため、その台詞の記述が困難であることはいうまでもない。土佐弁に関しては妙な箇所が多数見受けられると思われるため、指摘をしていただければありがたく思う。
・Z作戦、早川ターン”T作戦”(4)他
Z作戦とは、(現実の)マリアナ海戦における作戦名であり、また、日本海海戦で一躍有名となった”Z旗”から来ている。アルファベットの最後の文字であるZは、最終・究極といった意味合いも持つ。
T作戦は、同じく日本海海戦におけるT字戦法から。早川ターンとは、『邀撃マリアナ海戦』における樋端ターンから。
作品構成上、作戦の詳細をここで書くことは出来ないが、Tには、ある野球戦術の頭文字から、Zには、その字の形に意味がこめられている、とだけ述べておく。
・木津根兄弟の堅守(5)
『邀撃マリアナ海戦』におけるF6Fパイロット・フォックス兄弟から。完璧なサッチウィーブ戦法で日本軍戦闘機を叩き落とす手練れとして登場する。バックトスが高度な技術であり、ショートとの連携が重要であることは、本文中で示した通りである。
ちなみに本作においては、作品構成上、如月高の実力を、原作より数段上の、走・攻・守・投の全ての要素において高水準を保つ甲子園常連校レベルに設定してある。
・森村聖良の左打ち、投手兼任(6)
優れたアスリートである森村の俊足を活かすため、本作では左打ちに転向するという設定にした。同時に、槍投げの選手だったという強肩を考え、涼のバックアップとしてピッチング練習も行うことにしてある。
同じ事は誰しも考えるらしく、コミック版では森村は一番・センターで、右投げ左打ちという設定になっている。
・鳴尾浜のプロ球団、特殊なバッティングマシン(7)
モデルとなっているのはいうまでもなく阪神タイガース。作品世界においては野球組織が我々の知るそれと著しく異なっているため、このようなぼかした表現に終始している。
吉本が確保したバッティングマシンのモデルは、阿部牧郎著『小説 江川卓KO作戦』に登場する。マシン開発の経緯も、同著の内容に準拠している。当然フィクションであるから、このようなマシンを用いて阪神タイガースの選手が特訓したという事実はない。
・三田加奈子の入部(10)
原作で示された変装してごまかす、というやり口には、将来的なビジョンが感じられない。野球部としては喉から手が出るほど欲しい優秀な野球経験者であり、その場しのぎのごまかしではなく、正面から誠意を持って獲得にあたったほうが良いとの判断に基づき、本作のような展開になっている。
三田監督は原作の18話以降、野球部廃止論から一転して、熱烈な応援をするようになる(加奈子個人に対する応援という側面はあるが)。その点を考えると、初期段階での説得は不可能ではなかった、と考える。校長が本当に怒っていたのは”親を騙して野球をやっていた”ことにあるのだから。
・早川涼の投法(11)
構成のチェックを担当して貰った加藤氏曰く「マッハ突き〜(謎爆)」である。
大リーガー的な、猫背気味の構えから、膝を曲げたまま大きく足を蹴り上げる投法をイメージしている。
細かなフォームを英彦から直伝された訳ではない以上、イナズマボールとの絡みも含めて、木戸にフォームをコーチして貰っているはずなのだが。その辺りは原作同様、曖昧にしてある。
・赤星理奈(11)
オリジナルキャラクタ。”原作に居ないタイプ”として、思い詰めるととことん練習に取り組むという性格付けを行っている。涼の控えとして背番号10を付けることになる。涼とは全く違ったタイプの投手として、投手という役割の幅広さを描ければ、と考えている。剛球・魔球だけが投手の存在価値ではないことを示したい。『邀撃マリアナ海戦』における、紫電改パイロット・赤星一飛曹から。
・宍戸礼美、殿村千歌子(12)
共にオリジナルキャラクタ。宍戸は二年生、殿村は(現段階では描写されていないが)、兄弟が野球をやっている、という設定で”原作にはない”方向性を求めている。共に闘争心の高い、攻撃的なキャラクタとして描写。『邀撃マリアナ海戦』における、彩雲機長・宍戸中尉および、電探戦艦『日向』掌砲長・殿村少尉から。
・氷室いずみの獲得(13)
原作においても打球は、選手のいない三塁線に飛んだ。ショート・三田は打球を止めても送球が間に合わなかったが、サードにきちんと捕球の出来る選手がいれば、打球が極端なボテボテのゴロで無かった以上、本作のようにサードライナー、あるいはゴロとして簡単に処理できた可能性は高い。
・曽我部まりあ(13)
オリジナルキャラクタ。”心ならずも野球部に入る”という葛藤は、原作における森村も同様である。が、あくまでも”金の為にプレイする”プロ根性の持ち主として描写。性格は穏やかな中にも芯が通った強さの持ち主。『邀撃マリアナ海戦』における、電探戦艦『日向』電探担当・曽我部部員から。
・情報管制(14)
如月高と如月女子高とは、兄弟校としてきわめてオープンな関係にあるらしく、両校の生徒の交流を感じさせる描写がいくつもあった。如月女子にとっては、策を練る上できわめて厄介な存在である。今後の描写において、両校のつながりは鍵の一つになっていくだろう。
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